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2013年12月27日(金) 2013Jリーグを総括する

いささか旧聞に属するものの、サッカーJ1・2013シーズンの結果についてコメントしておこう。2013シーズンの順位結果は以下のとおり。

1 広 島 63(19勝6分け9敗/51得点、29失点、得失点差22)
2 横 浜 62 (18勝8分け8敗/49得点、31失点、得失点差18)
3 川崎 F60 (18勝6分け10敗/65得点、51失点、得失点差14)
4 C大阪 59(16勝11分け7敗/53得点、32失点、得失点差21)
5 鹿 島 59(18勝5分け11敗/60得点、52失点、得失点差8)
6 浦 和 58(17勝7分け10敗/66得点、56失点、得失点差10)
7 新 潟 55(17勝4分け13敗/48得点、42失点、得失点差6)
8 東 京 54(16勝6分け12敗/61得点、47失点、得失点差14)
9 清 水 50(15勝5分け14敗/48得点、57失点、得失点差−9)
10 柏 48(13勝9分け12敗/56得点、59失点、得失点差−3)
11 名古屋 47(13勝8分け13敗/47得点、48失点、得失点差−1)
12 鳥 栖 46(13勝7分け14敗/54得点、63失点、得失点差−9)
13 仙 台 45(11勝12分け11敗/得点41、失点38、得失点差3)
14 大 宮 45(14勝3分け17敗/得点45、失点48、得失点差−3)
15 甲 府 37(8勝13分け13敗/30得点、41失点、得失点差−11)

[J2へ降格]
16 湘 南 25(6勝7分け21敗/ 34得点 62失点、得失点差−28)
17 磐 田 23(4勝11分け19敗/40得点56失点、得失点差−16)
18 大 分 14(2勝8分け24敗/31得点 67失点、得失点差−36)

シーズン前の筆者の順位予想は以下のとおり。
(1)名古屋グランパス、(2)FC東京、(3)川崎フロンターレ、(4)浦和レッズ、(5)柏レイソル、(6)鹿島アントラーズ、(7)清水エスパルス、(8)大宮アルディージャ、(9)セレッソ大阪、(10)サガン鳥栖、(11)ジュビロ磐田、(12)横浜F・マリノス、(13)サンフレッチェ広島、(14)ベガルタ仙台、(15)アルビレックス新潟、(16)ヴァンフォーレ甲府、(17)湘南ベルマーレ、(18)大分トリニータ

13位と、順位を大幅に下げると予想した広島が優勝。さらに、11位と予想した横浜が2位だ。C大阪も9位の予想から4位。筆者が優勝と予想した名古屋が11位、2位と予想した東京が8位、3位と予想した川崎のみ予想が当たった次第。ほかに5位とした柏が10位、11位とした磐田がJ2に降格してしまった。磐田の降格はまったくの予想外。ことほどさように、順位予想は難しい。

今シーズンを振り返ると、前半の大宮の大躍進が特記されるが、終わってみれば14位。大宮の戦力からみれば、14位は妥当な順位。これが2015年シーズンから実施される2ステージ制度になった場合、大宮は前期シーズンを制した可能性も高い。このように、2シーズン制を実施した場合、年間シーズンならば14位程度の実力のクラブが前後期のどちらかで優勝を果たす可能性も高くなる。2シーズン制度の実施を決定したシーズンに、そのマイナス面が実証されるとは、なんとも皮肉な結果ではないか。

さて、順位結果を一望すると明白なように、上位クラブは得失点差のプラス幅が大きいことがわかる。しかも、得失点差がマイナス(9位・清水)になったところで、下位に転じることから、順位上位の条件は得失点差をプラスに転じることと結論づけられる。優勝した広島の場合、得点51はリーグ7位、反対に失点29はJ1で最少。広島のみならず、J1上位を占めるクラブは、川崎という例外を除いて、失点数が少ないという特徴を見出すことが可能だ。このことから、J1で上位を占めるためには、まず、固い守備が絶対条件となる。高くて強く安定したセンターバック(CB)及び相手攻撃の芽を摘み取るセントラルミッドフィルダー(ボランチ)の存在の重要性だ。

サッカーの場合、得点力を大幅に伸ばして上位を狙うという方針は、実際には困難が伴う。なにせ世界的なストライカー不足の世の中。優秀なタレントは欧州に集まってしまい、Jに来てくれない。ならば、手持ちのMF、DFの駒を鍛えて堅い守備を構築するほうが容易だ。もちろん、風間川崎監督が目指す「攻撃サッカー」に敬意を表するものの、全クラブがそれを目指すのは得策とは言えない。

開幕前、筆者が優勝とした名古屋は11位。ストイコビッチ監督の退任は当然だ。日本では現役時代の華麗なプレーで人気を博していたし、監督時代もロベルト・マンチーニ(前マンチェスター・シティ監督)を意識(模倣)したアクションとファッションはいいけれど、選手起用には問題があった。とりわけ、若手育成に手腕を発揮できず、2010年の優勝メンバーがレギュラーとして固定化されてきた。その間、主力の故障欠場を埋める人材が見当たらないまま、2013シーズンはずるずると順位を下げ結局11位にとどまった。闘莉王のFW起用がその代表例で、この変則的起用は攻撃陣の戦力補強がままならず、かつ、新戦力の台頭が見られない焦りと見うけられた。シーズン前、筆者はオーストラリア代表のケネディらベテラン勢が発奮し最後の花を咲かせるものと期待したが、チームのパワー不足は補えなかった。2013年シーズンをもって、阿部、田中隼磨、増川、ダニエル、藤本らの退団が決定的なことから、おそらく、名古屋は来シーズン以降も厳しい戦いが続くであろう。

広島と最後まで優勝を争った横浜は戦力から見て、健闘に値するシーズンだった。しかし、横浜をここまで走らせたのは、他チームの戦術的怠慢に帰する部分も否定できない。俊輔に厳しいマークを付けず、自由にボールを捌かせていたのはいただけない。残り試合数が僅かになったところで、相手チームが俊輔に密着マークを付けるようになり、横浜の勢いに翳りが出た。当然の結果である。しかも、点取り屋のベテラン(37歳)マルキーニョスも終盤に調子を落とし、得点源としての役割を果たせず、広島との競り合いに負けた。ここ一番で勝てなかったのは、相手のマークとプレスによって、ベテラン選手が自由にプレーできなくなり、肉体的・精神的に追い込まれたためだろう。長いシーズン、経験だけで勝ちきれるものではない。

だが、今後実施される2シーズン制ならば、ベテラン選手の寿命も長くなる確率は高まる。それが良いことなのか悪いことなのかはここでは論じない。だが、2シーズン制度は横浜のようなベテランの多いクラブに有利である。少なくとも、前後半どちらか1シーズンを制覇する可能性は高まることは間違いない。

補強、移籍が定まらない現状で来シーズンの予想を行うのは無意味なので行わないが、全体を通じて、スケールが小さくなる印象は否めない。2013年シーズンまで活発だった海外移籍も、出場機会に恵まれないままJに復帰する選手が増加中だ。このことはプラス面もマイナス面もある。2014年はW杯実施年なので、出場機会を求めてJに復帰しようとする動きは理解できるが、海外移籍については、最低でも3年間の工程(目標)管理を準備して行うことが望ましい。欧州のクラブと契約すればなんとかなる、というものではない。もろもろの環境変化を考慮しても、2014年のJリーグの前途は、けして明るいものではない。Jリーグのダウンサイジングに歯止がかからない。


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