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2010年08月31日(火) 金満日本サッカー協会、イタリアブランドに満足

サッカー日本代表の次期監督が、ユベントス前監督でイタリア人のアルベルト・ザッケローニ(57)に決まった。報道によると、本日(31日)、東京都内で就任の記者会見に臨むという。ザッケローニのキャリアとして特筆すべきは、1999年にACミランをセリエA優勝に導いたこと。直近の仕事としては、昨シーズン途中からユベントスを率い、7位に終わっている。代表監督経験及びイタリア国外での監督経験はない。

前日の当該コラムにおいて、筆者はペケルマンとザッケローニを簡単に比較しておいた。ただ触れなかった問題は、次回W杯がブラジル開催であること。開催国ブラジルのライバル・アルゼンチン人を代表監督にするのは、日系人社会をかの地にもつわが国としては難しい。だから、ペケルマンが日本代表監督に就任する可能性は100%以上あり得ない。

しかしながら、あの「誤報」は、日本代表監督の条件を満たす人材が世界各所に十二分に存在し得る可能性を示唆している、という意味で、注目すべきものだった。巷間いわれているように、スペイン人に固執する必要はない。実績と指導理論をつきつめていけば、代表監督適任者はいくらでもいるということだ。

そればかりではない。国際試合が差し迫っているから早く代表監督を決めろというマスコミ報道も根拠がない。こんどのパラグアイ戦、グアテマラ戦にまったく意味がないとは言わないが、4年間の強化期間からみれば、焦る必要はない。原博実代行監督で問題はない。W杯後の、顔見世興行なのだから、代表としての戦略、戦術の確認もない。選手にしても、そうだろう。

というわけで、最後に、ザッケローニ代表監督就任決定に係る筆者の感想を述べておくと、クラブの監督なら納得できるが、代表監督となると適材なのかな?といったところ。疑問符つきだ。

Jリーグの中で資金的に余裕のあるクラブ、たとえば、浦和、名古屋、G大阪あたりが、フィンケ、ストイコビッチ、西野の後任としてザッケローニを引っ張ってきた、というのならば、すんなりと了解できる。しかし、一部の報道にあるように、イタリアでは「過去の人」という評価もある。年齢から判断しても、代表チームを率いるノウハウを学ぶ段階ではない。

代表チームは、クラブと違って、じっくりと選手を鍛えて、戦術を練成する時間がない。戦う相手は一国の規模を超えている。選手、コーチから、情報収集部門、トレーナー、栄養士等々複数の職能をもったスタッフを束ねる必要に迫られる。「過去の人」が新しい仕事に順応できるのかどうか。金満日本サッカー協会は、イタリアブランドがもつ華やかさに目がくらみ、「リスク」の高い投資をしたように思える。



2010年08月30日(月) ペケルマンか、ザッケローニか

サッカー日本代表監督の決定について、2人の候補者の名前がほぼ同時に報道された。有力なのは、ローマ発共同によるもので、30日付のイタリア紙レプブリカの報道に基づき、アルベルト・ザッケローニ(57)に決定したと報じている。ザッケローニは、セリエAのACミランやユベントスを率いた経験を持つ。

他方は、元アルゼンチン代表監督のホセ・ペケルマン(60)。こちらの報道はどうも、推測・憶測の域を出ないように思える。ペケルマンは、1994年に就任したアルゼンチン代表ユース監督として、FIFAワールドユースを3度も制覇している。また、2004年には、アルゼンチン代表監督に就任し、2006年ドイツ大会では、グループリーグを無敗で突破したものの、ベスト8を賭けた試合で、地元ドイツに敗退している。

ことの真偽は、当該コラムをアップした直後に判明するのであろうけれど、2人の候補者のうちどちらがいいかと問われれば、当然、ペケルマンを挙げる。ザッケローニには代表監督のキャリアがないが、ペケルマンはW杯にも出ているし、ユースの代表監督経験が豊富。若手育成に実績がある。

イタリアとアルゼンチンの代表サッカーのスタイルは違う。前者は守備的、後者は攻撃的なイメージを受けるが、ザッケローニは必ずしも「カテナチオ」に徹するタイプではないといわれているから、守備偏重だともいえないようだ。

どちらになっても、不安はある。最も心配なのは、日本のサッカー協会が「強化」よりも「興行」を優先する点だ。外国人監督が、日本サッカー協会の流儀に辟易すれば、モチベーションが低下し、どちらが代表監督に就任しても、短命で終わる可能性が高い。日本サッカー協会の商業主義と対立しながら、純粋に強化を進めるのは至難の業だろう。

これまで日本代表監督を務めた外国人監督は、オフト(オランダ)、ファルカン(ブラジル)、トルシエ(フランス)、ジーコ(ブラジル)、オシム(ボスニア・ヘルツェゴビナ)の5人。その中で、いい意味で文化的軋轢を生じせしめたのは、トルシエとオシムだった。異文化を受け入れることで、思わぬポリバレント(化学反応)効果が生じることがある。

筆者は、「ペケルマンに決定」が誤報でないことを祈っている。



2010年08月29日(日) FC東京には失望している

J1リーグのFC東京が第21節終了時点で(暫定)13位。降格圏内とはいえないものの、戦力からみて、妥当な順位ではない。

(1)首都東京のサッカー事情

以前、当コラムで書いたとおり、FC東京は日本の首都東京をホームとする。首都東京は、人口1,000万人余を擁する超大都市。FC東京が超大都市東京都民を熱狂させるようなクラブにならなければ、日本のサッカー人気、とりわけ、リーグは盛り上がらない。応援のしがいのない首都東京のサッカーフリークが日本代表サポーターに流出する傾向は健全ではない。

東京に隣接する埼玉には浦和(さいたま市)、大宮(同)と2チームあり、浦和は世界的ビッグクラブへ成長している。同じく神奈川には、横浜にマリノス、湘南にベルマーレがある。千葉にも柏、千葉があり、今季は2クラブともJ2だけれど、来季には同時昇格の可能性も高い。東京と並ぶ大阪には、C大阪、G大阪があり、それなりに、J1で健闘している。

東京には、FC東京以外に現在J2に低迷している、ヴェルディという名門チームがある。しかし、ヴェルディはJリーグ発足当時から大きな問題を抱えていた。当時、ヴェルディのオーナーは読売グループ。読売グループは、読売新聞の拡販と系列のテレビ局の視聴率稼ぎを狙って、ヴェルディをサッカーの「巨人軍」に仕立て上げようとしていた。そのため、チーム名に都市名ではなく「読売」を掲げようとして、Jリーグの設立理念である都市(ホーム)尊重と対立を強めた。読売グループはJリーグと確執を繰りかえしつつも、結局妥協し、当時練習場のあった川崎をホームに定め、等々力競技場をホームスタジアムとしてJリーグに加盟した。

しかし、読売グループは、ヴェルディの「巨人軍」構想をJリーグ側に拒まれたことに起因して、クラブ運営の情熱を失っていく。東京サッカー競技場(現「味の素スタジアム」)の完成とともに、ヴェルディは川崎から東京へファランチャイズを移し、さらに、読売グループから、系列の日本テレビグループに経営権が委譲されたものの、クラブの凋落傾向に歯止めが駆らず、2009年シーズン終了後、経営権が某企業に委譲されたものの、その経営が不安定なまま、現在に至っている。

Jリーグ発足当時、ヴェルディは日本リーグ時代の読売クラブからチームに在籍していたラモス、カズ、武田らに加えて、柱谷、北沢らのスター選手を呼び寄せ、Jリーグの強豪チームとして人気があった。しかし、彼らの加齢による衰えとともにチームも低落傾向を強め、ついにはJ2降格にあいなった。

そもそも、読売新聞の拡販=宣伝媒体という位置づけから出発したヴェルディは、Jリーグ事務局との理念的対立が象徴するように、健全なクラブ運営を行う意思はなかったものと推測できる。Jリーグが、読売・日テレという巨大メディア企業のマーケティング戦略を退けた時点で、ヴェルディ凋落の運命は決していた。首都東京のサッカーの不運の始まりだ。

であるから、首都東京を本拠地とするJリーグクラブは、実質的にはFC東京1チームしかない(もちろん、心あるオーナーが今後、ヴェルディを取得し再建する可能性がないとはいえないが…)。そのFC東京がこのような低落傾向にあるということは、Jリーグの活性化の最大の阻害要因の1つとなっている。

世界の国々の首都=大都市のサッカー事情を概観してみよう。スペインの首都マドリードには、レアル・マドリード、アトレティコ・マドリードの2クラブがある。イングランドの首都ロンドンには、アーセナル、チェルシー、フラムFCの3クラブがある。イタリアの首都ローマには、FCローマ、ラッツィオの2クラブがある。トルコのイスタンブル(首都はアンカラ)には、フネルバフチェ、ガラタサライ、イスタンブルBB、ベスクタシェ、カシムパサの5クラブがある。しかも、それぞれが優勝戦線にからむ強豪クラブとして安定した力を誇っている。もちろん、各都市内のダービー戦は異常な盛り上がりを見せる。しかし、Jリーグでは残念ながら、FC東京が優勝戦線に絡むこともないし、ACLの出場権を得る気配すらない。しかも、東京ダービーも期待できない。FC東京が、首都東京のサポーターの期待を裏切り続けることは許されないばかりか、日本のサッカー活性化にもマイナスだ。

(2)FC東京再生は城福監督更迭から

FC東京の問題点は何か。戦力的には、それなりのものを有している、と筆者には思える。問題は、監督だろう。昨日(第21節)の神戸戦をみてみよう。結果は0−0のスコアレスドロー。アウエーなのだから、まあまあという見方もあろうが、内容がおかしい。

この試合は先発FWがリカルジーニョと大黒の2トップ。TV中継の解説者M宮沢氏から再三指摘があったように、リカルジーニョには、アタッカーの資質がない。ペナルティーエリア近くでドリブルする技術(ボールをキープする力)はそれなりに認めるけれど、シュートが打てない。もう1人のFW大黒将志は裏をとる動きばかりで、ゴール前で体をはれない。ヘッディングの力もない。相手DFに脅威を与えない2トップの人選が間違っている。

FWの控えは平山相太と重松健太郎。FC東京はなんと、FWの赤嶺真吾を仙台にレンタル移籍で放出しているのだ。アタッカーとして資質のないリカルジーニョをFWとして起用し、控えに平山と重松というのでは、あまりにも脆弱すぎる。このチームは、だれが、どういうプロセスで、点を取ろうとしているのか、まったく見えない。

そればかりではない。先発したMF大竹洋平が攻撃にフィットせず、大竹の代わりに交代出場した鈴木達也がピッチに入るや、彼が攻撃の突破口を切り開く活躍を見せた。監督が先発の人選を誤っていることは明らか。チームの方向性を見失い、しかも、先発起用選手の判断を誤るなど、敗因を監督に帰する材料が揃いすぎている。

FC東京がJ1に昇格した2000年シーズン以降の成績を見てみよう。昇格した最初の2000年シーズン年間7位(大熊清監督)、2001年シーズン年間8位(同)、2002年シーズン年間9位(原博実監督)、2003年シーズン年間4位(同)、2004年シーズン年間8位(同)、2005年シーズン10位(同)、2006年シーズン13位(ガーロ〜倉又)、2007年シーズン12位(原博実監督)、2008年シーズン6位(城福浩監督)、2009年シーズン5位(同)となっている。(※2000年から2004年までは、2シーズン制度であった。また、2004年と2009年にナビスコ杯で優勝している。)

こうしてみると、原博実監督が采配を振るった2007年に12位まで下降した成績を、2008年6位、2009年5位に引き上げた城福浩監督の手腕に今シーズンも期待して当然だけれど、ここのところの城福監督の采配に翳りが見えている。ということは、FC東京上昇のために打つべき最初の一手は、城福監督の更迭だ。

(3)アタッカーの強化を

次に、手薄となったアタッカー陣の強化だ。FW平山の調子が安定しないのならば、外国人FWの獲得しかない。かつて、FC東京にはアマラオというブラジル人FWが在籍し、彼がJ1昇格を牽引した。アマラオは、12年間チームの中心として活躍を続け、「キング・オブ・トーキョー」とまで言われた。彼のようなチームの範となる優秀な外国人選手を招聘することが、チーム浮上の絶対条件となる。換言すれば、このチームには、リーダーとなる選手がいない。

W杯終了後、主力選手(長友)が抜けたことは戦力的にはマイナスだろうけれど、13位(21節暫定)とは情けない。先述のとおり、FC東京は、事実上、首都東京唯一のJリーグクラブ。ACL出場はもちろんのこと、人口1,000万人を常に熱狂させるようなクラブに成長してほしい。



2010年08月24日(火) W杯シンドローム、日本サッカー界は思考停止状態

W杯が終わり、日本のサッカー界は虚脱状態にあるかのようだ。日本代表がW杯でそれなりの成績をおさめたにもかかわらず、まるで不可解なサッカー協会会長の交代劇があった。事情を知らない外部者には、協会内権力闘争としかうつらない。唯一・絶対の権力の亡者と仮したK氏、そして、W大の学閥で固まる協会の官僚体質――日本サッカー協会にいま必要なのは「文化大革命」のような、激烈な改革ではないか。

(1)選手は消耗品ではない

Jリーグが、W杯開催の中断もあって、猛暑さの中、異常な日程で進行している。30度を越える日々が続く夏場に、中2〜3日で試合を組むことが信じられない。Jリーグ関係者は、夏休みが稼ぎ時という意識があるのかもしれないが、選手は消耗品ではない。悪いコンディションの下で試合をしてもいいパフォーマンスは期待できない。Jリーグ主催者には、そういう試合を観客に見せることがいいことなのか悪いことなのかを考えてほしい。顧客、社員を大切にしない経営者でいいのか。

(2)混迷する次期代表監督えらび

岡田に代わる次期代表監督の人選も難航しているように見える。次期代表監督招聘の責任者であるH氏は、スペインサッカーに思い入れが強く、しかも、スペインがW杯で優勝したこともあって、“まずはスペイン人の指導者”という固定概念から交渉に入ったように報道されている。しかし、もしそうだとしたら、あまりにも観念的すぎる。

スペインリーグにおける最強チームの1つ、バルセロナの監督ジョゼップ・グアルディオラは、国籍はスペインだが、カタルーニャ人である。カタルーニャはスペインにあってスペインでない。カタルーニャはスペイン(マドリード)と対立する圏域なのである。スペイン代表がW杯で優勝したことは紛れもない事実であるが、代表チームを構成した主なメンバーはバルセロナに所属し、しかも、カタルーニャ出身者が過半を占めていた。

それだけではない。今季からレアル・マドリードの指揮を取るジョゼ・モウリーニョは、ポルトガル・セトゥーバル出身のポルトガル人。彼は監督として唯一UEFAチーム・オブ・ザ・イヤーに3度選ばれている超逸材であり、その才能について、ここで説明する必要もなかろう。

すなわち、スペインリーグの超ビッグクラブの2人の監督は正確には、スペイン人ではない。ほかにも、昨シーズン3年ぶりに一部昇格を果たしたレアル・ソシエダードのマルティン・ラサルテ監督はウルグアイ人だし、エスパニヨールのマウリシオ・ポチェッティーノ監督はアルゼンチン人、マラガのジェズアウド・フェレイラ監督はポルトガル人だ。ビルバオのルイス・デラフェンテ監督も国籍はスペインだが、おそらく、バスク人(バスクもスペインの中にあって、スペインでない圏域)ではないか。

W杯南アフリカ大会で優勝したスペイン代表チームのあり方、当該コラムで何度も書いたので繰り返さないが、グローバルスタンダードとはかけ離れた仕様だった。バルセロナというクラブの存在なくして、スペインの優勝はなかった。繰り返すが、W杯優勝国=スペイン国籍の指導者という理由だけで、スペイン人を日本代表監督に招聘することはリスクが高すぎる。代表監督選びにおいて重要なのは、言うまでもなく、指導理論及び実績である。協会から委任されたH氏が、次期代表監督をどういう尺度で選んでいるかは定かでないが、公表された候補者リストや報道からうかがう限り、「国籍優先」のように思えてならない。

(3)海外移籍した選手の今後に期待

W杯終了後、大会の活躍が認められて、長友(東京)、川島(川崎)の2選手が海外クラブと契約した。大会前に香川(C大阪)、内田(鹿島)が契約を決めており、さらに、巻(千葉)に続き阿部(浦和)の海外移籍も決まりそうだ。W杯終了後、Jリーガー6選手が日本を離れ、欧州各リーグの10〜11シーズンでプレーする(既にプレーしている選手もいる)。

移籍先は、香川のドルトムント、内田のシャルケのドイツリーグはまあまあだが、川島(ベルギー)、巻(ロシア)、阿部(イングランド2部相当/プレミアの下)の場合はどちらかというと、二流、三流リーグであり、長友が契約したチェゼーナもイタリア・セリエAであるが、ビッグクラブとはいえない。それでも、海外でプレーすることはいいことである。今後、活躍し、ステップアップすることを願っている。


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