サッカーJ1リーグ第32節(2008年11月23日 現在)を終えた時点の順位表は下記のとおり。 1 鹿島アントラーズ (57) 2 名古屋グランパス(55) 3 川崎フロンターレ(54) 4 浦和レッズ(53) 5 大分トリニータ(52) 6 FC東京(52) 7 清水エスパルス(49) 8 ヴィッセル神戸(47) 9 ガンバ大阪(47) 10 柏レイソル(43) 11 横浜F・マリノス(42) 12 京都サンガF.C.(40) 13 大宮アルディージャ(39) 14 アルビレックス新潟(39) (降格入替戦) 15 ジュビロ磐田(37) 16 東京ヴェルディ(37) (自動降格) 17 ジェフユナイテッド千葉(35) 18 コンサドーレ札幌(18)=降格決定
残り2節を残すのみとはいえ、今季の結果は概ね判明した。戦力からみて健闘したのが名古屋、大分の2チーム。チームを率いたストイコビッチ、シャムスカ両監督の手腕は、大いに評価できる。
その一方で、金満・浦和は監督の人選の失敗、チーム・コンセプトの不明確さと選手起用の混乱を重ね、それらの修正ができないまま、優勝戦線から後退した。今季の浦和を象徴する言葉は、「混乱」の一言だろう。
浦和の失敗は、昨シーズンのACL制覇により主力選手に思い上がりが生じ、チームの士気を低めたことに起因する。更に、主力選手の故障、移籍選手とのコンビネーションの不徹底というマイナスをカバーできず、1年間を通じてチームの混乱を収拾できなかった。シーズン中の修正を阻んだのは、昨シーズンのACL制覇という「栄光」だった。クラブ王者決定戦で欧州チャンピオン・ACミランと対戦しただけで、「世界レベル」という錯覚がチーム内外に生じたことだ。オジェックが移籍してきた高原、エジミウソンに何を求めたのかも不明なまま。さらに、後任のエンゲルスも豊富な人材を使いきれなかった。クラブ首脳も「栄光」のチームを改革する勇気が持てず、ずるずると混乱を引きずったまま放置した。浦和を「世界レベル」と囃し立てた日本のスポーツジャーナリズムにも責任がある。
札幌(降格決定)、千葉、東京V、新潟、大宮、京都の下位の順位は予想の範囲内だ。意外だったのは磐田の低迷だ。若手とベテランの切り替えにあたる時期にもかかわらず、選手起用がチグハグで一貫性を欠いた。監督の資質に問題があることは明白だった。近年の磐田の監督人事は、代表コーチの山本をいきなり監督にすえたり、内山を内部昇格させたり、過去の人・オフトを就任させたりと、クラブ自体が錯乱状態にある。
かつての磐田は、ルイス・フェリペ・スコラーリを監督に迎えたほどの慧眼をもったクラブだった。スコラーリは、磐田退任後にブラジル代表監督、ポルトガル代表監督に就任し、それぞれ好成績をあげ、いま現在、英国プレミアのチェルシーを率いているではないか。磐田は、若手の宝庫といわれるクラブ。優れた指導者を起用することで蘇る可能性は高い。
降格圏内の千葉、東京Vも監督に問題がある。千葉はオシム親子の退団と同時に主力も抜け、序盤で連敗を重ねた。降格圏に落ち着いた時期でクラブが監督を更迭し、にわかに補強を始めたが、再建着手が遅すぎた。
東京Vの柱谷は監督としての資質に欠ける。かつての個人プレーに依存したヴェルディ読売の栄光を追っているようではチームの浮上はない。そんな時代ではない。
上も下も僅差の順位なので最終節まで結果はわからない。なお、J1の順位総括とは離れるが、J1の劣化はすでに始まっている。チーム数の多さに日本人選手の質が伴わない。ACL、カップ戦、世代ごとの代表戦と試合数が減ることはない。
アジア枠制度導入は選手補強にプラスに働いていることが示すように、J1が現在のチーム数を維持するつもりならば、アジア枠以外の外国人枠を5人まで増加しないと、ゲームの質は来季以降さらに低下する。Jで育った外国人が欧州、南米のビッグクラブで活躍することがあってもいいし、その逆ももちろん問題がない。「日本人」にこだわるよりも、いいゲームを見せることを考えなければ、日本のサッカーレベルは上がらない。
W杯アジア最終予選、日本vsカタールは、3−0で日本が完勝した。日本代表の危機を訴え続けてきた当コラムとしては、なんとも拍子抜け――と評価する以外にない試合内容だった。
得点者は田中、玉田のFW陣、さらに、3点目がセットプレーから闘莉王とほぼ理想的。DF陣は完封、しかも、懸念された中澤の不在を代役寺田が埋めてと、攻守にわたってほぼ完璧な結果を出した。
難敵カタールを完膚なきまでに叩いた結果オーライの試合。だから、岡田ジャパンの評価は上げなければいけないはずなのだが、繰り返すが、筆者の総括は「拍子抜け」である。
日本は、同組の中東2国・オマーンとカタールに3−2、3−0と2連勝したわけだが、この2試合の結果は筆者の予想を大きく外れたものだった。これまでの日本代表といえば、日本開催の国際親善試合ですら点が取れず、得点力不足を指摘され続けてきた。その指摘どおり、日本代表は先の同組2連敗のカザフスタン戦(ホーム)で1−1と苦戦した。
日本代表は、一般的には厳しいといわれる中東アウエー2試合で、それぞれ3得点をあげたにもかかわらず、有利といわれるホームのカザフスタンに1得点しかあげられなかった。サッカーは常識・一般論は通用しないのだから、矛盾した結果が出ることは珍しくないのかもしれないが、なんとも不可解な結果である。
筆者は、この予選3試合・勝点7(2勝1分け)をまったく分析できないままでいる。あえていえば、中東・相手2国が不調だった?かもしれないというほかはない。前出の中澤に代わって出場した寺田は合格なのかといわれれば、筆者の評価は(寺田には申し訳ないが)D(=不合格)である。試合結果としては完封だったのだから、及第点をあげたいところだけれど、相手が相手だったら、日本は寺田のミスで大きな傷を負ったはずだ。それくらい危なかった。
3試合を終えた段階て、日本が南アフリカに行ける確率は高まった。だが、その先については黒い雲がかかったまま。岡田ジャパンの実力が上がっているかどうかを知る指標は、次のオーストラリア戦。世界に通じるかどうかを知るには、この試合を待つほかない。
2008年11月13日(木) |
意味のない親善試合―日本対シリア― |
こういう形の親善試合(練習試合)に意味があるのだろうか――と、いつもどおりの疑問を抱きつつ、日本とシリアの試合を見ていた。3−1で日本の快勝、19日のW杯アジア最終予選・カタール戦に向けていい準備ができた、なんて思っているサポーターはおそらく日本中探しても一人もいないはずなのだが、中継するテレビ局のアナウンサーが日本の勝利を絶賛する。
こんな親善試合は、強化に値しない。昨日、G大阪はアデレードでACLファイナルを戦っていた。海外組は参加できない。つまり、代表の主力となる選手は参加したくても参加できない。
日本でこの試合を戦った選手がドーハに旅立つのは、2日後の15日。全力を出し、疲労したままドーハに旅立てば、体調を崩しやすい。代表選手にケガはなかったようだが、シリアに元気がなかったことが幸いだった。
何一つとして、メリットがない。ではなぜ、親善試合を組むのか。理由は簡単、日本代表のスポンサー・キリン及びテレビ局のため。日本サッカー協会の収入源として、大企業のスポンサーが必要なことを否定しない。これまでキリンが代表を支えてきた面も否定しない。だが、その結果として、日本代表の強化に結びついたかを考えなければいけない時期に来ている。しかも、結論は出ている。こういう「強化試合」を組んでも、代表はいささかも強くならない。
本当に強化したいのならば、しかるべき時期に、アウエーの試合を数多く組むべきである。ホームに、時差ぼけの「代表」を呼んで練習試合をしてもしょうがない。親善試合・1試合のため、海外からやってきた「代表選手」がモチベーションをもてるはずがない。しかも、対戦相手のシリアは、W杯予選で既に敗退したチーム。シリアの代表選手は、どういう思いで、この試合に臨んだのだろうか。
本気でこない相手と親善試合をこなしても、代表強化につながらない。にもかかわらず、日本が快勝と、“大本営発表”を続け、日本が世界水準であるかのような錯覚をし、バブル化した世界ランキングで自己満足しているのが、日本サッカー業界の現状だ。協会は資金調達できればいい、テレビは視聴率が稼げればいい、サポーターは勝てばいい、新聞は売れればいい・・・と、関係者全員が刹那的、目先の利益を追い続けているうちに、代表の実力はもちろんのこと、日本のサッカーレベルが低下していく。
キリンが知性をもつ企業であるならば、こういう形で代表スポンサーであり続ける現状を反省すべきである。このままスポンサーであり続ければ、「キリン」という冠がそっぽを向かれるばかりではない。真にサッカーを愛する人々から批判を受けことになる。
2008年11月10日(月) |
戦力を奪う読売野球の限界 |
西武と読売の日本シリーズは西武が4−3で読売を退け、日本一となった。対照的なチームである。読売はFA制度を利用して各チームから主力を引き抜いた金満チーム。リーグ制覇も横浜、ヤクルトからがっぽり星を稼いで成し遂げたもの。ヤクルトからはラミレス(4番)、クライジンガー(エース)を引き抜き、横浜からはクルーン(クローザー)を引き抜いた。飛車角を奪われたヤクルト、角を抜かれた横浜が読売に勝てるわけもなく、両チームは読売に大差で負け越し、読売の逆転優勝に大いに貢献した。
そんなセリーグの優勝だから、読売の大逆転にも世間は盛り上がらなかった。北京五輪で星野アホ代表監督が阪神の故障主力選手を起用し続けなければ、阪神の楽勝だった。読売は、星野アホ代表監督にも助けられたわけで、ツキはあった。
昨シーズン、読売はパリーグの主力である小笠原(日ハム)、イ(ロッテ)、谷(オリックス)を獲得。そして、今年はさらにラミレスまで加えた。パリーグならば、まちがいなく2チーム分の戦力を備えている。
一方の西武は、主力といわれても名前の知らない選手ばかり。しかも若い。FAというと、MLBから戻った石井くらいか。それでも、読売よりはるかにいいチームだ。結束力もある。走攻守のバランスがいい。投手もいきのいい選手がそろっている。
読売の若手は明らかに伸び悩んでいる、というか、資質に乏しい。読売が才能のある選手を集め、育てるシステムをつくらなければ、この先も日本一は無理だろうし、日本球界のレベルアップにならない。読売が優勝できるのは、自軍の戦力を上げるというよりも、相手の戦力をカネで奪う、という関係性の結果にすぎない。読売が相手チームから戦力を奪うという戦略を続ける限り、日本の野球はレベル低下を続け、ファンから見放される。
勝てばファンがついてくる、という読売首脳陣の古い職業野球の観念が、日本の野球をダメにする。
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