Sports Enthusiast_1

2005年11月27日(日) 高齢化していた東京V

東京ヴェルディ(V)の降格については、まだ頭の整理ができていないものの、整理のヒントの1つとなるような記事が目にとまった。報道によると、東京Vが来季契約を結ばない選手のリストの中に、MF林健太郎(33)、MF山田卓也(31)、DF米山篤志(28)、MF戸田和幸(27)ら主力選手が入っていることが26日、明らかになったという。また、降格と同時に、FWワシントン(30)、ジウ(25)の両ブラジル人選手の退団が決定的となったという。
東京Vの黄金期、カズ、ラモス、北澤らが大活躍したことは、サッカーファンの記憶の中に刻まれている。そして、彼らの高齢化とともに東京Vは弱体化し、若手への切り替えが叫ばれた。チームの若返り策の結果、カズ、ラモスらは他チームに移籍し、林、山田、米山らがレギュラー・中心選手として定着した。しかし、若手だったはずの主力もいつの間にか30代前後のベテランになっていたようだ。今シーズン前の天皇杯優勝は、熟成した東京Vというチームの頂点だったのかもしれない。そして、シーズン突入とともに急激にピークアウトを始めた。
降格した東京Vだが、この先を担う実力派といえば、DF相馬崇人、MF小林慶行、小林大悟、FW森本貴幸、平本一樹らが思い浮かぶが、たとえば、磐田の若手レギュラークラス・成岡翔、前田遼一、船谷圭祐、カレンロバートらと比較するとやや見劣りする。その一方、東京Vのユースは宝の山と言われるくらいタレント揃いらしい。すでにJ1デビューを果たした選手の代表格が前出の森本、そして根占真伍らであろうか。
若手若手と思われていた東京Vは意外と高齢化していた。にもかかわらず、今シーズンは、若手の成長・台頭が間に合わなかった。それでも、ユースを含め将来を期待できる若手は豊富らしい。となると、J2の来年は若手を鍛えてJ1で通じる選手に育て上げることが課題となる。
注意しなければいけないのは、これまでの東京Vの若手の育成方法では、J1では通じないということだ。東京Vは、自分達の指導理念・指導方法をリセットして見直したほうがいい。東京Vの選手は後半足がとまると、多くのスポーツライターが指摘する。足がとまり、DFラインが下がり、プレスがかからなくなり、相手に自由にボールをまわされて失点を重ねる。それが東京Vの構造的欠陥だった。足がとまるのはトレーニング不足かそれとも精神力の鍛錬不足か不明だが、東京Vには、心身ともにタフな選手が少ないことは否定できない。東京Vの監督にだれがなるのかわからないけれど、科学的トレーニングに基づき、選手の体力づくりを行うことはもちろんのこと、組織力・規律を重んじて90分間動ける選手を育ててほしい。そういう選手を育ててJ1を進化させた監督が千葉のオシムだ。東京Vがその流れに乗り遅れたことは、筆者がすでに当コラム(2005年07月18日(月) 「こちらの読売も・・・」)で書いた。



2005年11月26日(土) 名門ヴェルディ、ついに降格

J1がたいへんなことなってきた。第33節第1日の結果、優勝争いは勝点2差に5チームがひしめく大混戦となり、12月3日の最終節を迎えることになった。C大阪が勝点58で今季初の首位、G大阪は勝点57のまま2位に後退、浦和が同56で3位、鹿島は同56の4位、千葉は同勝点で5位。
一方、降格争いは決着がついて、先に降格決定の神戸に次いで、東京Vの17位が確定し、初の2部(J2)降格が決定。柏の16位も決まり、J2の3位との入れ替え戦出場となった。
降格については、筆者の予想は18位神戸、17位柏、16位東京Vと予想したので外れた。東京Vの欠陥をいまのところ、筆者は解析できていない。歯車が狂った、という表現でいいのだろうか。
この3チームのうち、柏・神戸の両チームの欠陥については、すでに何度も書いたとおり、解析は簡単だった。ところが、東京Vの弱体化の要因はわかりにくい。筆者はアルディレス監督が解任される直前、東京Vが大量失点で敗北を続けたとき、当コラムでその原因について取り上げたことがある。筆者はそのときは極めて抽象的で、東京Vは“Jリーグの他のクラブの進化に取り残された”と書いたのだが、いまでもそのコンセプトは捨てていない。
東京Vは降格危機を感知した段階で、バドン監督を招聘した。ワシントン、ジウの補強も的確だった。クラブの対策としては、神戸・柏よりは気が利いていたのだが、結果に結びつかなかった。
東京Vの個々の選手を見ていると、運動量はそこそこあるものの、いかにもパワー不足だ。プレスの弱さ、一対一の弱さ、球際の弱さ・・・技術的には「うまい」のかもしれないが、ひ弱な優等生の集合体のような感じがする。
チームカラー(全体的なイメージ)は別として、チーム構成からみると、東京Vの欠陥は中盤の弱さなのかもしれない。たとえば、坂本(千葉)、ドゥトラ(横浜)のようにしつこい守備ができて、かつ、サイドを駆け上がれるプレイヤーがいない。大分、C大阪のように、運動量が豊富でシュートが打てるボランチがいない。阿部(千葉)、佐藤(同)のように、攻守のバランスをとりながら、攻撃力をもったボランチがいない。あるいは、浦和の危機を救ったポンテのような、チームを引っ張り、かつ、攻撃の司令塔となれるトップ下がいない。
また一方、東京Vの守備の弱さはしばしば指摘されるところだが、最終ラインとボランチの関係・連携の弱さなのかもしれないし、ずばり、最終ラインのタレント不在かもしれない。ストヤノフ(千葉)のようなリベロがいれば・・・とは贅沢だが、せめて、秋田(名古屋)、森岡(清水)、小村(広島)のような元代表クラスのストッパーがいれば・・・という見かたもある。
ワシントンというずば抜けたFWだけでは、いまのJ1では勝てない、ということは言えても、東京Vの欠陥をずばりこれだ、と、断言できないところがもどかしい。東京V再建の処方箋を書き上げるには、もう少し時間が要る。



2005年11月24日(木) 組織的守備の重要性

大詰めのJリーグの試合をチェックしていて気がついたことがあるので、忘れないうちに書いておこう。

1 組織的守備の重要性
大宮が首位G大阪に1−0で勝った。試合後、勝った三浦、負けた西野、両監督がともに、“大宮の組織的守備”を大宮の勝因として挙げていた。
この試合、G大阪は日本代表・大黒を欠いたとはいえ、アラウージョ、フェルナンジーニョを中心とする攻撃陣の破壊力は健在だ。一方の大宮は、選手全員が相手にスペースを与えないよう、厳しく間合いを詰めてきた。90分間プレスをかけ続けることは至難の技だが、大宮の選手はよく鍛えられている。
また、大宮の攻撃は一見地味だが、相手にボールを奪われても決定的カウンター攻撃を食わないよう、サイドアタックに徹していた。大宮のこの試合に臨むコンセプトは、組織的守備とサイドアタックの2本を柱にしていたように思えた。大宮の決勝点は、左サイドラインを突破した藤本のクロスに久永が頭で合わせたもの。地味ながら、チームの決め事を繰り返す攻めが功を奏した。
大宮はG大阪を規律の面で、上回っていたわけで、その勝利は偶然でもなければまぐれでもない、大宮は勝つべくして勝ったのである。
首位に立つG大阪は、タレントのチーム。アラウージョ、大黒、フェルナンジーニョらが好調ならば、圧倒的な強さを発揮する。中盤では代表の遠藤のミドルシュートやフリーキックがすごい。高さのある守備陣、シジクレイ、日本代表宮本は、セットプレーに攻撃参加して得点を上げる力がある。G大阪は大宮より、はるかに地力があるけれど、組織力で大宮に劣る。どちらのタイプのチームをつくるかは、クラブの方針や監督の個性次第だから、どちらがいいとは言えない。
組織的守備の重要性については、当コラムでも、先般行われたW杯欧州予選プレーオフ(PO)のスイスvsトルコのところで取り上げたことがある。大宮vsG大阪は、そのPOと似ていた。筆者にはG大阪がトルコに、大宮がスイスに、それぞれイメージが重なった。世界のサッカー界における日本代表の位置は、もちろん、トルコ、G大阪ではなく、スイス、大宮に重なっている。

2.日本代表FW再考
しばらく前の当コラムで、日本代表のFWに選ばれる海外組選手は高原一人、それ以外の海外組FWは代表入りが難しいと、また、高原を除く残り3人枠には、大黒(G大阪)、巻(千葉)、玉田(柏)の3人が最有力だ、と書いた。ところが、ここにきて、大黒、玉田がケガ、巻も本来の調子ではない。となれば、この3人に次ぐ選手として久保(横浜)の復活が待たれるものの、久保は昔から故障がちな選手なだけに、過剰な期待は禁物だ。危機管理の観点からすれば、代表のFW候補をもっと広げて考えておく必要がある。
いま現在、代表に近いFWとしては、好調C大阪のベテラン西沢、そして、やはり好調大分で存在感を示す高松の2人が有力候補だ。FWではないけれど、攻撃的MFとして、同じくC大阪の牽引車・森島をマークしてもいい。森島は1トップ、2シャドー(3−4−2−1)のシステムで起用できる。C大阪の2人の日韓大会経験者が代表に復帰する可能性は高いはず。もちろん、もっと若いFWを、という意見も正しいけれど、具体的に名前をとなると困ってしまう。Jリーグに若いFWがいないわけではないのだが・・・磐田のY監督がカレンロバートをもっと試合に出してくれていれば・・・と思うのは、筆者だけだろうか。



2005年11月23日(水) 岡田主審、退場してください

優勝戦線生き残り、首の皮一枚をかけた千葉vs浦和は、1−0で千葉が辛勝した。いい試合だったけれど、主審の笛がうるさくて、試合に集中できなかったのが残念だった。
この試合、岡田主審が出したイエローカードは次のとおり。19' 鈴木(浦和)、23' 堀之内(浦和)、24' 斎藤(千葉)、32' ハース(千葉)、39' 結城(千葉)、60' 三都主(浦和)、62' 坂本(千葉)、82'酒井(浦和)、86'エスクデロ(浦和)、86' エスクデロ(同)=退場
両チーム併せてイエローが10枚、途中出場したエスクデロ(浦和)が立て続けにイエローを2枚もらって退場した。彼はカードをもらいにピッチに出たようなものだ。エスクデロの退場の後、千葉に決勝ゴールが生まれたから、千葉にはラッキーだった。
10枚のイエローの中には、ラフプレーが含まれているから、岡田主審が出したイエローのすべてが不当だというつもりはない。けれど、岡田主審の場合、イエローを出す判定基準が他の主審に比べて緩い。さらに、判定基準が曖昧だ。岡田主審は以前当コラムで書いたことがあるが、ボディコンタクトが嫌いで、選手が倒れるとすぐに笛を吹いてファウルをとる傾向がある。足がかかれば、すぐイエローだ。この試合には、突破された相手に対して故意に足を出したイエローもあったが、それほど悪質でないファウルにもカードを出していた。一度出すと止まらなくなるのがイエローカードの特徴で、冒頭記したとおり、合計10枚となった。
さて、大詰めのリーグ戦は首位G大阪(大宮)、3位鹿島(横浜)が負けて、2位C大阪(大分)が引分けに終わった。前節と順位は変わらないものの、残り2試合を残して3チームの勝点差は2点にまで縮まった。いい展開になってきた。これが1シーズン制の利点の1つで、優勝決定を前にして上位が下位に負けることが多々見られる。降格争いも熾烈で、真剣な試合が続く。前後期制度にはない迫力だ。
長丁場を戦ってこそ真の王者だ。しつこいかもしれないけれど、代表入りの資格は、試合に出続けてチームに貢献した選手こそがふさわしい。W杯に出られる程度のトップリーグならば、国の違いを問わない。いかがわしいFIFAランキングだけれど、日本の順位は世界で20位以内。Jリーグで活躍している選手ならだれだって、日本代表に入る資格は十分なのだ。頑張っているJリーガーが評価されないのは不当である。がんばれ、Jリーガー!



2005年11月20日(日) 神戸、降格決定

神戸がJ2に降格した。そもそも、開幕前後から、神戸は迷走していた。クラブ側は、チェコの理論派・ハシェック監督を解任した後、ブラジルから実力派のレオン監督を招聘しながら即刻解任、新監督にパベル(コーチ)を昇格させた。パベルは、ホームでも超守備的布陣で臨む消極策をとるヘボ監督で、チームを上昇させる手腕はなかった。補強の外国人選手もJリーグにフィットせず、順位は下がり続けた。チームコンセプトが見えないまま、降格街道を驀進し今日に至った。
降格の責任はもちろん、クラブ側にある。監督、外国人補強、日本人補強、新戦力の発掘、戦略・戦術、規律、作戦、選手起用・・・すべてが誤りだった。神戸のオーナーは楽天・三木谷社長だが、今季開幕前後から、三木谷社長にクラブ強化の情熱も意欲も感じられなかったし、いまも感じられない。三木谷社長には地域文化、地域スポーツを育む気持ちはない。楽天はできるだけ早く、サッカークラブ経営から、撤退してほしい。もっと、クラブ経営に意欲を持っている企業なり個人なりに、神戸を譲渡してほしい。
サッカーは文化である。いまのところ、世界共通の言語に等しい。神戸市民はサッカー文化を通じて気持ちを1つにすることもできるし、世界に通じることもできる。サッカークラブは、楽天という●流企業の成金オーナーの私物でおさまる財ではない。クラブを経営するのならば、真剣にやってほしいし、強くする気がないのなら、繰り返すが、文化を育てる意欲とハートをもったオーナーに代わってほしい。Jリーグは入れ替え制度があるから、楽天が振りまく悪影響が伝染しない。それがせめてもの救いだ。



2005年11月19日(土) トルコは確かに強かったが

W杯ドイツ大会プレーオフ(PO)、スイスvsトルコ第2戦(トルコホーム)はトルコが4−2(第1戦はスイス2−0トルコ)で勝ったものの、アウエーゴールの差でスイスがPOを制した。
思わぬ乱戦――それが率直な録画中継を見終わった感想だった。スイスが4点も取られるとは・・・トゥンジャイのハットトリックに見られるように、ホームにおけるトルコの攻撃の破壊力はすさまじかった。
第1戦のTV解説者・K氏は、「トルコの個の守備 対 スイスの組織的攻撃」が最大の見所だと言っていたが、この指摘が第2戦に引き継がれ、あたかも通低音のように響き続けていた。結論をいえば、ホームで2点取られてしまったら、POは勝ち抜けないということだ。
トルコの最初の失点は、試合開始2分、アルパイ(元浦和)のハンドによるPKだった。アウエーのスイスからすれば、天の助け、敵から塩を送られたようなものだ。あのアルパイは、この試合を裁くベルギー人主審を舐めていたのかもしれない。ビデオで見る限り、故意のハンド(ボールを手でコントロールした)に間違いない。トルコ代表監督は試合後、主審を非難したらしいけれど、「強い」トルコの驕りである。
2点目は前がかりのトルコ守備陣の連係ミス。トルコの右SBが、タッチラインを割りそうになったボールを中に戻すが、このボールを、走り込んできたスイスのストレーラーが奪って、フリーで決めた。点を取らなければ勝てないから仕方がない、という見方もあろうが、結果的にはこの失点がトルコの致命傷となった。
この試合、開始早々の失点により、トルコ選手の精神状態は尋常ではなかったろう。PKによる思わぬ失点、スイスの“アウエーゴール”が重圧となったに違いない。追い詰められたトルコは大量点狙いで焦る気持ちは当然だが、味方の攻撃力を信じて、冷静かつ組織的守備に徹すれば、トルコが逆転できた可能性もあった(結果論かもしれないが)。それくらい、トルコの攻撃力は力強かったのだ。
第1戦のところでも書いたけれど、「個の守備」では、ハイレベルの欧州予選は勝ち抜けない。トルコの実力はおそらく、スイスより上だろうが、結束力、組織力、運動量、スピードで、スイスがトルコを上回った。繰り返すが、個より組織力、結束力、すなわちチーム力を目指さなければ、個に劣る日本代表は、世界で通じない。06年はもうどうにもならないけれど、ドイツ以降の代表強化のコンセプトは、“スイスに学べ”でいいと思う。



2005年11月18日(金) 高原の才能と限界

アンゴラ戦は日本のFW陣の課題を浮き彫りにした試合だった。いつものことではないか、と、サッカーに詳しい人ならいうかもしれない。日本代表の決定力不足については、語り尽くされた感がないではないのだが、W杯出場国すべてが決まったこの時期、日本代表最大の問題が未解決で放置されたままだ。もちろん、その責任は・・・にある。
さて、筆者は、アンゴラ戦を通じて、問題の日本のFWの一人・高原のプレーを見ていて、彼の才能と限界を見たような気がした。
高原の才能は反応の鋭さにある。いまのところ、日本選手の中で一番だ。もう一人の日本を代表するストライカー・大黒は「動き出し」のよさ(速さ)が特徴だ。高原はボールに対する反応において大黒より勝っており、控えとはいえ、ドイツのクラブに属していられるのは、所属クラブの首脳陣が高原のその部分の才能を買っているためだろう。
では、高原の限界とは何か――シュートを“狙う”意識の欠如にある。彼はボールに直感的に反応する能力があるので、その感覚がフィットした試合では大量点を入れる可能性が高い。
アンゴラ戦、高原に決定的チャンスが3度あり、彼が放ったシュートは2度バーに当たり、1度はGKの正面だった。微妙なズレのため、高原はゴールネットを揺らすことがなかった。惜しいけれど、こういう試合で決められなければ、ワールドクラスのFWにはなれない。高原には抜群の反応力(センス)があり、平凡なFWならシュートチャンスに結び付けられないような場面でもシュートが打てる。このことは高原の類稀な才能なのだが、決められなければ、いい場面に「顔を出す」FWで終わってしまう。こうした限界性が、高原を控え選手にとどめている。
高原のような選手にも、使い道はある。最も適しているのは、リードされた局面だ。何も手を打たなければ負けてしまう状況ならば、高原の直感的才能に賭けてもいい。
アンゴラ戦のもう1人の先発FWは柳沢だったが、筆者は柳沢をまったく評価しない。以前、当コラムで書いたとおり、試合に出られない選手を代表に呼ぶべきでない。筆者は、柳沢の代表入りそのものに疑問を持っている。
高原がサブ、柳沢が代表外となれば、先発FWはだれがいいのか。Jリーグの日本人FWで最高得点を上げている大黒が、実績において一番手であり、次いで巻(千葉)が二番手だ。
大黒の才能は先述のとおり「動き出しのよさ、速さ」にある。一方、巻の才能は、ゴールを「狙っている」姿勢とゴールを生み出す役割がこなせるところにある。ゴールを狙わないFWなんかいないといわれるかもしれないが、大黒が相手DFの裏に飛び出る特徴をもったFWなら、巻はGKとDFの間(GKの前)で勝負したり、DFを背負いながら、あるいは、DFの前で基点となるポストプレー、パワープレーができるFWだ。巻に不足しているのは、国際試合の経験だけだ。彼を代表で使ってこなかった責任は、いまの代表監督にある。
W杯出場メンバーにおけるFWの枠は、日本代表のシステムなら4人だから、大黒、巻、高原の3枠が埋まり、残りは1枠となる。1枠は実績からいえば、田中(浦和)、大久保(マジョルカ)、久保(横浜)だろうが、田中、久保はケガでだめ、大久保は常時出場できていないので、いまの状況が続けば、3人とも選べない。となると、所属する柏が二部落ちしなければ、玉田が順当だ。
Jリーグで活躍するFWは、外国人選手がほとんど。それが日本サッカー界の現状だ。高原、大久保、柳沢は海外クラブに移籍したものの、試合に出場できない。この移籍は失敗かもしれない。代表FWに最短距離にある大黒、巻、高原、玉田の4人を鍛える時間はない。FW問題は、代表監督のチームづくりのビジョンのなさが主因――と言っても、もう遅すぎる。



2005年11月16日(水) どっちもどっち

サッカー日本代表は、アフリカの新興勢力の1つ・アンゴラと親善試合を行った。結果はご覧のとおり、終了間際の松井のヘディングで1−0で勝った。得点差1点だが、辛勝というほど緊張感の伴った試合ではなかった。はっきりいえば、レベルの低い−見るべきものない−内容の乏しい−退屈な−試合だった。
前半、アンゴラの動きは鈍かった。日本に対してマークもしなければ、プレスをかけるわけでもない。日本の攻撃に対して、近くの個人が「応対」をしていた。Jリーグのガンバ大阪、川崎フロンターレあたりなら、きょうのアンゴラからなら3〜4点は取れただろう。日本代表の「エース」高原、柳沢は決定機を外しまくって、前半は無得点。悲しいかな、日本代表には、アラウージョ、ジョニーニョがいない。“お粗末なアンゴラの守備”に、“お粗末な日本の攻撃”で、前半は0−0で終了。なんと申しましょうか・・・
後半はアンゴラの攻撃にスピードが出て、日本を襲ったものの、アンゴラのフィニッシュはミドルシュート中心で、ボックス内で完全に日本の守備を崩しきった回数は1、2度だったと思う。アンゴラの守備陣もマークが徹底して、前半ほど日本にチャンスが生まれなくなった。やっと、サッカーらしくなってきたのかな、と思ったら、残り時間も10分を切った。その間、選手交代がめまぐるしく行われたものの、0−0で試合終了かと思った矢先、中村のハイボールを柳沢がエンドラインぎりぎりで折り返し、ノーマークの松井がヘディングで決めた。残り0分、アンゴラの選手の緊張が切れたのか、気を抜いたのか。
今年最後のホームでの代表戦、海外組も召集して・・・勝ったことは「おめでたい」ことかもしれないけれど、日本、アンゴラ、“どっちもどっち”の一戦だった。こんなんで、いいんでしょうか・・・
                ※             ※
さて、プレーオフ(PO)セカンドレグが始まった。アウエーで0−1とウルグアイにリードされていたオーストラリア(豪)が、ホームで1−0とタイに持ち込み、PK戦でドイツ行きを決めたらしい。豪の監督は日韓大会で韓国を率いたヒディングだ。ヒディングの代表監督としての評価は、これで不動のものとなった。豪はアジアサッカー連盟に加盟したので、南米5位とのPOは廃止される。次回のW予選から、豪はアジア予選に参戦する。日本にとって、やっかいな相手が増えた。



2005年11月15日(火) スイスの勝利が意味するもの

世界各地で、W杯ドイツ大会に向けた、プレーオフ(PO)が始まった。筆者が注目する試合は、当コラムで絶賛したスイスが出場した、対トルコ戦だ。スイスは、フランス、アイルランドの二強といわれたグループにおいて、アイルランドを最下位に蹴落として、POに進出した。一方のトルコは、日韓W杯で日本のベスト8入りを拒んだばかりか、ブラジル、ドイツに次いで、大会3位の好成績をおさめた強豪だ。格という意味では、トルコの方が数枚も上だ。代表選手が活躍するリーグ、クラブを比較してみても、トルコの選手の方が強豪に属している。
さて、試合はホームのスイスが2−0でトルコに勝った。筆者が欧州予選でもっとも「良い」チームとまで断言したスイスが、あと1戦の結果次第でドイツに行ける。
試合展開は省略するが、この試合の見所は、TV解説者・K氏が指摘されたとおり、「トルコの個の守備に対して、スイスの組織的攻撃が通じるか」にあった。トルコ代表のDFには、Jリーグ浦和に在籍したアルパイが復帰していた。だからというわけではないが、Jリーグにたとえれば、浦和(トルコ)−千葉(スイス)の戦いに似ている。そして、結果は組織のスイスが、個のトルコから点を奪い、守備でもトルコを完璧に封じたのだ。
反論はあるだろう。スイスがホーム、トルコの主力の多くが、ケガと出場停止で出場していない・・・云々。だが、そんなことより、遠い欧州の小国で行われていたPOの大一番を見ながら、筆者はまったく別のことを考えていた。
話は2002年に遡る。冒頭に記したとおり、日本代表は雨の仙台で、トルコに敗れ、W杯日韓大会における決勝トーナメントから姿を消した。この一戦をもって、日本の挑戦は終わった。
敗戦から数日後、日本サッカー協会の一機関が、この敗戦に関する1通のリポートを作成したといわれている、と同時に、トルコ戦を観戦したジーコ氏が、トルシエ監督に対する強い批判を開始した、ともいわれている。リポートの内容は、日本の組織依存は限界、個の強化に入らなければ、世界の壁は破れない、というような内容だといわれているし、ジーコ氏のトルシエ批判の内容も、当時の代表選手は「トルシエのロボットだ」というような意味だったといわれている。そして、リポートとジーコ氏の怒りは一本の流れにまとまり、「ジーコジャパン」が誕生したという。ここまでの経緯は、当コラムで書いたことがある。ジーコ氏のトルシエ批判を受けた日本のスポーツジャーナリズムは、「個人崇拝と創造性」の大キャンペーンを展開し、今日に至っている。
さて、02年、日本に引導を渡したトルコが、06年W杯予選POで、スイスに負けた。まだ、完全に負けたわけではないが、POで1敗した。しかも、TV解説者のK氏の慧眼が見通されたように、スイスがトルコに組織で勝利した。再三再四、繰り返すことだけれども、組織は規律に通じるのであって、けして創造性や個人に通じるものではない。
02年のトルコ戦で日本が敗けたのは、[組織]が[個人]に負けたのではなく、不十分な[組織]が優秀な[個人]に敗けたのだ。だから、トルシエの仕事は「やりかけ」だったのにすぎない、とも換言できる。
スイスは欧州の小国だ。W杯出場回数は多いが、ベスト8に入ったことはない。国内リーグの規模も小さいし、傑出した選手もいない。せいぜい、イングランド・プレミア、ブンデスリーグでレギュラーの選手が数人いるにすぎない。個の力を見れば、日本と似ていなくもない。もちろん、トルコの力が02年当時をピークとして下降気味だという評価もあるかもしれない。それでも、小国スイスがトルコに勝ったことは、組織強化次第で、小国が強豪国に勝てる可能性を示している。
結論は繰り返しになる。02年、ジーコ氏の代表監督就任をもって、日本(代表)サッカーが、とんでもないジグザグ路線を歩まざるを得なかったことが残念でならない。失われた時間は戻らない。日本の身の丈を計り損ねたのだ。
02年のトルコ戦のあと、トルシエジャパンを批判するリポートが実際に存在したのかどうかは、筆者にはわからない。だからもちろん、それをまとめた責任者がだれかもわからない。かりにリポートをまとめた人物が日本サッカー界の関係者として現存しているのならば、数日前行われたPO・スイスvsトルコのビデオを見てほしい。できれば、K氏が解説したもののほうが良いだろう。
日本サッカー協会は、スイスがどうやっていまの代表チームを強化してきたかをリポートにまとめたほうが良い。スイスに日本が学ぶことは、かなり多いと筆者は考えている。筆者は06年ドイツ大会に期待することがない、と当コラムで書いた。いまの日本代表の路線から、06年以降の展望は見出せない。だから、一度リセットすることが必要なのだ。PO開催時は、06年以降のビジョンをつくるに絶好の機会だ。サッカー関係者は、各地で行われる(た)POを、一戦たりとも見逃してはならない。



2005年11月11日(金) 大失敗、アジアシリーズ(野球)

「コナミカップ アジアシリーズ2005」は第2日の11日、東京ドームで予選リーグ2試合を行い、ロッテは興農ブルズ(台湾)を12―1(七回コールド)で破って2連勝とし、決勝進出を決めた。12日はロッテ―チャイナ、サムスン―興農の2試合が行われ、サムスンと興農の勝者が13日の決勝でロッテと対戦する。
12日の2試合の勝者はだれが見たって、ロッテ、サムスンで決まりだろうから、興味は完全にそがれた形だ。サッカー東アジア選手権がそれなりの緊張感を伴った地域大会として定着しつつある一方、野球は実力の不均衡性が鮮明になり、大会の失敗が終わる前に明らかになってしまった。
本日(11日)のロッテ―興農ブルズはテレビ中継時間を大幅に余してコールドゲームで終結してしまった。ゴールデンタイムに高い放映権を取得したスポンサー企業は、この大会のあり方に不信を抱いて当然だ。もちろん、冠大会としてメーンスポンサーとなったコナミ社も、本イベントの惨憺たる結果を見て、来年、冠を買い取るかどうか迷うだろう。筆者が同社のマーケティング担当者なら、もっとましなスポーツイベントに金を使う。
アジアのクラブチームの覇者を決定する、という建前は、大会2日目で破綻、メッキが完全にはがれてしまった。この大会を見れば、野球が五輪種目としてふさわしくないことが了解事項となり、五輪に復活することもあるまい。野球は南中北アメリカ、極東アジア(韓国・日本)の限定スポーツとして再認識される。野球がグローバルスポーツのサッカーと比較することはここ当分、100年間はないに違いない。
アジアがこの程度だから、野球の「W杯」の実態は、アメリカ大陸+極東+豪州の大会になりそうだ。そうなると、W杯という命名は誇大宣伝だ。野球がうまくて本業としてやりたい人は、アメリカに集まれ、ということだ。アジアシリーズは、野球がマイナースポーツであることを実証するだけの大会としてして終わる。



2005年11月06日(日) 努力は報われる

千葉がナビスコ杯で優勝した。感激した。サポーター、優勝した千葉の選手、そして負けたG大阪の選手も泣いた。とりわけ、敗れた側のフェルナンジーニョ(G大阪)の泣き顔が印象的だった。アップで映し出された童顔の彼の泣き顔は、悪戯をして母親にしかられた幼児の表情のようだった。この「幼児」は母親にではなく、老獪オシムにお灸をすえられたのだった。それくらい、この試合におけるオシム采配はすごかった。「良かった」「うまかった」を通り越した「すごみ」を感じた。何かがのりうつったのだろう。神?悪魔?どちらでもいい。先が見えたのだ。ただ、報道によると、PK合戦はさすがのオシム監督も見られず、ベンチ奥・ロッカールームに一人引きこもっていたというから、カリスマもこのときばかりは、神に祈っていたのかもしれない。
オシム監督に弱気をもたらせたものは、ピッチにいた妖精(主審)の悪戯だった。残り3分をきったとき、千葉の巻がゴールネットを揺らした。あざやかな決勝ゴールとは言えないけれど、彼らしい泥臭いゴールだった。試合は90分(+ロスタイム)で終わるはずだった。にもかかわらず、巻のゴールは取り消されてしまった。おそらく、あざやかではないシュートであるがゆえに・・・
Jリーグのピッチ上で、ちょろちょろ動き回る妖精は、いろいろな悪さを仕掛けることで有名だ。ハンドゴールを見落としたり、選手を傷つける悪質タックルにカードを出さなかったり、ルールを間違えたりなのだが、とりわけ、魔法(カード)を使ってピッチから選手を消すことが得意なので困る。
ビデオが妖精の悪さを記録しているものだから、最近は少し慎重になってきたけれど、事件は途絶えることがない。この試合の妖精は、選手達が恐れるSR(スペシャルレフリー)の肩書きがついていた。SR妖精はとわけ凶暴なのだ。
この日、神?が憑依したカリスマ・オシムでさえも、獰猛なSR妖精の被害から逃れられなかった。だから、試合がPK戦にもつれたとき、オシム監督はロッカールームで祈ったに違いない。“妖精に勝利を奪われませぬように・・・”と。
さて、千葉の勝利については、多くのメディアの報道の通りだと思う。「走るサッカー」が有名だが、調子のいい選手を使う、規律(約束事)をつくる、その規律を選手に守らせる、規律を守る選手を使う――選手の「名前」や「キャリア」にこだわらず、監督が課した役割を実行できる選手を試合に出す方針がなによりも徹底していた。おそらく、オシム監督が日本代表監督ならば、ジーコ監督のように、海外のクラブに「所属する」だけの選手を、優先的に試合に出したりはしないだろう。
千葉のサッカーは「走れなくなったところで終わり」だといわれた。リーグ戦では後半75分近くで運動量が落ち、リードを守れなくなった試合も多い。ところが、この試合では延長30分間中も運動量が落ちなかった。足をつった選手の数は、G大阪の方が圧倒的に多かった。鍛え方の違いが歴然としていた。
サッカーでは、選手を鍛えてうまくするのはクラブの仕事だと言われる。南米では若い才能のある選手を育て上げて欧州に輸出する。そこで得られた収入が、クラブ運営を支える。今季、(金満)磐田に元五輪代表監督が新任し、千葉から村井、茶野、チェ(京都にレンタル)という代表選手を引き抜いた。それでなくとも選手層の薄い千葉だから、絶対ピンチ、降格候補ナンバーワンと言われたものだが、リーグ戦が始まると、直接対決で千葉は磐田を圧倒したばかりか、現在、磐田より上の順位にいる。ご承知のように、磐田には代表、元代表、若手の有力選手が掃いて捨てるほどいる、にもかかわらずだ。
磐田の選手に努力が足りないとは言わない。サッカーに限らず、監督、選手、クラブ・・・は、1日24時間という同じ長さの時間が与えられている。その時間をうまく使えば成果が上がるし、下手にすごせばそれまでだ。オシム千葉と元五輪監督率いる磐田は、その意味で今シーズン、対照的な結果に終わりそうだ。
カップ戦ではあるけれど、千葉がサッカー日本一に輝いたことは、日本サッカーの新しい地平を開いたと考えていい。新しい地平とは、指導者の重要性(見直し)ということだ。指導者次第で、選手はうまくなれる。Jリーグ、日本代表を問わず、いい指導者を探す努力をしてほしい。「オシムを発見」した千葉のクラブ関係者の慧眼に敬服するばかりだ。だがまてよ、千葉といえば、川渕キャプテンの出身クラブ・古川電工ではないか。川渕キャプテンは、日本代表監督にジーコ氏を選んだ。いまの日本代表には、千葉がもっている「良さ」がまるでない。千葉(オシム監督)の何もかもが良いとは言わないけれど、世界の一流と比べて戦力に劣る日本代表がW杯で勝つためには、千葉のようなひたむきさ(豊富な運動量、スピード)が必要ではないか。オシムイズムにあって、ジーコイズムにないもの――それが日本代表に絶対に必要なもののように思える。
蛇足ながら、千葉がトップを極めたことで、サッカーにおける[組織・規律]と[個人・創造性]の議論は完全に決着がついた。戦力的に下回る千葉がG大阪に勝てたのは、選手がオシム監督の意を受けたからだ。そのことはトルシエの意を受けた日本代表がW杯日韓大会で結果を出したことと等しい。オシムイズムを認識する際に最も重要なことは、千葉の優勝が、日本サッカー界を蝕む[個人・創造性]信仰・幻想を唾棄したことにある。



2005年11月05日(土) いいぞ、金村義明氏

金村義明氏は、プロ野球評論家の中で最も信頼できる一人だ。金村氏は近鉄を皮切りに現役生活をスタートし、西武で現役生活を終えた。名選手、大選手ではなかったと思うが、いま、テレビで大活躍、明快な解説に好感が持てる。
今朝、レギュラーのワイドショーで、金村氏は楽天が野村氏を監督に招聘したことに異議を唱えた。まったくそのとおりであって、筆者は全面的に金村氏の意見を支持する。金村氏は、野村氏の野球に対する考え方がスポーツの持つ明るさ、爽快さとは対極にある、と指摘した。まったく、そのとおり。さらに、金村氏は、楽天の三木谷オーナーにも噛み付いて、野村氏を楽天球団に招聘する根拠が分からない、と批判した。まったく、そのとおり。
近年、三木谷・楽天社長はスポーツビジネスに積極的に参画して、サッカー、プロ野球の球団オーナーとなった。ところが、サッカーではヴィッセル神戸がダメ、プロ野球では、一年目、戦力的ハンディキャップから楽天Gイーグルスがぶっちぎりの最下位。これは仕方がない面もあるので同情するけれど、さあ、二年目から本格的なチーム作りに取り組む気なら、これまでの日本のプロ野球の概念を超えた新しいコンセプトで、チームづくりを目指すべきだった。
三木谷氏はスポーツセンスがない。ヴィッセル神戸もそうだが、楽天Gイーグルスでも、チームを計画的に強化するビジョンが見えない。おそらく、三木谷社長の周囲に、スポーツをよく知るスタッフがいないのだろう。だから、まず、ソロバンから入って、「黒字だからいいや」となる。ファンが喜ぶコンテンツを提供する意欲に欠ける。
高齢の野村氏の野球理論は時代遅れ。くどくど結果論で選手を批判したり、プレーを分析してみせたりする姿勢は、スポーツの指導者らしからぬ。スピード、パワーというスポーツの原点に帰るべき時代にもかかわらず、「野村理論」はその流れに反する。
今シーズンの日本シリーズでは、バレンタイン監督率いる千葉ロッテが、阪神を破った。千葉の勝利は、野村氏が代表する、結果論野球が時代から外れていることの象徴だと思う。思えば、交流戦で優勝したのは千葉ロッテだった。シーズンはソフトバンクが一位だったので、短期戦の結果だけで、千葉ロッテの野球が最高だと確言できないが、日本プロ野球のあり方が変わってきていることの1つの現れだと思う。
金村氏の解説はユーモアに溢れており、解説スタイルからは「お笑い系」のように受け止められるかもしれないが、「笑い」の下に鋭い批判精神を潜ませている。権威におもねるところがない。今後の再就職に備えて、球界・球団を批判しない評論家が多い中、金村氏のように、リスクを負って自己の見識をコメントする姿勢がいい。ダメなものはダメなんだ。
多くのプロ野球解説者がメディアで活躍しているけれど、筆者の知る限りでは、投手部門で水野雄仁氏(元読売)、阪神専門部門で川藤幸三氏、そしてこの金村氏の3人の解説者が、群を抜いていると思っている。今後ますますの金村氏の奮闘に期待している。



2005年11月03日(木) 仰天、サッカー協会人事

●あの岡田氏が?
Web Hochiによると、川淵三郎キャプテンは2日、レスリー・モットラムチーフ審判インストラクター(スコットランド)と来年の契約を結ばないことを明らかにしたという。当然だと思う。Jリーグの審判を巡る惨状には、眼を覆いたくなる。はっきり言えば、モットラム氏が日本の審判技術の向上に努めてきたかどうかは大いに疑問だ。
同Webによると、川渕キャプテンは後任にピエロ・ルイジ・コッリーナ氏(イタリア)と交渉したが拒否されたことを明かし、「日本人を考えている」と語ったという。となると、SR(スペシャルレフェリー)を定年となる岡田正義氏が有力と見られるが、おいおい、あの岡田氏がインストラクターじゃ、普通の審判までおかしくなるゾ。審判インストラクターという要職が、定年後審判の名誉職じゃ、どこかの国の官僚機構と同じではないか。岡田氏がすぐれた審判なら納得もできるけれど、同氏の迷ジャッジぶりといえば、今年のJリーグ開幕戦における、福西(磐田)の「神の手事件」がとっさに思い浮かぶ。確かに同氏は有名人ではあるけれど・・・
川渕キャプテンは、「常に世界と接点を持っている人を招く必要はある」と語り、今後も欧州の人材を探していくというのだが、岡田氏を同職におさめるようなことであれば、日本サッカー協会が「審判問題」に本気で取り組む気のないことを証明したようなものだ。そうなれば、田中(浦和)のような犠牲者が絶えない。川渕キャプテン、頑張っていい人材を探してほしい。

●悪い流れが絶たれるかも・・・
Nikkan Sports.Comによると、10月15日の浦和−柏戦で、浦和FW田中が柏DF土屋の危険なタックルを受けて右足首脱臼骨折の重傷を負ったプレーは、ノーファウルではなく警告が妥当な判定だった、という結論に達したことを明らかにした。
1日の審判委員会による検証結果を聞いたJリーグ鈴木昌チェアマンが2日、「(土屋のタックルは)ボールには行っているが、止まれていなかった。警告のプレーだった」と説明したという。
プレーを問題視した浦和から意見書が届いていたが、警告が妥当な判定だったことを認める回答書を送ることになった。また鈴木チェアマンは今後、クラブに対する回答書などを同委員会のホームページで公表するように要望したという。
つまり、土屋にカードを出さなかった主審の“誤審”を審判委員会が認めたわけだ。誤審を犯した主審は反省してほしい。2試合程度の出場停止が妥当だろう。
それはそれとして、鈴木チェアマンの同委員会への要望は、評価できる。同委員会の検証結果の公開については、筆者が当コラムで要望したことでもある。同委員会の情報公開により、それが議論を呼ぶことになる。そうなれば、同委員会もいい加減な検証はできなくなるし、審判も同委員会に「守られる」こともなくなる。サポーターもスポーツジャーナリズムも、審判に対して、選手と同じくらい厳しい目を向けてほしい。やれやれ、これで、悪い流れの一つが絶たれる。
鈴木チェアマン、やりますね。


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