職業婦人通信
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我が実家に、ついにアレが上陸した。
現在日本各地を席巻していると噂の「オレオレ詐欺」である。
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私は数年前に実家を出て、会社の社宅で暮らしているので 実家には両親と妹の3人がいる。
今回、オレオレ詐欺の犯行グループは 妹ノリコを騙って母に電話をかけてきた。
妹ノリコは中学・高校・大学と、ギャルブームまっさかりの世代を生き、 マンバギャルになったうえにプチ家出までした時期があり 旧世代の両親をいたく心配させてきた。
最近ではまっとうな会社でOLとして働き、 親を多少は安心させたものの 依然としてクラブ通いがやまないことや、レイヴに狂って 週末家に帰ってこないこともよくあるため 両親は 「あの子は、いつまた不良になってしまうかわからない・・・」と、 全面的な安心を得られていない状況にあった。
さて、母によれば、妹ノリコを騙る女は 平日昼間(ホンモノの妹は会社にいる時間帯)に電話をかけてきた。
そして母が電話に出るなり 「おっおかあさぁ〜ん〜ごめんなさぁぁ〜い」と号泣。
相手が号泣していたため、母はホンモノとの違いを判別できず、 ついついホンモノだと信じこんでしまった。
動転した母が 「どどどうしたの?今会社じゃないの?」 と問うと、
偽妹は 「うっうっ(泣)これから車で空港に行くところだから・・・ もうお母さんに会えないかもしれない・・・ 今までいろいろありがとう・・・(以下号泣)」 と泣きじゃくり、
「ちょっと今一緒にいる人に代わるね・・・」 と、電話をバトンタッチ。
次の相手は 「私、○○信用ローンという消費者金融会社の者ですが」 と名乗る男で
「お宅のノリコさんね、ウチに150万円借金なさいまして、 その時に『返済できなかったら当社の指定したところで働いて返済する』 という契約をなさってるんですよ。 それでノリコさんは返済できなかったので、これから私どもの 指定したところで働いていただく予定です」とのたまった。
母はさらに動転し、 「ノリコをどこに連れていくつもりなんです?! お金ならお返ししますから、ノリコをそこに降ろして!」 と、んもう相手の思うツボである。
相手は 「いやーそういう契約ですから。これからノリコさんには 東南アジアの某国に行っていただいて、 新薬の被験者になっていただきますので・・・」 と、たたみかける。
新薬の被験者・・・。 冷静に考えたらどう考えたっておかしいだろオイ! という、怪しさ全開の無茶苦茶なストーリー展開にもかかわらず
母は 「夫と弁護士とも相談してすぐに折り返しお電話しますので! そちらの電話番号を教えてください、お金を払えばノリコは 解放してもらえるんですねっっ!!」 と、ドツボにはまってゆくのであった。
相手の携帯番号を聞いて電話を切った母は 速攻で父に電話。
父は半信半疑ながらも友達の弁護士に相談し 当然弁護士は 「どう考えたってそりゃオレオレ詐欺ですよ」 と、あっさり却下。
父と弁護士が電話で話し合う一方、母は妹の携帯に電話をかけまくるも 妹は勤務中で携帯に出なかったので 母は発狂寸前、近所の交番に走る始末。
派出所のおまわりさんは千代子の同級生のお父さんで 我が家とは長年のつきあい。 取り乱す母をなだめてオレオレ詐欺の可能性を示唆し、 少し冷静さを取り戻した母が 相手にもう一回電話して弁護士と警察に相談した旨を告げると 相手は電話を切り、その後は通信不能となった。
こうして事態は、母が動転して金を払うという 最悪の結末を見ることなく、終息を迎えたのであるが・・・
詰めの甘い詐欺団だったからこそ難を逃れたものの、 もう少しキッチリ詰めてくる相手だったら たぶん母は金を払っていたであろう。まったく危ないったらありゃしない。
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以前に、相方リョウスケの実家がオレオレ詐欺に遭遇した (相方のお母さんもギリギリのところで被害に遭わずにすんだ)こともあり 私は我が両親には何度も注意を喚起してきた。
その時両親は 「娘の声がわからないほど我々はボケていない、心配無用」 というようなことを力強く語っていたにもかかわらず、 結局ダマされる寸前までいったのである(母に至っては100%ダマされてた)。
我が家のリスク管理能力の低さが いかんなく露呈されたわけだが
それだけ手口が巧妙になり、詐欺の出演者も演出も 多種多彩になっているということなのだろう。
それにしても、今回はっきりと家族内で証明されたのが 両親の妹に対する信頼の低さである。
「たった150万くらいで外国に売り飛ばされたりするほど アタシもバカじゃないわよ!んったく信用ないんだから〜」
と、後に事情を知った妹は憤懣をブチまけていたが
母までもが
「あの電話ねぇ・・・あれがノリコを騙ってなくて 千代子を騙っての電話だったらアタシもダマされなかったと思うのよ・・・ あの子(ノリコ)はホラ、ああいう子だから 借金とかしちゃってたりしてもおかしくないでしょ?」
と、次女に対する信頼のなさをこっそりと暴露した時には 姉として長女として、たいへんフクザツな気持ちになった千代子であった。 妹より私のほうが信頼があるらしいのは嬉しいが、妹がかわいそうすぎるではないか。
このように、 成長ぶりに不安を残す子供を持つ親御さんほど 詐欺にかかりやすい傾向があるようなので (相方リョウスケの家族がオレオレ詐欺に遭遇したときもそうだった)
身に覚えのある(親に心配かけてきた)人は特に、 ご両親に重ねて注意を喚起するべきかと。くわばらくわばら。
2004年11月09日(火) |
たったひとつのたからもの その2 |
更新間隔がまた空きました。
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ヨッちゃんと会わなくなって数年が経過したころ。
父はそれまで勤めていた会社を辞め、田中のおじちゃんが 経営する会社に転職した。
田中のおじちゃんとともに経営に参画する立場となった 父であったが、田中のおじちゃんの間には 亀裂が生じはじめていた。
原因はヨッちゃんをめぐることで ウチの父が余計な口出しをしたことにあった。
後に父が語ったところによれば、 ヨッちゃんは公立学校の養護学級に通いはじめたものの、 しばらくするとほとんど行かなくなってしまったという。
ヨッちゃん本人が行きたがらなかったわけではなく、 むしろ学校で習った歌やら踊りやらを父に披露して 楽しそうに見えたのだと父は言う。(←そのへんは父の主観にすぎないが)
行かなくなった主な原因は 母親である田中のおばちゃんが もともとヨッちゃんを人前に出したがらず 他人と交流を持たせることも嫌っていたところにあったようだ。
そして結局、田中のおじちゃんは 会社にヨッちゃんを連れてくるようになった。
そして会社は、 IDカードがなければ通行できないような ものものしい造りの自社ビルで、 ヨッちゃんはその中で一日中 うちの父をはじめとするオジさんたちと 過ごすようになったのだ。
養護学級の先生が何度か会社を訪れ、 田中のおじちゃんに 「ヨッちゃんは学校が楽しそうだった、だから是非とも通わせるようにしてほしい」 と話したようなのだが そのたびに田中のおじちゃんは黙って首を振ったという。
これを見たうちの父が 「会社に一日閉じ込めておくのは可哀想だ、同い年のほかの子供と遊ばせたほうが いいんじゃないか」と口出しし、 田中のおじちゃんは 「学校に行けば他人に傷つけられるだろう、行かせたくても行かせられない 親の気持ちも考えろ」 というようなことを言ったらしい。
父は余計な口出しを謝ったというが、結局、これをきっかけに 田中のおじちゃんとの仲は悪化。 そうなってくると仕事上でも意見の相違が相次ぎ、 父が結局別の会社に移ったことで2人の交際は途絶えた。
こうして父と田中のおじちゃんが絶縁してから さらに何年もの月日が流れ、バブルがはじけた頃。
私は父から、田中のおじちゃんの会社が倒産し、 おじちゃんもおばちゃんも、ヨッちゃんもどこかに行ってしまって 消息が知れないのだという話を聞いた。
父は 「ヨッちゃんは医者から、20歳までしか生きられないって言われてたんだ」 と、私の知らなかったことを語り、 飲んでいた水割りのグラスの中に ぽたりと涙を落としたのであった。
私は21歳になっていた。
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今でも時折、ヨッちゃんの夢を見ることがある。 気のいいおじさんだった田中のおじちゃんと ヨッちゃんは夢の中では元気に笑っている。
彼らがその後どうしているか、私は知らない。 父は知っているのかもしれないが その話をすることはない。
私は聞くことができずにいる。
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