in love with...
沙夜



 忘れたわけじゃない

Hくんから電話があった。


毎日奥さんが怒ったり落ち込んだりで、その度になだめているけど
『さすがに疲れてきた』と弱音を吐いていた。
離婚した方がいいのかなって考えることもあるらしい。
あと、金銭的なことでも苦労しているようだ。


「二人は似た者同志だと思うし、
 今まで出会った誰よりも愛し合って結婚したのに
 どうしてこういうことになっちゃうんだろうね」

「あまり好き過ぎるのも、いけないんだと思うよ。
 愛は憎しみに変わってしまうから。
 そこそこ好きくらいがいいんだよ」


そこそこ好き……。
奥さんのメールにも同じことが書いてあったっけ。



S子や私のことを良く思ってないということについても訊いてみた。


「僕、悪口なんて言ってないよ。
 きっとそういうことを言って、沙夜を僕から離したいんだよ。
 メールのことだって、僕には『沙夜さんの方から来た』って言ってたし」


え〜、わけわかんない。
離すも何も、くっついてないし!


一体誰の言ってることを信じればいいんだろう。
誰のことも100%信じ切れない。
まぁ、本人に『うん、君の悪口言ったよ』って言う人はいないだろうけど。


「もーさぁ、奥さんからメール来ても、返事しないでおくよ。
 私が絡むと余計ごちゃごちゃになってしまうみたいだから」

「うん、そうだね。無視しといて。
 携帯もチェックされちゃうしさー。
 こうして電話してるのに『してない』って嘘つくの嫌だから
 ほとぼりが冷めるまで、沙夜に連絡しないどこうかなって」

「あー、うんうん。分かったー」

「だからしばらく連絡しないと思うけど、忘れたわけじゃないから…。
 この電話の発信履歴も消すよ(笑)」



忘れたわけじゃない、か。


なぜかこの言葉にドキッとした。
私のことなんか忘れていいから、幸せになってよ。




2004年02月26日(木)



 ごたごた。後味の悪い結末。

結婚前から続くごたごたのループ。
原因は多分……奥さんの感情の揺れの激しさ。
きっとこれからも、別れる別れないを繰り返すんだろう。


私は奥さんへのメールで、Hくんに話してしまったことを書いて謝罪した。
もうこれ以上、Hくんにも奥さんにも秘密は持っていたくなかった。


そしたら奥さん。
私がHくんに話した翌日に自分も話した、というではないの。


「もう、私達夫婦は終わりです。
 私が沙夜さんより早く話していたら、状況は違っていたかもしれませんけど」


えっ、えっ!?


「私が主人に話した時、彼は初めて聞いたような顔をしていました。
 前日に沙夜さんから聞いて知っていたのに……。
 私はあの表情を忘れることが出来ないでしょう。
 
 結局私も彼も、嘘を付き、隠し事をし、騙し合っていたんです。
 主人は、嘘も方便というけれど、私はそういう大人のズルさが許せません。
 もうお互いに、信用出来ないと思います。

 とりあえず、別れることは考えていません。
 そこそこ好きくらいでちょうどいいのかな、って。
 夫婦といっても所詮他人。
 私は何を期待していたんでしょう。 

 これからは波風立てずにやっていこう。
 これが私の出した結論です。
 
 長いこと秘密に付き合わせてしまってすみませんでした」


奥さんは私を責めていた。
『どうして黙っていてくれなかったのですか!? せめてあと一日!』と。


そして深く失望していた。Hくんにも私にも。
多分自分自身にも。


もう、奥さんからメールは来ないだろう。
Hくんからも、来ないかもしれない。
もし来たとしても返事しない方がいいかな。
関わちゃいけないかな…って思う。










人は嘘をつく。
自分を守る為に。誰かを守る為に。



2004年02月20日(金)



 ごたごた。奥さん。

Hくんから電話があった2日後。
今度はHくんの奥さんからメールが来た。(2ヶ月振り)
もうメールは来ないかと思っていたのに、タイミング良過ぎ。


奥さん、『日々結婚を後悔している』という。
実際、離婚を切り出そうとしたらしい。
今までのメールでもそうだったけど、
Hくんの何がそれ程までに嫌なのか、私には分からなかった。


『きっと彼は、S子さんから電話があってうざい、
 みたいな風に言っていると思うけれど、
 実際はけっこう楽しそうにやりとりしてるんですよ。
 別に彼女から一方的にということもなく。

 それに沙夜さんのことだって、私にはあまり良く言わないんですよ?
 私、そういうの許せないんです』


は?
Hくんが奥さんに、私の悪口を言ってるってこと?


ショックだった。
腹が立つというより、哀しかった。
そんなこと私にいちいち言わなくたっていいのに。
奥さん、どういうつもりなんだろう?


結局、Hくんのそういう人間性(友達の悪口を言う事)がイヤという
ことらしいのだけど。
でもそれで、離婚?


Hくん擁護派の私を、自分の味方にする為なのかな、なんて思った。



2004年02月19日(木)



 ごたごた。Hくん。

一週間後、S子から電話があった。
その後も何度か。でも私は出なかった。


私がS子を避けていると分かると、留守電にメッセージを残していった。


「私の家の合鍵を持っていると思うんですけど。
 こちらに送って下さい!」


以前は彼女の家に頻繁に出入りしていたので、
私は彼女の家の合鍵を渡されていた。
この1年4ヶ月、返さなくては思いながらそのままでいた。
私の態度に対しての彼女の要求はもっともだ。


S子がこのメッセージを入れたのが、土曜日。
私が聞いたのが、日曜日。


(月曜日に送ろう)


しかし日曜日の夜に再度、電話&メッセージ。


「留守電のメッセージは聞いて頂けたんでしょうか!?
 もし未確認なら電話下さい!」


(確認しましたよ。明日送りますよ。ちょっと待っててよ)


と、心の中でつぶやく私。
S子は、相当イライラしているようだった。


月曜日、再々度電話。
この日は留守電をセットしてなかったので、メッセージはなし。


(今日、簡易書留で送ったから、明日には着くってば)


私は電話が鳴る度に、びくびくしていた。






夜、Hくんから4ヶ月ぶりの電話があった時、
私はまっ先に『S子のことだ』と思った。


「もしもしっ、どうかした?」

「あ、いやー、S子さんがさー、合鍵を返して欲しいとか言ってて」

「うんうん。合鍵ね、今日送ったから。明日には着くと思う」

「沙夜にちゃんと伝えたら、折り返し電話しろとか言われてさ」

「そっか、ごめんねー。Hくん、関係ないのに巻き込んじゃって」

「別に沙夜が悪いわけじゃないから、謝ることないけどさ」

「でも、Hくんにそんな電話するなんて……」

「最近ちょくちょくかかってくるよ。
 仕事中だろうが、家にいる時だろうが、おかまいなしで。
 かけてくるのはいいんだけど、話が長いんだよ〜」


(ふーん。かけてくるのはいいんだ)


Hくんが奥さんのことを冗談ぽく愚痴るので、私は思い切って
去年奥さんからメールが来たことを話した。


「へー、あそう?
 どんなこと言ってた?」

「逃げ出してしまいたい、とか。私はひとりぼっちだ、とか。
 かなり我慢してるみたいよ? 大丈夫なの?」

「波があるんだよね。昨日からまたプチ落ち込みしてる」


Hくんのメールをチェックしたり、別れると言ってみたり、
今も不安定らしい。


「私、内緒でメールしてる罪悪感があって。
 3〜4回やりとりしてたら落ち着いてきたみたいだったから、
 それでもうメールを止めたんだけど」

「……ま、別にいいけどね。内緒でメールしてたって」


Hくんは突き放すように言った。


「夫の言い分、妻の言い分とかあるだろうし。
 色々大変だろうけど、頑張って。……それじゃ」

「はい、じゃあ」


15分くらい話をして、切った。



2004年02月18日(水)



 ごたごた。S子。

S子を着信拒否にしてから、1年4ヶ月が過ぎた。
彼女のことを書いた過去の日記はもう削除してしまったけど、
3Pをしかけてきたり、Hくんとも仲良くメールをしたりして
私をやきもきさせた悪友。


我が儘だけど、サバサバしていて他人に全く干渉しない性格が好きで
かなり振り回されながらも、長い間友人関係を続けていた。


でもいつからか、口うるさい母親のようにあれこれ言うようになった。
干渉したり、指図したり、否定したりするようになり
それがちょうどHくんのことで落ち込んでいた時期と重なって、
耐え切れなかった私は、逃げるように彼女との付き合いを断った。


携帯での着信拒否に気が付いたS子は、その理由を問うメールを
送ってきたが私は返事を出さなかった。


それからは、メールも、自宅への電話も無いまま月日が流れた。




去年のいつ頃だったか、Hくんが携帯メールで
「最近、S子さんからメールが来るよ」と言ってきた。
もうどうでもよかったし、拘わりたく無かったので
「ふーん」と気の無い返事をした。


それが今年になってからは
「S子さんから、よく電話がかかってくるよ」になった。


Hくん、電話番号を教えたんだ……。
S子、私の悪口を言ってるかもしれないな、なんてことを考えた。


「あまり相手にしない方がいいよ」

「そのつもりだよ。
 家に遊びに来い、いつくる?とか結構うるさいよ」


Hくんは、うるさいと言いつつ、それほど困った様子でもなかった。




先日私がインフルエンザで寝込んでいる時、自宅の電話が鳴った。
ディスプレイには、S子の名前。
躊躇しながらも受話器を取った。


「もしもし!? インフルエンザ? あ、そう。
 いつから? 医者は行ったの!? 薬は? 注射は?
 じゃ治ったら電話して! わかった?」

「あのね、そんな言い方されて……
 私が電話しなくちゃいけない理由ってあるの?」

「1年以上話してないんだよ。あんた話すことないわけ?
 こっちは色々と事情が変わったの!
 話したいことがたんまりあんの!!」

「……。」

「いい? 電話してよ?」

「……うん」



相変わらずな高飛車ぶり。
電話に出たことを激しく後悔した。


うん、と返事をしたものの、電話する気もなかったし、
再びかかってきても、もう出たくないと思った。



2004年02月17日(火)



 チョコだけじゃなくウイルスもあげちゃった!?

彼が風邪をひいてしまった。
もしかして私のインフルエンザウイルスをあげちゃった!?
まだ少し咳が残っていたんだけど、
そんなことおかまいなしにキスしてたし。


今の所、熱は高くないみたい。
普通の風邪かな。だといいけど。


“乾燥”が原因かもしれない。
ホテルの室内ってすごく乾燥してるから、
肌がカサカサになってしまうし、喉も乾く。
今回は特に乾燥していたのか、私の喉もすごく痛くなった。
これからは何か対策を取らなくは。


彼の風邪が一日も早く治りますように。




2004年02月16日(月)



 すること、ない?

そろそろ別れの時間。


一緒に来る?

そうね。着いて行こっかな〜。
ずっと(あなたの所に)いてもいい?


でも(ずっといても)することないよ。


・・・・・・


すること、ない?
そっか。
ただいるだけでいいとか言っても、やっぱりそういうのはダメかぁ。
しょぼーーーん。


いや、きっと彼は深い意味もなく言ったんだろう。
分かっていても、頭の中ではマイナス思考ぐるぐる状態。


あーあ。
最後の最後に落ち込み。
それも、こんな些細なことで。


いじける私に、フォローする彼。


い、いや、別にwowowとかスカパーとか観てればいいし。
帰った時に「おかえり〜」って居てくれるだけでも嬉しいけど。



……wowowとスカパー。




そういえば、こんなことも。
ホテルでブライダルフェアやってたりすると、彼はいつも
「行こうか」とか「行かなくちゃ」って言う。


冗談って分かっているから、いつもは笑ってごまかしたり
「行かなーい」とかって返事してる。


でも今回は、
「あら、ご予定がお有りなの? いつ?」と変化球を投げてみた。


そしたら。


……。


球が返ってこなーーーい。
おーい。


かといって、
「3ヶ月後」とか「3年後には」とか具体的に言われても、困るわけで。
「(僕の家に)ずっといて」とマジで言われても、無理なわけで。


じゃ、私はいったい、彼のどんな言葉を期待してるんだろう。


無理なことだけど実現したらいいなと、心のどこかで思っていて
だから冗談めいた言葉にも、時々過剰に反応してしまうのかな。


ふー。
ネットリしないで、サラッといかなくては。サラッと。



2004年02月15日(日)



 「もしかしてパティシエ?」「そ、パティシエ(笑)」

バレンタイン・デート。
1時に彼と待ち合わせた。
ホテルの部屋で、私が作ってきたお弁当を広げる。


わー、すごいねー。大変だったでしょ?

うん。(すごくないけど)2時間半もかかっちゃった。

こんなところでお弁当食べる人っていないよねえ。

んー、そうかな〜。(そうだよね)


味は、まあまあ。
でも彼はオイシイオイシイって言ってキレイに食べてくれた。


また作ってねー。

うん。じゃ次はお花見の時にね。





夕方からお出掛けして、ウインドーショッピング。
誕生日が近い彼に靴をプレゼント。


そして夕食の後、部屋に戻って本日のメインイベント!
手作りチョコを渡す。
2種類の生チョコと、小さく焼いたガトーショコラ。(あとパンツも!)
彼は、ロゼのスパークリングワインを用意してくれてた。


彼がガトーショコラをパクッと一口食べる。
お弁当と違って、チョコの方はちょっと自信ありなのよね。


シーン。


(あれ、あれあれあれあれ? 反応ナシ?)


……旨いっ!!

ホントッ?

うん!旨いっ!!


(良かった〜〜〜)


今まで彼のこんないいリアクション、見たこと無かったかも。


すごい。売れるよ、これ。
やー、旨過ぎ。
もったいなくて食べられないよ〜。
え、もしかしてパティシエ?



大絶賛。
生チョコ食べた時は
「わー、これ、生チョコみたーい」ってマジボケしてたけど。


でも、「こんな美味しいチョコ、初めて食べた」とかって言ってくれた。
嬉しかったなぁ。
頑張って作って良かった。




TVでは“Love Letter”
多分観るのは3度目。
ミポリンが『お元気ですかぁ〜』と叫ぶシーンで、私が泣いていたこと
彼は気付いていただろうか。



2004年02月14日(土)



 自分の喜び。相手の喜び。猫と犬。恋と愛。

バレンタインチョコ、出来た〜〜
今年は手作りチョコね! なーんて宣言したのはいいけど、
失敗する夢を見ちゃったりした。
(結構プレッシャーだったらしい)

はー、やれやれ。


+++


犬が飼い主の言うことを聞くのは、
褒めてもらえるのが嬉しいからだろうけど、猫は違う。
何か芸をしたとしても、自分が楽しいからやってる。
飼い主の為じゃなく。


今回私は、急に思い立ってチョコ作りしたけど、
これって“猫の芸”みたいなものじゃなかろうか。


『どうしたら彼が喜んでくれるだろう?
 彼に出来なくて私に出来るコトって料理くらいだし、
 作ったら喜んでくれるかも…』


そういう気持ちが発端。
だけど根底には
『楽しそうだからやってみよー』的、気紛れもある。



一方の彼は、私の為に色んなことをしてくれて、そして言う。
「楽しかった? 良かった〜」
「美味しい? 良かったね〜」
「沙夜ちゃんが喜んでくれたなら、僕も嬉しいよ」
…って。


うーん、これってやっぱ犬的発言だよね?


+++


自分の淋しさにこらえきれず泣くのが恋
相手の淋しさを想って泣くのが愛

自分が幸せになりたいと思うのが恋
相手の幸せを思うのが愛

何かを得ようとするのが恋
何かを与えようとするのが愛

自分の喜びが嬉しいのが恋
相手の喜びが嬉しいのが愛




私は、恋する猫?


+++


後は当日のお弁当。
なんかないかなーと「バレンタイン弁当」で検索してみたら、
私の前回の日記がヒットした(笑)




2004年02月13日(金)



 手作りチョコ

今年のバレンタインは、手作りしようと思う。
手作りチョコなんて人生初の試み。


数日前までは

「みんな、手作りするとか言ったって、
 溶かして固めただけじゃ手作りって言えないよね〜
 ケーキを焼くとかだったらまだね〜」
「市販のチョコの方が美味しいしね〜」

なんて言ってた。


でも、“バレンタイン弁当”を作ってあげるねという話から
どうせならチョコも作ってみようかな、と。
たまには、らしくないことをしてみようかな、と。


どんな風にラッピングしようかな?とか、あれこれ考えるが楽しい。
今年だけで懲りてしまうような気がするけれど。




2004年02月08日(日)



 会いたい

会いたい。
彼のぬくもりが恋しい。


でもまだデートから一週間しか経ってない。


この一年と二ヶ月、
平均すると三週間に一度くらいのペースで会っている。
時には出張を利用して会いに来てくれることもある。
最長会えなかった時でも五週間。


「沙夜と少しでも一緒にいられるよう頑張るよ」
昨年のお正月にくれたメールにはそう書いてあった。
そして本当にそれを実行してくれている。


沙夜に早く会いたいよ。


彼の言葉にハッとした。


(でもまだ一週間しか経ってないよ?)
そう心の中でつぶやきながら


うん。


とだけ返事した。


うん。私も。
私も早く会いたい。



2004年02月01日(日)
初日 最新 目次 MAIL

※my登録を「告知しない」に変更しました※