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2010年10月01日(金) |
【音楽】絶対お薦め。ピアニスト金子三勇士氏のデビューCD。 |
◆若き、圧倒的な才能。
金子三勇士氏は、1989年9月22日生まれだそうですから、つい先日21歳になったばかりで、
まだ東京音楽大学ピアノ演奏家コースの学生さんです。
しかし、金子氏のピアノ演奏は、既に一流のプロ・コンサート・ピアニストの水準です。
彼のテクニックは完璧ですが、繊細かつ大胆な音楽性を併せ持っています。
天性のピアニスト、だと思います。
プロフィールはオフィシャルサイト<をご覧下さい。
◆私は昨年11月に、生で聴いたことがあります。
これば、日記・ブログに書きましたが、昨年11月ドイツの超一流オーケストラ、
バイエルン放送響が来日したのですが、以前から東京音大とバイエルン放送響は親交(?)があり、
バイエルンのメンバーが、来日公演の合間に、東京音大に来て、
メンバー(プレイヤー)による、室内楽の指導があり、また東京音大オケを
現在のバイエルン放送響の指揮者、マリス・ヤンソンス氏が指導する(ベルリーズの「幻想」の終楽章)
「公開リハーサル」があり、最後にはバイエルン放送響のメンバーと東京音大の学生による、
室内楽の演奏がありました。日記・ブログにも書きました。
2009年11月15日(日) マリス・ヤンソンスのリハーサルを見学する幸運に恵まれました。 (ココログ)
この時、東京音大の学生とバイエルン放送響のメンバーとの室内楽がありました。↓
ご覧の通り、金子三勇士氏はドヴォルザークのピアノ五重奏曲でバイエルン超ベテランの音楽家と
合奏したのです。この弦楽四重奏は、第1ヴィオリンがバイエルン放送響のコンサートマスター。
第2ヴァイオリンの水嶋愛子さんは、1976年にこのオーケストラに入団したそうですから、
34年も弾いている超ベテラン。ヴィオラもオーケストラでは首席奏者。という面子です。
金子氏はこんな「大先生」たちと弾いた訳です。演奏を聴いてつくづく感心したのですが、
この時、金子三勇士氏のピアノは、大ベテランたちと、音楽的な表現力、存在感において、
完全に対等であったということです。されにピアノの学生は(少なくとも日本で習った人は)、
合奏をした経験が乏しい。ピアノってのは(それが便利なんですけど)、すごく大雑把に言うと、
一人で「合奏」出来てしまう。右手がメロディーを弾き、左手が伴奏をする。だから、
アンサンブルということに不慣れな人が多いですが、若干20歳の金子氏は、余裕で弦楽器奏者を
聴いて、見ながら(合奏は音だけではなく、目で例えば弦楽器奏者の弓の動きをみて)合わせていました。
自分が出過ぎては(音が弦楽器よりも聞こえては)まずいところは抑えるし、ピアノが主体で、
弦楽四重奏がその伴奏をするような所では、ちゃんと弾き方を変えて、ピアノが聴衆に良く聞こえるように
弾く。大したものだ、と思いました。
◆協奏曲の伴奏をした、オーケストラの弦楽器奏者が絶賛しています。
金子三勇士氏は、3週間前に、群馬交響楽団のソリストに招かれ、ショパンのピアノ協奏曲第1番を
弾きました。このとき全く偶然ですが、ヴィオラ奏者のお一人が私のブログの読者の方でした。
数多くのソリストを伴奏した、オーケストラ・プレイヤーこそ、ソリストにとっては最も「怖い」聴き手でも
有るわけですね。聴き手自身プロの音楽家なのですから。
相互リンクを貼らせて頂いているふっこ様ですが、この方がコンサートの翌日、
ご自身の日記で、金子さんを絶賛しておられました。新人でこれほど褒められる人は珍しいと思います。
◆少しだけ聴いて下さい。
金子三勇士氏のデビューCD、Miyuji plays Liszt は、今日(1日)発売でしたが、予約していた人が多かったようです。
Amazonでは既に「お取り寄せ」になっていますが、これはお薦めします。
今まで私はリストという作曲家にさほど関心が無かったのですが、このCDは、非常に夢中で全曲を一挙に
聴きました。それこそ、秀でた演奏家のなせる業です。今まで(私が鈍かったところが大きいのですが)気が付かなかった
或る作曲家や作品の魅力を、最大限に引き出しているのです。
少しだけサワリを。
ピアノ・ソナタ ロ短調より。
Liszt Piano Sonata in B minor excerpt
ソナタ全体の演奏時間は30分を超えますが、演奏が素晴らしいので長いと感じません。
次は、かの有名な、
ハンガリー狂詩曲第2番より。
Hungarian Rhapsody No.2 excerpt.
かなり強い音が出ていますが、力に頼って大きな音を出すのではなくて、
楽器(ピアノ)が鳴りきっている。そういう弾き方です。どのようなフォルティッシモであっても、
決して音は濁らず美しく保たれ、タッチも絶対に荒れません。これは凄いことです。
それから、曲全体を見据えた上での「構成力」が素晴らしいのです。この曲は山がいくつもあり、
最大のクライマックスがあります。全体像を頭に描いた上で、音量(の変化)やテンポ(の変化)を
「設計」しないと、演奏効果が減衰してしまいます。極端に言えばずっと大きな音で同じようなテンポで
弾いたら(仮定上の話で実際にそんなピアニストはいませんが)、クライマックスがクライマックスでは
無くなってしまいます。金子氏は十二分に心得て弾いておられます。全曲を聴くと、「血湧き肉躍り」、
興奮で身がよじれるほどです。
最後。これだけ、ちょっとご容赦頂いて、一曲全体を。
ラ・カンパネラ
La Campanella
お聴きのとおりで、私が余計な言葉を書き足す必要はない、と思います。これこそ「ラ・カンパネラ」です。
最初に書き忘れましたけれど、金子三勇士氏は、母君がハンガリー人(父上は日本人)であることも
あって、若干6歳からハンガリーに留学し、祖母上のお宅に住み、ハンガリーの小学校に通い、
飛び級で11歳にして国立リスト音楽院大学ピアノ科に入学。2006年(16歳)ピアノ科全課程修了とともに日本に帰国。
東京音楽大学付属高等学校2年に編入したのです。帰国直後は日本語はたどたどしかったそうですが、現在21歳になったばかり
ですが、驚くほど美しい正確な日本語を話します(先日NHK FMに出演し、アナウンサーのインタビューに答えていたのです)。
勿論、ハンガリー語は小学生から10年間生活していたので、ネイティブ同様です。
言語のことはさておき、彼がデビューCDを、オール・リスト(Liszt)プログラムにしたのは、
そのようなバックグラウンドが大きく影響しているのですね。
とにかく類い希なる才能です。
是非、お聴きになることをおすすめします。10月30日にはトッパンホールで、
CDリリース記念リサイタルがあります。幸いまだチケットに余裕あり、
と、2010年10月02日(土)09時21分時点では表示されています。
私は既に入手済です。勿論、それぞれのご都合がおありでしょうが、僭越な物言いですけれど、
私が、自分のブログでコンサート(リサイタルですけど)をお薦めするのは8年半、日記を書いていて、
初めてではないかと思います。素晴らしい才能を目の当たりにするということは、非常な喜びです。
それでは、皆様良い週末をお過ごし下さい。
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