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JIROの独断的日記
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2009年03月13日(金) 【音楽】1845年3月13日、メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲初演。ソネンバーグというひじょーに個性的なソリスト。

◆メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲は永遠の光を放っています。

メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲は、古今、あまた存在するヴァイオリン協奏曲の中でも、最高傑作の一つです。

僅か一小節半の前奏の後、ソロ・ヴァイオリンが奏でるメロディーは、ヴァイオリン協奏曲のみならず、

西洋音楽2,000年の歴史全体においても、最も美しい光を放ち、それは1845年3月13日の初演から、

164年を経ても、全く色褪せない。奇跡的な美しさだと思います。

あらゆるヴァイオリニストが、今までに何万回演奏したかわかりません。

私も何百回聴いたか分からない。しかし、やはり美しい。こんなことが世の中にある、

ということ自体、奇跡です。


◆ナージャ・ソレルノ・ソネンバーグという変わり者(上手いけどね)の演奏を薦めます。

ナージャ・ソレルノ・ソネンバーグ。知っている人は知っている。私と同い年らしい。

1960年生まれのアメリカのヴァイオリニストで聴いて頂きますが、この人とんでもない

「じゃじゃ馬」だったようです。


ヴァイオリン教師の神様のような伝説的存在、カーティス音楽院の故・イワン・ガラミアンに習ったのですが、

全然、言うことをきかなかった。ガラミアンはおっかない先生で「イワン雷帝」というニックネームで呼ばれる

厳しい人でした。とにかく基礎から徹底的に絞る。おかげでパールマンとかものすごく優秀な弟子が才能を伸ばしました。

ガラミアンの

Cry now. Play later.(今、泣いて、後で弾け)

という有名な言葉があります。今はとにかくテクニックを身につけろ。上手くなれるだけ、なれ。

音楽的にどうだとか、そう言うのは後で良い。と、まあ乱暴に言うと、そのような意味です。

以前、日記に書いたので、お読み下さい。

2004年01月07日(水) Cry now. Play later."―今、泣いて、後で弾け。― イワン・ガラミアン=ヴァイオリン教師


さて、今日お聴き頂くメンデルスゾーンのソリスト、ナージャ・ソレルノ・ソネンバーグという人。

前述のとおり、並の変わり者ではないようです。

イワン・ガラミアンの生徒は大抵、先生に逆らうことなど恐ろしくて出来ませんが、

ナージャは、言っちゃうんですね。ガラミアンがナージャの弓の持ち方がなっていない、と指導すると、
「どうして?他の子にはそれでいいかもしれないけど、私は嫌だわ」

一時が万事で、とうとう、ガラミアンは匙を投げたそうです。


その後、我流で練習していたらしいのですが、14歳の時に、やはりヴァイオリン教師の神様みたいな、

ジュリアード音楽院のドロシー・ディレイという先生の門下生となるのですが、ディレイ先生も最初はひっくり返ったそうです。

ブルッフという作曲家のヴァイオリン協奏曲の一部を弾いて見せたら、ディレイ先生、ナージャの完全に我流のボーイング、

楽器の構え方を見て、
「あんな弾き方でどうしてこんな演奏ができるのか、全く信じられない」

唖然としたらしい。それでも弟子にしたのは、音楽的な才能の片鱗をナージャに見出したのでしょう。

しかしながら、ナージャはディレイ先生のレッスンでも大変だったそうで・・・。

ディレイ先生、基礎からやり直させようとしたら、ナージャは、
私には前のやり方が合っているし、第一、ちゃんと弾けています。教えなきゃいけないことだけ教えて下さい!

と反論したそうな。相当なもんだね。普通破門だけど、ドロシー・ディレイ先生、辛抱強く説得したんです。

すると、ナージャ・ソレルノ・ソネンバーグはもともとバカじゃないから、先生の言うことの合理性が次第に

理解出来て、教えに従うようになったと。

それで落ちつくかと思ったら、また大変でした。1981年にあるコンクールに出てナージャは優勝するのですが、

その前、何がどう気に入らないのか、何と7ヶ月もの間、レッスンに楽器を持たずに現れては、ディレイ先生と

話をするだけ、という「レッスン」が続いたそうな。ディレイ先生、半年は何とか我慢したが、ついにキレて、

7ヶ月目、
来週楽器を持ってこなかったら、破門にする。更にジュリアードも退学にする。

と、激怒して宣言したのです。それでやっとナージャ・ソレルノ・ソネンバーグは目が覚めて、

コンクールまで1日13時間練習したそうです。で二ヶ月でコンクールに優勝したのだから、やはり才能あるんでしょうね。

芸術家に変わり者が多いのは、世間にも知られていることですが、最近の音楽家でこれほど、異端児は珍しい。

演奏にも現れてます。


◆ナージャ・ソレルノ・ソネンバーグ:メンデルスゾーン作曲、ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64 第一楽章。他。

それでは、この変わり者の演奏をお聴き頂きます。CDはまだ売っています。

メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 です。

ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64 第一楽章です。

なお、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲は楽章の切れ目なく演奏されるので、第一楽章だけ載せると、

何だか中途半端な終わり方になりますが、これはどうしようもないので、ご辛抱下さい。



メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64 第一楽章



これほど、露骨に「浪花節」調のメンコンは、最近珍しい。好き嫌いが分かれるでしょうが、私は面白いと思います。

もう一曲。メンデルスゾーンではないのですが、サン=サーンス「序奏とロンド・カプリチオーソ」。



「序奏とロンド・カプリチオーソ」



これも、かなり彼女独特の世界です。最近の演奏家は、大抵もっとあっさり弾くのが普通ですが、ナージャは

他人がどうあろうと、全然関係ないですね。思い切り粘っこい弾き方です。私はこういうの嫌いではありませんが、

前述のとおり、皆さん、好き嫌いがかなり分かれると思いますが、

それで、良いんです。解釈の問題です。この人、少なくとも下手ではない。上手いです。

絶対的な技術が不足している、ピアニストのなんとか・ヘミングさんとは、好き嫌いという次元が違います。


余談ですが、伴奏はジェラード・シュウォーツ指揮、ニューヨーク室内管弦楽団ですが、

ジェラード・シュウォーツは、トランペット奏者で、指揮に転向した人です。

シュウォーツ氏のトランペットは以前取りあげたので、興味のある方はお聴き下さい。

非常に卓越したトランペット奏者の演奏です。お薦めCDあり。ココログはこちら)。

それでは、皆様、良い週末をお過ごし下さい。

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