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2006年10月18日(水) |
「小沢・安倍、党首討論」私的速記録(一部)及び所感。 |
◆「小沢・安倍、党首討論」私的速記録(一部)
【小沢民主党代表】
北朝鮮の核実験は世界の平和に対する希求を踏みにじるものでありますから、このような行為に対して毅然とした対応をすることに対しては、私も異論はありません。
そういう中で、国連決議が為されました。国によってどのような措置を講ずるか、ということは、
それぞれの国によって差異があるようですけれども、アメリカは船舶の検査もやりたいという風に考えていると、報道を通じて聴いております。
そして、日本も、手伝って欲しい、という意向を持っている、ときいております。そういうアメリカの要請やら、
勿論日本の拉致問題等々のこともあり、核実験問題ですから、それは出来るだけのことをするのは良いんですけれども、今の政府の状況をみておりますとね。
やれ、周辺事態法の認定がどうだとか、そうしないと船舶の検査が云々とか、ま、そういうような議論が為されていると、報道からきいております。
しかし、このような、ま、総理もまだそこまでは考えているとかいないとか、ご答弁があったようですけれども、
そういう政府部内の「場渡り」な、その場しのぎのやり方が、余計日本政府の対応に混乱を来しているのではないかという気がしております。
総理は、-この際、お訊きしたいのですが、-「周辺事態法」が想定している事態、或は対応する行為と、
国連つまり国際社会の合意の下になされた決議が今回ありましたが、制裁行為というような、その両者は基本的にどういう性格を持ったものだとお考えですか?
【安倍首相】
周辺事態安全確保においては、それがどういう事態かということについていえば、
「そのまま放置すれば、わが国への武力行使につながる怖れのある事態」ということになっており、
それがどういう事態かということについては、さらに政府は六つの類型を示していると思います。
周辺事態の安全確保については日米の同盟というわが国の基本的な安全保障体制の基盤の上に立って、
周辺事態にどのように対処できるかを定めたものであるという風に認識しております。
と同時に、現在国際社会において、この北朝鮮の挑戦的な行動に対して、国連決議を行い、厳しい措置を伴う、
強制力のある決議が為されたわけでありまして、この決議を実効たらしめるために、現在国際社会の中で協力をしていく、と。
日本も何が出来るかを関係国と連携・協議しながら、現在検討をしている訳でございます。
その中にありまして、当然、関係各国が対応していくわけですが、
その中でも特に、日米同盟の関係と国際社会の取組を切り分けると言うことではなくて、
まさに、日米同盟を国際社会の中での協力にさらにいかしてゆく、と言うことも必要ではないか、とわたくしは思います。
今、小沢さんが質問された、「どのように性格が違うのか」ということですが、
国際社会の一致した取組の中で、この問題をとにかく、北朝鮮に対してこのまま国際社会の懸念に応えずに、
更に挑発的な、脅威を与える行動を取っていくのであれば、事態は北朝鮮にとってもっともっと悪い方向に向って行く、
と言うことを理解させる必要があるわけでありまして、そこで、まあ、今、国際社会で協力をしているわけでございます。
その中で、日本は、当然、同盟国である米国と緊密に連携を取りながら、国際社会でも対応するし、
また、日米でも対応していくことも求められているのではないか、と思っております。
【小沢代表】
今の総理のお話も、要するに日米同盟、安保条約、これは「日本の」安全保障に関わる取り決めですよね。
そして、「周辺事態法」というのも、「そのまま放置すれば武力攻撃の怖れがあるようなこと」など、日本の平和と安全に重要な影響を持つ事態、と、第1条で説明しています。
それは要するに「日本の安全」、日本の「武力攻撃の怖れがある」という、謂わば「有事」の事態を想定した法律です。
そして、国連で決議が行われたのは、日本の有事を前提としているわけでは無いのです。「国際社会の平和を乱す行為」に対して、
国際社会が制裁を加えようと、いうことを決めたわけです。
今、私が申し上げているのは、日本の有事に関する所謂、直接攻撃を受けるかも知れない、という事態を想定した法律を国際社会の、
所謂国連憲章第7章の41条、この「一般的な制裁行為」に適用しようとするのは、それは、無理なんじゃないですか、ということを言っているんです。
じゃあ、「それではどうすればいいんだ?」という人がいます。
どうすればいいかは、簡単明瞭なことでありまして、国際社会の共同作業に、日本がきちんと参加する」という政府の原則を作れば、それで良いわけであります。
(今は)それが全く無いから、結局「アメリカから要求された。どうしよう。それじゃ、『周辺事態法』でも援用するか」という話になってしまうのだと思うのです。
ですから、あくまで日米同盟は勿論大事ですし、これがあって、日本の安全保障がまっとうされるということは、私もそう、思っております。
しかし、「日米」だけで世界全体の平和を守る話ではありません。安保条約も、日本の、大きめに地域を解釈しても極東の平和を守るのが限界であります。
これは、ずっと長年、政府が色々言ってきたことでありますが、論理的にも、日本の安全に直接関わることの為の日米安全保障条約である、と。
日本とは全く関係のない地球の裏側までアメリカについて行く、という条約ではない、と思います。
世界の色々な紛争については、国連の合意の下で加盟国が、それぞれの事情に応じて、出来るだけ参加して、
そして平和を守ってゆこうと言うのが私は日本国憲法の論理であろうと考えておりますし、国連憲章も、個別的自衛権・集団的自衛権は自然権として認める、と。
しかし、地球全体としては、皆で合意した上で、平和に対する挑戦、或は平和を乱す行為を鎮圧する、という論理構成になっているわけであります。
安保条約自体もそうです。国連憲章の枠内です。
もし日本が攻撃されたとき、国連で決定を下すまでタイムラグがあるから、国連がくるまでは日米が共同作業で(第3国からの攻撃に対して)反撃すると。
しかし、国連の決定があったときには、日米の共同作業は終了する、ということになっています。
ですから、国際社会全体の平和を守る。紛争を解決する。そういうときに日本は国際社会でどういう役割を果たしていくのか。
そして、勿論日本国憲法に抵触することのない、きちっとした枠内でそれに参加してゆく、という原則をきちんと立てることが、大事だと思うのです。
ですから、何かあったから、アメリカから何か言われたから、当面はとにかく適当に何かやろうという考え方は、
私はその場渡り的なやり方は、結局、国を誤った方向へ導くことになるとおもいます。
ですから、安倍総理も、日本人の独自性とか言うことを強調されるわけですから、国益に重大な利害を及ぼす今度のような事態に関しては、
はっきりとした原則を分かりやすく国民に示していただきたいと思って、質問させていただいたのです。(後略)
【為参考】
この後を聴きたいひとは、衆議院インターネット審議中継にアクセスし、当然ながら、「日本語」をクリック。
画面ひだり側にカレンダーが現れるから、10月18日をクリック。
国家基本政策委員会合同審査会(党首討論)をクリック。小沢一郎をクリック。
(最初に利用するときは、Window Media Playerにするか、RealPlayerにするか、選択する画面が出る)
◆コメント:正式の会議録は掲載されるまで時間がかかる。
安倍首相と小沢一郎民主党代表の党首討論の一部を衆議院インターネット審議中継から、文字に起こした。
音声情報とと文字情報には、当然、一長一短が当然ある。
音声は、衆議院テレビ(審議中継)を聴くとお分かりになるとおもうが、何しろ映像と音声なので、
質疑応答のときの発言者の声の調子や顔つきで、これは、本気だろう、とか、
これは痛いところを突かれて狼狽しているな、という「雰囲気」が一目瞭然である。
但し、音声だと、速すぎて聴き取れなかったり、発言者は完結したセンテンスで話すことはむしろ少ないので、
ちょっと聴いただけでは、何を言って言いたいのか、分かりづらいことがしばしば、ある。
文字にすると、何度も、自分が理解可能な速度で、読み返せるので、理解しやすい(尤も、小泉前首相のように、文字にしても意味不明な人もいる)。
殆ど全ての会議録(議事録。本会議や各委員会文字情報)を衆議院・参議院ともにそのサイトで読むことができる。
ただし、翌日すぐにではなく、一週間かかることも珍しくない。それで、私が自分で、一部ではあるが、やってみたのである。
明日の新聞には「党首討論」の「要旨」は載るだろうが、
要旨だと「雰囲気」が一層分かりにくくなるので、私はできるだけ、音声をそのまま文字にした。
◆コメント:小沢代表は正しい事を言っている。
本当は冒頭の議事録をもう少し続けて書くべきなのだ。この質問の後、安倍首相は、また、興奮気味になり、
「私は、地球の反対側まで自衛隊を派遣するなどとは一言も言っていない」
とか、
「自国民を守るために、あらゆる手段(法律)を動員するのが政府の責任だ」
と、答弁している。
構想力の範囲が違うのである。小沢代表が言っているのは、北朝鮮への対応のみならず、一般論から入っている。
そして、北朝鮮に対する国連決議が成立したことをいいことに、これは武力行使を認めていないが、
アメリカはそんなことを無視して、武力を行使するかも知れない。
日本政府は、いくら北朝鮮が危ないといったって、ずるずるとアメリカと一緒になって、
憲法違反の武力行使、集団的自衛権の行使をすることがないように、気をつけなさいよ、というのが、
小沢代表が言いたかったことであるように、思われる。ポリシーをはっきりさせ、国民に説明せよ、と。
ここに、日米安全保障条約全文が載っている。
日米安全保障条約 第1条
締約国は、国際連合憲章に定めるところに従い、それぞれが関係することのある国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決し、並びにそれぞれの国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎むことを約束する。
締約国は、他の平和愛好国と協同して、国際の平和及び安全を維持する国際連合の任務が一層効果的に逐行されるように国際連合を強化することに努力する。
第1条は、当然なのだが、国連憲章が日米安全保障条約の上位規範であることを、明記している。
2003年、あの、ゴリラのようなアーミテージ前・国務副長官が来日した際に、「日米安保条約は国連憲章より上だ」と発言したことがある。
2003年12月23日に日経のインタビューに対してはっきりそう述べている。
私はこれを読んであまりにもあきれたので、リンク先の記事を書いたのだ。
国連憲章は、原則として武力行使を違法としている。従って、国連憲章が定める例外の場合を除いては、日米安全保障条約を理由に武力を行使してはいけないのである。
例外となる二つの場合に関しては、13日の記事で説明した。
◆周辺事態法は集団的自衛権の行使を可能にするので問題だと言われているのだ。
アメリカは国連の制裁措置とは別に独自の制裁として北朝鮮の船舶の臨検をしよう、日本も手伝え、と言っている。
北朝鮮の船に乗り込む為には、当然相当強引にやらなければならず、銃撃戦になる可能性も高い。
周辺事態法を適用すると、日本は、そういうアメリカを助けなければならず、それは国連憲章に違反する。
ずるずると武力行使が大好きなアメリカの言う通りにしたら、どんどんエスカレートしてゆくぞ、
と小沢氏は警鐘をならしているのではないか。
日米安全保障条約 第3条
締約国は、個別的及び相互に協力して、継続的かつ効果的な自助及び相互援助により、武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を、憲法上の規定に従うことを条件として、維持し発展させる。
周辺事態法は本当は、後方支援を認めるのであるから、違憲であるし、日米安保条約も憲法の範囲内で、と明記しているのだ。
◆「国連が決定を下したら、共同作業を止めなければならない」とは何のことか。
小沢代表も限られた時間で質疑を行っているので、端折り気味である。
日米安全保障条約 第五条
各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する。
前記の武力攻撃及びその結果として執ったすべての措置は、国際連合憲章第五十一条の規定に従って直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければならない。その措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全を回復し及び維持するために必要な措置を執ったときは、終止しなければならない。
日本が他国されたら、自衛権を行使する。アメリカは集団的自衛権を行使できるから、日本を助ける(ことになっている)。
しかし、国連安全保障理事会が、国連憲章の規定どおり、日本を助けるべく、多国籍軍を送ってくれるなど、何らかの措置をとったときには、
日本もアメリカもただちに、自衛の為の武力行使を止めることにする。という意味である。
◆地球の反対側まで、云々(小沢代表)とは何のことか。総括。
小沢代表が、
日米同盟は勿論大事ですし、これがあって、日本の安全保障がまっとうされるということは、私もそう、思っております。
しかし、「日米」だけで世界全体の平和を守る話ではありません。安保条約も、日本の、大きめに地域を解釈しても極東の平和を守るのが限界であります。
これは、ずっと長年、政府が色々言ってきたことでありますが、論理的にも、日本の安全に直接関わることの為の日米安全保障条約である、と。
日本とは全く関係のない地球の裏側までアメリカについて行く、という条約ではない、と思います。
と、発言して、この後、安倍首相は「私は地球の裏側までなどと言っておりません」と興奮気味に答弁しているのである。
確かに安倍首相は、北朝鮮がらみでそのようなことを言ってはいないが、
官房長官時代、小泉首相に迎合して、「日本がイラク戦争を支持したのは正しい」と何度も発言している。
地球の裏側まで行かないが、自衛隊をイラクに派遣して、アメリカの手助けをしているのは、地球の裏側まで行かないが、
このときの小泉首相の論理は同盟国たるアメリカを手伝うのは当然だ、というものだった。言うまでもなく、イラクは極東ではない。
小沢代表はそもそも、日米安保条約が想定しているのは日本の有事、
百歩譲っても極東における有事を想定したものであるから、安保条約を根拠に、
自衛隊を世界各国へ派遣するべきではない、と言っているのではないか。
何故、北朝鮮だけを話題にしないで、このような一般論を展開するのかといえば、私の想像だが、
安倍首相はかねて、憲法改正を主張し集団的自衛権の行使と認めるべきだとか、先制攻撃もあり得る、という思想を完全に公にしている。
小沢氏は、「そういうことを軽々しく言わないで、今の憲法で何ができるか考えなさいよ」、と諭したいのではないかと感じたのである。が、
これは、あくまで私の主観である。
本当は、このような記事を書く前に、小沢氏の著書も読んでおくべきなのだが、少々忙しく、読めない。
小沢氏の思想を推定した上でのコメントなので、根拠に乏しいが、党首討論を聴いた所感は以上である。
ということで、今夜はご容赦のほど。
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