JIROの独断的日記
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2003年08月14日(木) |
「英首相府がイラクの脅威誇張 博士取材のテープで判明」 大変な事になりました。 |
◆記事: 【ロンドン14日共同】英国防省の大量破壊兵器専門家ケリー博士がBBCのワッツ科学担当記者の取材に対し、首相府がイラクの大量破壊兵器に関する報告書の作成に当たってイラクの脅威を誇張させたとの見方を語っていたことが13日、博士の自殺に関する独立調査委員会で公開された取材の録音テープで明らかになった。 BBCの情報操作疑惑の報道内容が博士の肉声でほぼ裏付けられた格好で、首相府に疑惑解明を求める圧力が一層強まりそうだ。 録音記録によると、報告書に記載された「イラク軍は生物・化学兵器を45分以内に配備できる」との情報について、博士は「(イラクの脅威の)情報が欲しくてたまらない人たちが飛び付いた。情報機関と首相府の間に論争があった。私は懸念を持っていた」と発言した。(共同通信)
◆背景説明&所感:「やはり、英米は大嘘つきだったわけです」 今年の5月、英国のBBCは「英政府はイラクの脅威を誇張するために、イラクが45分以内に大量破壊兵器を実戦配備できる、というウソの情報を報告書に盛り込ませた」と報じました。英政府はこの報道を否定してBBCに謝罪を要求しましたが、BBCは「証拠がある」といってこれを断ったので、英国政府とBBCは全面対立する形になりました。
7月9日に英国のフーン国防相は、国防省顧問の微生物学者で国連査察の経験もあるデービッド・ケリー博士(59)がBBCの情報源だ、と名指ししました。このため、英下院外交委員会は7月15日にケリー博士を召還して、吊るし上げたのです。つまりケリー博士1人がウソの情報を捏造した張本人であるかのように責めたてたのです(実際はそうではなくて、英国政府が、ウソの報告書を作らせていたのです)。
ケリー博士は下院外交委員会でさんざんいじめられた3日後に自殺してしまったのです。事態は一挙に大問題(もともと大問題なのですが)になりました。国防相が、ウソの報告書疑惑の責任をケリー博士ひとりにおっつけたがために、追い込まれた博士が自殺したのだろうという推測が容易にできたからです。
英国ではケリー博士を自殺に追い込んだ経緯を調査する独立調査委員会が組織されて、ロンドン裁判所では8月1日に第1回目の審議が行われ、これからの調査の進め方などが発表されました。国の最高責任者であるブレア首相も証人喚問に立たされる可能性が高いようです。
ちなみに、ケリー博士が自殺した時、ブレア首相はちょうど外遊中でした。ブレア首相はワシントンから東京へ向かう飛行機の中でケリー博士自殺のニュースを聞かされて呆然としたまま東京に着きました。東京での記者会見では、ブレア首相に随行していた英国のジャーナリズムの記者たちから厳しい質問が矢継ぎ早に浴びせられました。「ブレア首相、貴方の手は血で汚れているのではないか?」と辛らつなことをいう記者もいて、ブレア首相は、返事が出来なくなり、見かねた小泉首相が、強制的に記者会見を終わらせる、という極めて異例な一幕もあったのです。
そして、ついに昨日、13日、決定的な証拠が英国の独立調査委員会によって公開されたのです。ケリー博士の肉声を録音したテープの中で、博士は「首相府がイラクの大量破壊兵器に関する報告書の作成に当たってイラクの脅威を誇張させた」と語っているのです。
これによって、 1.英国政府がイラクへの武力攻撃を正当化するために、イラクの脅威を誇張して伝えていた、つまりウソをついていた。 2.そのような情報操作を行ったのは英国政府自身の意図なのに、あたかもケリー博士ひとりの見方であるかのように見せかけ、5月9日のBBCの報道には根拠がないと主張しようとした事。つまりケリー博士をスケープゴートにして、国は何とか誤魔化そう、というひどいことを考えていた事、 が、明らかになったといっていいわけです。大変な問題です。ブレア政権は転覆するかもしれない。今は対岸の火事と思っている米国のブッシュ政権に対しては、米国民の疑惑はいまのところさほどたかまっていないけれども、英国の出来事をきっかけに米国でも大統領の責任が追及されるでしょう。英国の新聞Guardian(ガーディアン)紙などは、「ウォーターゲートよりもすごいスキャンダルになるかもしれない」という記事を載せています。
私はかねてから、イラクに対する武力攻撃の大義名分であった「大量破壊兵器」が見つからない以上、日本は米国に対する支持を継続すべきではなく、イラク復興支援特別措置法を成立させて自衛隊員をイラクへ派遣して生命の危機に晒す事はもってのほかだと主張しています。
今回、イギリスの「大量破壊兵器」情報がでっち上げであることがわかった以上、小泉首相は今までのように「私は大量破壊兵器はあると思う」などと何の意味も無い発言をして誤魔化しているわけにはいかないのです。野党も臨時国会では、徹底的にこの点を追及すべきなのです。
日本はウソの情報を流す英米にのせられていたのですから。
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