JIROの独断的日記
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2003年04月17日(木) |
過食症は遺伝子のせい−−意志が弱いのではなかった(スイス、独、米の共同研究チーム) |
◆記事: 過食症の人は、これではいけないと思いつつも、どうしても食べてしまう。表向きそれほど食べていないように見えても、かげでこっそり、いつも何かを口に入れてしまう。この行動パターンを「意思が弱いからだ」と考える人もいる。しかし、研究の結果、過食症は遺伝子がそうさせるのであって、意思が弱いためではない、という研究結果が出た。スイスとドイツと米国の研究スタッフの共同研究によるもの。
研究者らは、肥満と関係が深いとして知られている「メラノコルチン4レセプター」(melancortin 4 receptor)の遺伝子を肥満した469人の白人男女について調べた。この遺伝子は、ある種のたんぱく質を作るが、そのたんぱく質は脳内の視床下部にある空腹調節の働きをコントロールしている。つまり、このたんぱく質により、空腹感が抑えられ、正常な食生活ができる。すると、469人のうち、メラノコルチン4レセプターに突然変異があるのは5%の人で、そのすべてが過食症の患者だった。一方、メラノコルチン4レセプターに異常がない人では、過食症は14%にすぎなかった。また、500人の肥満児について調べたところメラノコルチン4レセプターの突然変異は5%で、やはりそのすべてが過食症だった。
◆所感: 遺伝子の研究が進むにつれて、様々な病気が遺伝子と関係があることが分かってきた。過食症は今のところ、とかく偏見を受けやすい、精神科の治療分野である。過食症に関して遺伝子と関係があることが分かっても、まだ、新しい治療法が分かったわけではないのであるが、少なくとも、こういう情報が伝わる事によって、「過食になるのは、精神力がないからだ」という偏見が取り除かれるだけでも、随分良い事である。
過食症でなくても、太っている人が沢山いて、ダイエットの記事が載っていない女性雑誌を見つけるのが難しいほどだ。いろいろ試してもどうしても太るという人がいるだろうが、これも遺伝子が関係している事がわかってきた。すくなくとも30種類の遺伝子が肥満しやすさに関係していると推定されている。
アドレナリンという脳内神経伝達物質がある。脳内神経伝達物質は、ある神経細胞から出て、隣りの神経細胞の受容体(レセプター)と結合して、機能を発揮する。アドレナリンには、何種類課の受容体があるが、その中のひとつであるβ3受容体の遺伝子を調べると、太っている人には遺伝子の変異があり、それが受容体を作っているアミノ酸の構成を変えてしまう。端から64番目のアミノ酸は普通トリプトファンなのだが、ここにアルギニンという、別の種類のアミノ酸があるのだ。
ある程度の割合で、このような受容体の変異を持つ人がいて、こういう人は太りやすくやせ難い。
だから、これからは、ある人が太っているからといって、「ダイエットを続ける意志が弱いからだ」、などと軽々しく口にしてはいけない。また、太っている人もむやみに自己嫌悪に陥る必要はない。
たまたま、今日は過食症の記事を発見したので、肥満について述べたが、恐らくいろいろな病気が遺伝子要因によって生ずることが明らかになり、さらに治療法が発見されていくだろう。科学は偉大だ。
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