JIROの独断的日記
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2003年03月23日(日) |
戦争は、アメリカ兵の心身をも蝕んでいる。PTSD(心的外傷後ストレス障害)はベトナム戦争後に作られた病名である。 |
戦争によって、心身を傷つけられるのは、攻められる側だけではない。戦争を仕掛けたのはアメリカだが、アメリカ兵も戦争により深刻な影響を受ける。
PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは、トラウマ(心の傷)によって起きる病気である。PTSDの原因となるトラウマは死に直面するような出来事や自分や他人の存在に関わる危険な出来事である。そういう出来事を経験したり目撃することによって、思い出したくないのにその出来事を思い出したり、白昼夢のごとく現実に再びそのような出来事を経験しているように感じる、という症状に悩まされる。異常に怒り易くなったり、過度の警戒心を解くことができない、不眠、イライラ、といった症状も起きる。
日本国内で言えば、地下鉄サリン事件や阪神・淡路大震災の経験者の多くがPTSDになっているし、そのような大事件ではなくても、交通事故やレイプを経験した人にもしばしば見られる。
しかし、そもそも、PTSDという病名が出来て、精神医学者によって研究されるようになったのは、ベトナム戦争で極限を超えるような悲惨な体験をした米兵の多くが、帰国後に様々な深刻な精神症状を呈することが、アメリカで社会問題になったからである。当初は「ベトナム帰還兵症候群」と呼ばれた。
戦争が個人の精神に与える悪影響は、ベトナム戦争でも、今回のイラク攻撃でも変わりはないであろう。事実、911テロ後、タリバン掃討作戦のためにアフガニスタンに赴いたアメリカ兵の中で、帰国後、明らかに精神状態に異変を来たした症例が報告されている。悲惨なケースでは、帰国した兵士が、何も家庭内に問題がないのに、突如、妻子をナイフで刺し殺すという事件が何件も起きた。これは、ニュースでも報じられた。
戦争であまりに悲惨な状況を体験すると、平和な環境に戻っても、突然、敵に襲われる錯覚に襲われ、その恐怖のあまり、身近にいるものを殺傷してしまう事すらあるわけである。
アメリカ兵とて、好きで戦場に向かうわけではない。国家の命令により、止むを得ず戦場に赴く。そして、このような悲惨な心の傷を負う。
国家の中枢にいる人間は「戦争を開始せよ」と命じるだけで、自分は安全な場所にいて報告を聞くだけである。だから、戦争のもたらす悲劇を自らのものとして感じる事が出来ない。しかし、国家の指導者としては、自国民を戦地へ送り、癒しがたい傷を負わせる事に関して責任がある。
ブッシュ政権の面々の中で、パウエル国務長官は戦争に最も消極的だった一人である。彼は軍人として湾岸戦争を経験した。彼が、本当は戦争をしたくなかったのは、戦争の悲惨さをいやというほど知っていたからであろう。
ブッシュは父親の権力を利用して自らは兵役を免れたといわれている人間である。そして、恐らく戦場のありさまを想像することもないのであろう。
こういう人間が始めたのが、今回の戦争である。ブッシュはイラクの一般市民のみならず、自国民にも悲劇をもたらしている事実に気がつかなければならない。
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