JIROの独断的日記
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2002年10月29日(火) |
桃李不言 下自成蹊(とうりものいわざれども したおのずからこみちをなす) |
西洋のみならず、東洋にも人の世の核心を見事に表現した言葉が多い。故事名言などといわれるが、その中でも私が好きなのは、
桃李不言 下自成蹊(とうりものいわざれども したおのずからこみちをなす)
という一文である。中国の古典、史記 李将軍伝賛という書物に記されているそうな。 高校の漢文で習ったことは殆ど忘れてしまったが、この一文だけは、一度聴いてすっかり感心して、いまだに覚えている。
「桃や李(すもも)は何も言わないが、美しい花や実があるから人が集まり、下には自然に道ができる。」つまり、「人徳のあるものは自ら求めなくても、人々がその徳を慕って集まり従う」というたとえである。実に美しい比喩ではないか。
人間、誰しもそのような人徳を備えることができればよいのだが、現実には物凄く難しいことだ。実際にいたとしても、何か、却って近寄りがたいような神々しい人物なのではないかと邪推していた。しかし、最近、ノーベル賞を受賞した田中さんの受賞までのいきさつと、その後の様子を見て、ああ、あの言葉はこういう人のことを云っていたのか、と思った。
そういう人物が今のこの世にもいることが分かり、世の中は、そう、捨てたものではないのかもしれない、と僅かに希望の光が差し込んできたように思えた。
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