それすらもまた日々の果て |
姫崎せりか |
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理由 昨日、じゃなくてもう一昨日かな。 夜になって雨が降った時のこと(東京近郊のみ) 帰りが遅くなって、夜中の1時頃駅から歩いてきたと思いねえ。 この信号を渡れば直ぐにマンション。雨はしとしと。 斜め前には同じく信号待ちしている女の人が居る。 早く青にならないかなーと思っていたら、不意にその人が言った。 「……そうなのよ。今日、病院に行ってきたの」 え? 斜め後ろからギクッとして顔を上げると、その人は傘の陰でどうやら携帯電話をかけているらしい。 あーびっくりした。最近多いよな、独り言だと思ってると電話してる人。 まあ、電話だと思ってたら独り言だったって方が怖いんですが。 雨はしとしと。深夜1時。 まだ信号は青にならない。 「癌だって」 ……え? ちょっとビビッた。 「手遅れだって」 …………。 一歩歩下がった。 「手術しても助からないらしいの」 ………………。 もう一歩下がった。 雨はしとしと。深夜1時。まだ信号は青にならない。 「あたし、どうしたら良いの?」 傘の中で、すすり泣く声が聞こえる。 雨はしとしと。深夜1時。まだ信号は青にならない。 あの時のお巡りさんへ だから私は信号無視したんですが(涙) |
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