とんだ勘違いをしてるぜ、と帽子の男は笑った。何をだい、と尋ねれば椅子の後ろへ手枷をはめられたその男は皮肉っぽい小さな笑いを潜めて答えた。 「たしかに、俺はあいつの相棒かもしれねぇ。世界中ただひとりきりの。そうかもしれない。だがあいつはそんなもんにはしばられねェのさ。俺が死んじまおうがあいつは笑って世界を飛び回り続けるに違いねェ。残念なこった」 なぁ、本当にそうなのかな。それなら君はどうして愛想を尽かさずこんな健気に彼を待つんだい? だがしかしその問いに男は顎をのけぞらせた。白い喉が見える。薄明かりのせいかもしれないが、白人のように、その肌は色が白く見えた。いや、単に衰弱しはじめているのかもしれなかった。 一晩の間を置いて「相棒を信じているのかね?」と尋ねたが、やはり男はNOと答えるだけだった。
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