繋いだ手を離さないでいてよと調子をつけて言ったら後ろを歩いてる亜久津が笑った。 「ちょっと、鼻で笑わないでくれる? 傷つくから」 「ふん。何度だって笑ってやるよ。ばーか」 でも振り向けばさもおかしそうに唇をゆがめているから、なんかもういいやと思った。煙草は没収してやるけど、まぁ、皮肉げに笑う亜久津はちょっと綺麗だから。 日に焼けていない長い指先から吸いかけの煙草を取り上げて軽くくわえると、亜久津は忌々しそうに眉間の皺を深めた。 「てめぇ、」 「ケチなことは言いっこなし」 踏出す亜久津。後じさる俺。殴られるかな。でも虚勢はってニィと笑って煙を吐きつけてやる。 「それとも亜久津はこんな吸いかけ一本でキレるような人だったかしらん」 すると亜久津は舌打ちして、俺を置いて歩き出してしまった。慌てて追いかける。いつもみたいに。
|