微かに残る煙の香りに顔をしかめ、窓を開ける。そんなことをしたところで染み付いた匂いなんてきっと消えない。わかっていたけれど開けずにいられなかった。 それから目についたテーブル上の煙草の空箱も握りつぶして塵箱に投げ捨てた。 結局、そうしたところで俺は後悔し始めてしまっていた。 あっけない。なんてくだらない。なんてどうしようもない感情なんだろうか。 会わなければいけない。 そう思うと、呼吸も煩わしくすら思えてきた。なんでお前はここにいないんだろう? 足跡だけ残して行くなんて、どれだけ残酷なことか。ああお前は知らないだろうけど。 お前は知らないうちにゆっくりと足を踏み入れた俺を受け入れたくせ、こうしてあっさりと俺を捨てて行った。けれどお前はちっとも考えていないだろう。俺がこんなふうになってるなんて、想像だってしてないに違いない。 馬鹿みたいにお前のことばかり考えている。 あくつ、アクツ、亜久津。 なんでお前はここにいないんだろう。 なんでここにはお前の跡ばかり残っているのだろう。 馬鹿みたいに考える。お前の後ろ姿を思い出したら涙がにじんで来た。畜生、ずるい、ずるい、ずるい。 こんな思いはお前がすればよかったのに。 俺じゃなくて、お前が。 俺はずっとお前が俺の足跡に縛られていてほしかった。 -- (たかだか七行を写すはずがなんでこんな風に文字が増えてるんだろう…)
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