我家の東方と亜久津は幼馴染みという捏造にも程がある設定で収まったようです。 …ご、ごめんなさい……。 -- 予想外の先客に、東方はすこし驚いて立ち止まり、しかしすぐに後ろ手で扉を閉めて本棚へと進んだ。 ――成程、どうりで後輩が困った様子で図書室前を行ったり来たりしていたわけだ。 亜久津は机に突っ伏していたが、東方に気づくと顔をあげ、欠伸をした。 「めずらしいな、亜久津。お前が図書室にいるなんて」 「……るせぇよ」 いつもどおりの悪態だが、如何せん半ば欠伸をしつつ言ったので、迫力などは微塵もない。東方はどうしたのかと訪ね、少し背伸びをして自分の背より少し高い棚の本をとり、何頁か捲った。 「……なんかおもしろいもんでもあったか」 「…………今日は外れかも知れないな、これなら家の本のほうが趣味に合ってる」 「詩集?」 「そうだ。で?俺は本を探しに来た、でもお前はどうしてここにいるんだ?一般生徒が図書室に入れなくて困るだろうが」 「は、気にしねーで入りゃいいだろーが」 「そうもいかないだろう」 お前と違って普通はもっと神経が繊細にできてるもんだからな、と東方は本の表紙を軽く叩き、埃を落として表紙の金属で細工された部分を指でなぞった。 「…………一時撤退、だ」 「……逃げてきたのか、千石から」 「違ェ! ただ、あいつがいるとうかつに眠れねぇから……ここで寝てた」 「ふぅん、めずらしいな…………ン?最近は帰らないのか」 「……帰ったら帰ったでまた面倒なだけだ」 「そりゃ、大変だな」 「…………他人事だな」 「他人事だからな、付き合いが長くても……俺はお前の千石じゃない」 「…………あたりまえだろ」 「あぁ、当たり前だ…………亜久津、次の授業始まるけどお前出ていかないのか?」 「……別に、しばらく寝て――」 「千石のクラスの移動授業、ここだぞ」 「!」 -- ……なにがなんやら……。 さらによくわからなくなっていく東方。 むしろ誰なのか問いただしたいですね。
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