調子のはずれたような歌。 耳に流れ入ってきて、流れ出ていくメロディー。 それがなんの歌か、どんな歌詞かもしらない。 ただそれをそこで千石が歌っている、ただそれだけ。 多分その曲の曲名や歌詞や歌手、そんなものを知る日も恐らく来る事はないだろう。 嬉しそうに鼻歌を歌っていた千石は、ふとこちらに気づいて、一瞬驚いた表情をしたかと思えばすぐに嬉しそうに笑った。 歌が途切れた。 代わりに聴こえたのは声。 「あくつ!」 彼が名前を呼ぶ声。 「うるせぇよ」 意図せぬ所で緩む口元。 しまった、と思う頃にはもう遅い。もう千石は自慢の視力で捕らえてしまった事だろう。 俺はそう思いながら螺旋を描く非常階段階段を降り進み、途中の中途半端な位置に座り込んでいた千石の背中を軽く蹴った。 「下手な歌歌ってンな、三回まで筒抜けだっつーの」 「あっは、吹き抜けだからねーしょうがないよ」 「……ぁあ」 ふと仰いだ視界に見えたのは、非常階段越しに見えた青空。 「……空飛びたくなるよね」 「飛び下りたら飛べるだろ」 「それじゃあ死んじゃうからだめ」 「……我侭だな」 「我侭ですとも」 -- よくわかんない……。 つかいつも仲よいゴクアクばっかりだから仲悪いのも書きたい…なー…。
|