短いのはお好き? DiaryINDEX|past|will
その日、マロン林(ばやし)くんは相当荒れているようでした。 3時の休憩時間にぼくがいつものように駐車場のベンチに座っていると マロン林くんが声を荒げているのが聞こえてきました。 「なんで烏賊の塩辛でイイチコ呑んじゃいけないんだよ」 「だからね、そういう飲み方が一番身体を壊すんだって。腎臓やられちゃうよ」 マロン林くんの相手をしているのは、マロン林くんと同期入社の『アルブスの少女』という異名を持つ係長です。 むろん、少女といっても女性ではなく、単なる小太りの禿オヤジにすぎませんが、仕種がちょっとカマっぽいのでした。 ふたりの会話はつづきます。 「ところでさ、プライド見てる?」 「みてるさ、もちろん」 「実はさ、おれアレに出てんだよね」 「マジすか? でもどうせトラでしょ? エキストラ」 「ちがうよ、立派な役付きだぜ」 「マ、マジすか?」 アルブスの少女は、目をシロクロさせて更に聞きます。 「役名は?」 「ハルだけど、なにか?」 「……」
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