短いのはお好き? 
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2003年11月20日(木) birth day




昨晩ネットで落した120Mくらいのダリアという短いアニメをWMPで再生しようとしていると「アルタード・ステーツはケン・ラッセルだっけ?」小森くんがそういっていたことを不意に思いだした。



いまごろどうしてるんだろう、あいつ。



またぞろ、「マコしゃん萌え〜」とかいいながらティンクの抱き枕を抱いて悶えているにちがいない。そんな気がした。



それにしても小森くんはいつもひょんなときに突然現れる、神出鬼没な強烈キャラなのだ。




前回現れたのはぼくがちょうどモアイ像の上でという変な設定で人と待ち合わせをしていて(以前ハチ公にマタガッテという設定もあったけど)約束の時間を裕に30分も過ぎているというのにまったくその人物が現われずに、もうほんとうにブチキレる直前に小森くんは降って湧いたかのように現れたの
だった。




それからぼくらはカトレアという東京ドームが百個くらいすっぽりと入ってしまうほど超デカいマンモス喫茶店に入った。




ウェイターとウェイトレスだけでも合わせて15万人くらいはいそうで、ということは、厨房も含めたならば総従業員数は20万はくだらないんじゃないか、と小森くんがいった。





んなわけねーじゃん、とは思ったものの案外そうなのかも知れなかった。ホラでもなんでもいい。彼には、ああそうかもなぁと思わせる不思議な空気感みたいなものがある。



たぶんそれは彼が優れた偉い人物などではなく、それとは真逆の自分をダメ人間と思っている奢りのない人物だからだろう。






「なんかむしゃくしゃしてるから、今日は派手にいこうぜ!」




「おー!」




と二人で声を出したまではよかったけれども、なんにもやる気が起こらない。





純粋に鼓舞するためだけの空元気がさらにどっと疲れを覚えさせただけだった。




「あー、なんかこうワクワクすることないかなぁ」




「脇毛を剃るってのは駄目すか?」



「はい?」




「いや、失礼」





「じゃ、いっそのこと叙々苑に焼肉食いにいきますか」




「いいですね」



「割勘すか?」





「いや、誰かに奢らせるのさ」




「へ?」







そこへ、青天の霹靂の如き大変化が訪れようとは!








ふたりのテーブルの冷めたコーヒーが早々に下げられるや、ところ狭しと豪華な料理が並べはじめられた。



これには、さすがの? ふたりもビックリ! 何かの間違いにきまっているけれども、ちょうど腹も空いてきたことだし、食欲をそそりまくるなんともいえないイイ匂いと、燦然と眩いばかりに輝く豪華な料理の数々にもう一瞬たりとも目を離せない情況になっていた。




もう唾液の分泌がとまらない。



これで「失礼しました間違いでした!」で、下げられてしまったら、それこそ蛇の生殺しってやつだとぼくは思った。そんな殺生な…。





少しでもその現実との対面を先延ばしにしたいがために、どちらも事の真相をウェイターに尋ねたりなどしない。




一点を見つめたまま…だがその視線はエビチリや小籠包を透過して、全然異なる言うに言われない抽象的な思考に囚われているようなかなり難しい、いうなれば哲学的な表情を浮かべていた。



あるいは、それを人は切ない眼差しと呼ぶのかも知れない。



だが、作家やミュージシャンにも旬があるように全ては時間に支配されている。ましてナマモノである料理に於いておや、である。




温かい食べ物でなくとも時間の経過と正比例して味も鮮度も急速に落ちてゆく。



そのように何事も時間から逃れられないのだ。




というわけでっ。




湯気を立てている美味しい料理もあと少しで旬が過ぎてしまうだろうし、お腹の虫も我慢の臨界点に達しようとしていて、イライラの炉心があわやメルトダウンか!



という自己判断のもと、もう居ても立ってもいられずに思わずウェイターに聞いていた。





「あのこれ、なんかのまちがいですよね?」






するとウェイターはくるりと振り返り500メートルくらい先に見える片隅に陣取る一団を指差して言った。



「あちらのお客様からお言付けをお預かり致しております」




えー!


なんですとー!



マジすかー!



ぼくらは息を呑んで次の言葉を待つ。





きょうは、おめでたい日なので、大いに呑んで食べてください、とのお言付けでございました。




ぼくらふたりとも目が異常に見開いていくのをとめられなかった。





いったい誰なんだろう?



「あれかなちょうど彼だか彼の恋人だかの誕生パーティでもやっているのかも知れないね」




「となると、お礼もかねておめでとうの一言をいわないわけにもいかないだろうな」



ぼくがそういうと、小森くんも半信半疑の体ながらコクリと頷く。




知らぬ間にビールの大ジョッキが目の前に置かれている。






「じゃ、据膳食わぬは男の恥っていうしさ、食っちゃおーぜ。挨拶は後ってことで」



それってちょっと意味合いが違うと思うけど、と頭の隅で思いつつ、ぼくも今まさに全身の筋肉を漲らせ獲物を狩る虎のように一皿目に挑みかかろうとしていた。





「なんかわけわかんないけど、このまま退席するなんてあまりにも失礼すぎるもんね」







「ということで」



「ということで」






ふたり示し合わせたように合掌すると満面に笑みを浮かべ、おもむろに食べはじめた。











「happy birthday to you」 の歌声がかすかに聴こえてくる。












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