母のタイムスリップ日記
DiaryINDEXpastwill


2005年09月20日(火) ビルが軽いの?

母はソファーに座ってお茶を飲むところだった。
「ここよ♪」と言わんばかりに手を振っている。
表情からはご機嫌が悪いと想像できた。
「機嫌悪い見たいですね」と職員に問うと「そうですね ちょっとね」と言う返事。
傍に行くと「今来たの?」と私に聞いてきた。
「そうよ」というと「ふうん」と。。。

ふるさとの教会から届いた敬老のお祝いと思われる包みを開封せずに母に渡した。
「あら 私に?」と言うけれど裏を返して何処からかを確認する様子はない。
裏を返して「ほら」と言うと声を出して読んでいた。
それでも ピンと来ない様子だ。
「開けてみたら…」と封の端をめくると「私のだから…」と自分で開けようとする。
中からカードが出てきた。
声を出して読んであげると 母の目がウルッとした。
聖書の言葉を引用したお便りが心に響いた様子だ。
そういう感情が 未だ残っていると思うと嬉しい。

機嫌の悪さは 酷い物ではないようで 徐々に落ち着いてきた。
「お出かけするからね」と声をかけて 居室に入った。
トイレ誘導を済ませ 着替えをして外に出た。

バスが見えたけれど 母の足取りはゆっくりペースになっているので 無理に走らない事にした。今年初めには まだ「走るぞ」と言えば少し足早に歩けたのだが 今の母の足取りは危ういので転倒を避けるために一バス見送る事にした。
外出時には こういう所で以外に時間を取られてしまう。
バスを乗り継いで 罹りつけの医師の所に行った。
程なく 診察。
医師が手を振ってくれた。母は 恐縮して「先生なのに…」と両手を握って頭を下げた。
母の検診後 私も診察を受けた。
「風邪」である。
2人分の薬を頂き バスに乗って駅まで戻った。
「お腹空かない?」と聞くと「未だ」というので近隣を歩く。
「〇△×」という診療所の看板を声を出し読み。「〇△×って何だ?」「ビルが軽いのか?」と聞いてきた。
確かに そうとも受け取れるので「そうだね」と同意した。
ここで「違う」と言っても さして変わりはないように思えたから。
花屋の店先でコスモスをみて「綺麗だね」と言う。
ピンクのサルスベリの花を見上げて「梅じゃないよね」と。。。
「うん よくわかったね 梅じゃないね」と返答。

お腹が空き始めた頃を見計らってお店に入った。
このところ外食は多少の恐怖だ。
混ぜこぜにしたり 自分で箸を運ばなかったりがあるからだ。
幸いなのは 人前で食事介助しても全く気にしなくなっている事のみ。
でも正直のところ こちらの胸はチクリと痛む。
見れば「どこかおかしい人」に見えてしまうから…。
それでも 母がおいしい物を食べられるのだから「よし」とする事に…。

1時間近くかけて ようやく食べ終えた。
食後は デパートの中を歩く。
靴をみたが 母に合うものは なかった。
帽子を見ているうちに 母にぴったりで母自身も気に入った物が見つかったので購入。
ハンカチを見ていたら「これ いいわね」と手に取ったので 買おうとした。
「500円もする…」と驚く母をみた。
値札が読めただけでも嬉しい。思わず購入を決めた。

雨が窓を叩きつける様に降り出していた。
「ケーキでも食べて 雨の過ぎるのを待とうか?」というと「ケーキ」に反応。
お店に入り二人でティータイム。

雨もやんだので バスに乗って施設に戻った。

今日は ずっと二人で過ごしたせいだろうか しきりに私の存在を気にする。
ケーキセットを頼んでいる時も一時的に 母の傍を離れたらすくっと立ち上がった。
慌てて傍に飛んでいくと「あなた ここにいなさいね」と言う。
「わからない場所」という事だけは 認識している様子だった。
施設に戻ってからも 私の姿を追っていた。
こちらも体調が悪いし あまり長居をして風邪でもうつしてしまわないかと気になり 引き上げ時を探った。
母の視線がテレビに移ったのを機に施設を後にした。



はな |MAILHomePage

My追加