2013年06月06日(木) |
金子哲雄『僕の死に方 エンディングダイアリー500日』★★★★★ |
金子哲雄『僕の死に方 エンディングダイアリー500日』
星五つにした理由は、この本がエンディングに関する情報のみならず、医療の現状やいかに生きているうちに自分の命を適切に燃やすか、使命を果たすかにまで言及されているから。仕事とは何か、どう生きるか、選択するか。
すべての小学校の図書室において、みんなが読めるようにしてもらえたらいいなあと思えた一冊でした。
メモ。
「私は喜ばれるにはどうしたらいいか、といつも考えている。それはいまでも変わらない。」(p36)
「その時、確信した。 大事なのは、自分なりの方法で相手を喜ばせることだ、と。人が『喜ぶこと』は、人それぞれ違う。千差万別だ。」(p36)
「息抜く力 生き抜く力」(p46)
「『好きなもの』というのは、人それぞれだから、それが一致するのは難しい。でも『嫌いなもの』が一緒でないと、長く共にいるのは難しい。『嫌い』が共通しているかどうか、がいちばん大切なものさしではないだろうか。」(p47-48)
「私はそんな中で、主婦の目線で話ができ、かつビジネスに関連する話題も発信していける。こういう希有なポジションを獲得できたのだ。やっていても手応えもあった。まさにブルーオーシャン。」(p58)
「こうした3点をバランスよく盛り込めているかどうか。」(p63)
「チャンスはどこに転がっているかわからない。ひとつだけ言えることは、自分はどんな仕事でも『グッドパフォーマンス』を心がけていたと言うことだ。 どんなに小さな仕事でも、それは必ず『誰か』に向けられている。その誰かが喜んでくれるなら、それがたったひとりでも、私はうれしい。そう考えて、ずっと仕事をしてきた。」(p69)
「繰り返しになるが、がん治療は想像以上に体力を要する。治療するだけで、十分がんばっているのに、それに輪をかけて『がんばれ』と言われると、『これ以上、がんばれないよ』と言いたくもなる。」(p119)
「仕事こそが私の生きる『よすが』だった。(略) その一方で、私は『死の準備』を進めた。」(p120)
遺産整理。公正証書遺言の作成。戒名。葬儀、遺骨、墓地、エンディングノート。
「死んだ人を悼む気持ちは同じなのに、お金で争ってしまう。争いたくなくても、そこがはっきりしなければ、揉める可能性がないとは言い切れない。」(p126)
「実際、こうしたプロデュース作業は楽しかった。 自分の『死』にまつわることなのに、作業中、喜んでくれている相手の顔を思い浮かべて、笑みさえこぼれた。」(p130)
結婚は場合によっては二度三度とすることができる。 でも葬儀は一回きり。一生に一度。 だからこそ、主役の意志を事前に確認しておくことが大事なのではないか、と。
「いったこれから、どう生きていくべきなのか。どう暮らしていくべきなのか。どう死ぬべきなのか。 正直、自分がなぜこんな目にあわなくちゃならないんだと、運命を呪ったことも何度かある。 なんで、自分なんだ。」(p140)
妻のあとがき。 「8月22日以降、生と死の狭間に生きる金子に寄り添い、私も共に生きることで、感じたことがあります。『死』は、決してゴールではない、ということです。 金子は、生きることと同じように、死に対しても一生懸命に取り組みました。自分の終わりを意識して、死後の始末をしていたのとは、ちょっと違います。 『稚ちゃん、生きることと死ぬことって、やっぱり同じだよな』 最後の1か月、金子はよくそう言いました。」(p196)
周囲とのさまざまなぶつかり合い。 「在宅死を希望する患者と伴走する家族には、このようなある種の覚悟が必要になる場合があることも、書き添えておきたいと思います。」(p198)
「戦うことを是としている人たちからは、たくさんの批判を受けました。 『どうして今、諦めるんだ!』 面罵されたこともあります。 でも、苦しみに耐え、闘い続けることは、選択しなければならないことなのでしょうか。死ぬ直前まで、自分の希望通りに生きることは悪いことでしょうか?」(p198-199)
金子さんが望んでいたことは、しっかりと叶っているようです。
「やり残したことはわかっていた。 死んだあとのことだ。 まがりなりにも、『流通ジャーナリスト』として情報を発信してきた。自分の最期、葬儀も情報として発信したいと思った。」(p124)
その情報を、こうして受け取ることができて、嬉しく思います。 金子さん、ありがとうございます。 ご冥福をお祈りします。 肺カルチノイドの治療法も見つかり、延命につながる未来がきますように。
金子哲雄『僕の死に方 エンディングダイアリー500日』
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