視界の先を白く細かなものが舞っていた。 しんと静まる夜道を足早に歩けば、アスファルトの上をきらきらと光るものが埋めていた。
明日もまた冷たいらしい、
憂鬱な寒さの中をどこかはしゃいだ気持ちがよぎり、不思議に感傷的に夜の黒のなかを歩く。 傘を握る手がゆっくりと感覚をなくしてゆくのを まるで映画の登場人物が寒がっているみたいに遠く感じている。
冷たい、冷たい朝。 夜から夜明けまでの闇がとても好きで。 ここにひとつの小さな灯りがある、それはただの安い孤独でしかないが、 わたしという名を捨てたひとりを包んで閉じている。 名を呼べなくなってから、 心は秘めるより更に裡にこもり 憂鬱さと祈りのはざかいに立ったそこからわたしを見ている。
少しずつ、変わっていくものがあるのが今は救いだと思う
いつもきみがわたしを追い越していく。 それでも今は、 わたしが先に立っているのだとまだ少し、笑ってみせる。 さようならをいつか、言える日が来るといい。
元気かい、神様。 わたしはまだここにいるよ。
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