貴婦人

貴婦人がいた。

紛れもない貴婦人がそこにいた。

蛾のような色彩の高級そうな服をまとった貴婦人が。
ジャラジャラと宝石を身に着けた貴婦人が。
まるでアメのような指輪をつけた貴婦人が。
休日は、バルコニーでお茶をし、娘にバイオリンでも奏でさせて優雅に過ごしていそうな貴婦人が。

吉野屋にいた。

一人でモリモリと牛丼並盛を食しておられた。
自分で御新香とか出して食べてた。貴婦人が。

僕を含む小汚いオタクだらけの店内に、一際目立つ上流階級の貴婦人。
まるで皇族が東南アジア辺りの貧しい集落を視察しているような絵図だった。

あんな品の良さそうな貴婦人も、吉野家なんだなと牛鮭定食を食べながら感心した。

貴婦人が牛丼の上に山のように盛っていた紅ショウガ。
鬼のように盛っていた紅ショウガ。
あの毒々しい赤が目に焼きついて離れない。
2002年11月25日(月)

Iremun2 / Ota.P

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