雨草子
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コーヒーを淹れてカップを台の上に置いた。 ぶぅーんと製氷器が鳴り出し、カップの中は丸い波紋で埋め尽くされ、 それはいつまで眺めてても飽きなくて、
はっと顔をあげると、電車の窓の外は激しい雨の跡がついていた。 本を読むのに夢中で気づかなかった。 電車を降りるともう小降りになっていたけど、 夜空より明るい空だった。
線路に沢山出来てる小さな小さな水たまりをじっと凝視してると、 ぽつぽつと雨が見えて、 ささやかな雨音は電車の爆音にかき消されて、 目をつむると、小いさな波紋が、闇の中に広がっていく。 目をつむっていても、さっきの空の明るさが、目の裏に広がっていく。 柔らかい雨の音とともに広がっていく。
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