声の音

2002年10月08日(火) なくなっていたFAX

今日はうちの親族、叔父さんについてつらつらと。

水井は今、祖母のうちにすんでます。
というとすごく静か、とか寂しいイメージだけど
実はすごく賑やかでやかましいくらいの家です。
なんと言っても大家族だし(7人)
そのうち6人は女だし。

唯一の男性は、時折日記に出る従兄弟です。

昔、うちにはもう1人男性がいました。
従兄弟の父です。
今いないのは離婚したからです。
もうちょっと突っ込むと、「失踪」でした。

おじさんは、週末に泊まりがけで麻雀をしに行くことがあって
その日も麻雀に行く、と言って出かけました。
金曜の昼から行ったので、土曜の昼には帰ってくるはずでした。
それが、夕方になっても
夜になっても、日曜の朝になっても帰ってきません。

友達の家で、寝てるのかしら。
まさか事故?とかさすがに心配し始めた頃、
叔母が寝室(と言うか夫婦の部屋なだけですが)からいいました。

「いや、FAX無くなってるわ」

…ある意味お笑いです。ギャグです。
だって、そこに出入りしたのは叔母だけでなく
私は従兄弟、もう1人の叔母も出入りしていたのに
誰も気付かなかったんです。無くなっていたことに。

そのことに気付いて部屋を見てみると
ワープロ、コーヒーメーカー、小さな冷蔵庫など。
かなりのものがなくなっていました。
気付かなかった私達も、どうかしてます。

いなくなってしばらくは、友達に電話をしたり
叔父さんの実家(と言うべきですか?)と連絡を取ったり
あわただしく過ぎ、しばらくして
ある金融会社から叔父宛に電話がかかってきました。

もうお決まりのパターンです。
叔父は自分が興した会社が上手くいかずに、夜逃げしたのでした。

ただ、叔母や妹であるもう1人の叔母は
何となく資金繰りが大変なことに気付いていたみたいで
案外冷静でした。
ただ、借金取りがうちに来ると困るので
電話で失踪したこと、自分たちも何も知らないこと等を告げ
法的な手続きを行ったみたいです。
1ヶ月くらい、時折電話がかかってきましたが
しばらくするとそんな電話も来なくなりました。

私の知らないところで(もちろんですが)
叔父と叔母は連絡を取っていたようで
もう少し立ってから離婚しました。
その時のことを、私は「うちらしいなぁ」と思い出します。

ご飯を食べて、そのまま居間でテレビを見ていたんです。
叔母は一旦上に上がって、何かを取ってきて
テレビを見ながら書き物をしていました。
しばらくして
「ちなちゃん、これ、保証人にならへん?」
と離婚届を出されました。
その時私、ハタチくらいでした(笑)

「いや、さすがにハタチで離婚の保証人は嫌やわ」というと
「そうやなぁ…」といって、祖母に書いてもらっていました。

もう昔のことです。
叔父は今、タクシーの運転手をしているらしいと
この間私が知っているものとばかり思った両叔母から聞きました(笑)
「従兄弟には内緒やで」という口止めが後で付きました。

従兄弟は、今でも父が失踪したままだと思っています。
それでいいと思います。
うちの家族の中で、唯一本気であの叔父を憎んでいる人がいるなら
それは従兄弟です。
無理はないと思います。

その時従兄弟は18才。
大学受験を半年後に控えた頃でした。
女ばかりの家で頼りにしていたことも
あったのではないかと思います。

叔母や祖母、私が叔父を非難するなら、
その時期に失踪したことです。
どうして後半年待てなかったのか、と。

借金も実はたいした額ではないのが滑稽です。
総額は60万足らず。

先日、机の整理をしていて
あるレターセットを見つけました。
叔父が失踪の直前に、突然私にくれたものでした。
それは姪である私への最後のプレゼントになりました。

それを見つけたので、今日は叔父の話。


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水井ちな [MAIL]