ジョージ北峰の日記
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しばらく忙しくて休んでいましたが、話題になっている医学用語を基礎医学的観点から分かり易く解説してみます。まず熱中症を取り上げてみます。
熱中症の基礎知識
熱性症(熱中症を含む)は大きく3項目に分けて考えます。
1) 熱性痙攣 子供や運動をし過ぎた場合によく見られますが、発汗が過剰となり電解質のバランスが崩れた時、筋肉のけいれんが見られる現象で、通常、体温調節機構が正常に働き回復します。 2) 熱性疲労 よく言われる熱中症のことですが、突然始まり、疲労や虚脱(意識喪失)が生じます。これは脱水による血液の減少を代償するための心血管系の不全により発生します。短時間虚脱(意識喪失)が生じた後、水分補給により症状は回復します。
3) 熱性卒中
これは、高温・高湿下での肉体労働で発生します。肉体的ストレスに弱い老人、若い運動選手、兵士、心臓疾患を持つ人は熱性卒中になりやすいです。 体温調節機構が低下していたり、発汗能力が低下していると、体温は40度以上に上昇し、多臓器不全をきたし突然死することがあります。臨床症状としては、末梢血管が拡張、循環血液量が低下、高カリウム血漿、頻脈、不整脈や他の全身症状が現れれます。 ことに、筋肉痙攣が持続する熱中症は増悪し、筋肉壊死を起こします。 これが起こりそうな場合、体温上昇の有無を確認して下さい。
メモ 筋肉壊死について これは筋肉細胞内に存在するリアノジン受容体-1(PYR1)にニトロイル化(N02)が生じると、この物質は筋肉細胞内に移行しカルシウム代謝に異常をきたし筋肉細胞は壊死に陥ります。この受容体が突然変異をきたした疾患の人は悪性高熱症と呼ばれ、麻酔薬で熱性卒中のような症状をきたすが薬物で治療可能である。
いわゆる熱中症の人がPYR1遺伝子に突然変異を持っていると熱性卒中に起こしやすいやすく(つまり素因があり)、その場合は悪性熱中症と同様、薬物治療が可能で、熱性卒中症も治療できるかもしれません。
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