ジョージ北峰の日記
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日本人人質が無事解放されたことは、本当に良かったと思う。今回、日本の政府はよくやった(正しい対応をした)と考えている。これはある意味で日本が世界の人々から信頼されていることを示唆する象徴的な出来事になったと考えたい。しかし、そのことばかりを喜んでいるわけにはいかない。本当はこれからが大変である。日本に対する世界の期待が大きければ大きいほど、その果たす役割が増大するからである。イラク問題の解決は、イラク国民だけではとても解決できないほどの多くの問題を含んでいるように思える。私は政治の専門家ではないので、おそらくピントの外れたことを考えているかも知れないが、問題が複雑化している原因は、おそらくアメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、中国、ロシアなどの国々の利害が微妙に食い違っているからだと考えざるを得ない。とするならば、これらの国々の話がまとまらなければ、決してこの問題は解決しないだろう。 これは、これらの国々がアメリカに協調して単に軍を派遣することではなく、つまり今後の問題解決に共通の(理解しあえる)考え方を共有すると言うことだろう。前回も述べたように、軍事力だけならアメリカ一国でも十分統治できる能力があると考えるが、それだけで人の心を征服することは出来ない。軍事力だけでは、たとえ相手が間違っていたとしてもそれ正すためには恐怖政治をすること以外(それは虐殺を伴う)方法がないかもしれない知れないからである。だから自由と民主主義を標榜する先進国の首脳は、(歴史上に誤解を残さない為にも)一国の軍事力だけで他国を支配することを避け、可能な限り意見を異にする国々の意見に耳を傾ける謙虚さがあったのではなかったか。アメリカは、殊更そのことに注意を払ってきた国ではなかったのか。だからこそ世界の国々アメリカを信頼してきたのではなかったか? 今回のイラク戦争については、アメリカはこのバランス感覚を失っているように思える。これも、やはり9.11事件のショックが尾を引いているからだろうか? とにかく日本はアメリカに出来るだけ早く冷静になって世界と対話をするよう薦めるべきであろう。そして世界の国々と、イラク問題の解決法についてコンセンサスを得、その上で今後の行動の枠組みをつくるよう忠告するべきである。アメリカの高官が言っていたように、まさにアメリカ抜きでは国連の活動は何の力もないのみならず、イラク問題は解決できないからである(アメリカの軍事力は国連にとっても絶対に必要な存在であることを忘れてはいけない、と思う)。 しかし、アメリカのような超大国が軍事行動する場合、絶えずその正当性を明確にする必要がある。その正当性こそ国連において承認されるべき要件なのである(面倒かも知れないが)。その意味において国連の存在意義があったのではなかったか? フセイン政権を打倒するまでのアメリカの軍事行動は(すべてではないにしても)理解できる範囲内であった。しかし、今になってはその範囲を超えつつあるように思える。 最早、アメリカを中心とする占領軍だけでは、イラクの新しい国家建設は不可能なようにさえ思えるのである。何故なら、今その戦争の正当性が曖昧になってきているからである。 現在、国連では占領軍からイラクへの政権の移譲に向かって話が進められようとしている。しかし、これも決して上手くいかないと私は考えている。話は逆である。つまり、まず国連が仲介しなければならないのは米、英、仏、露、独、中、それぞれの国々にまたがって存在するわだかまり(問題)を解決する事こそ優先するべき事柄である。そして信頼を失っている国連の権威をまず復権すること、それこそがこの問題の解決の早道であると考えるべきである。 そして、次に日本が果たすべき役割は第二次世界大戦の敗戦国である日本の経験こそが重要な意味を持ってくると考えている。
つづく。
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