与太郎文庫
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2008年11月30日(日) |
無聊の悪夢 〜 伊仲グランドホテルにて 〜 |
http://d.hatena.ne.jp/adlib/20081130 誰かが室内に入ってきて、勝手に小便をしている気配がする。 手を拭きながら出てきた中年男に「なにか用ですか?」と誰何する。 男は、従業員ではなく客だったが、愛想よく答えた。 「このホテルはね、どの部屋の手洗いを使ってもいいんですよ」 「へぇ、聞いたことがないが、まぁいいや」 「おたくも、ひとり旅ですかな?」 「そうです。なんだか退屈だが、街にでるのも億劫でね」 「それじゃ、あたしと手なぐさみでもやりませんか」 「いいでしょう」気がすすまないが、断りにくいなりゆきだ。 男は、すぐに戻って、碁盤のようなものを運んできた。 とても贅沢な造りで、見たことのない合成遊戯ゲームらしい。 碁将棋と麻雀に、花札やサイコロまでも混在している。 「なーに、ルールは簡単です。出目に好きなだけ張るだけでさぁ」 男は、なれた手つきで、遊具を配ると、手前に千円札を置いた。 去太郎も、おなじように数枚の千円札を自前に置く。 遊具を引っくりかえすと、去太郎の千円札は男の前に移動した。 なんど繰りかえしても、去太郎の前に戻ってくる気配がない。 すると男は、こんどは一万円札を張った。 つられて去太郎も一万円札を置きかけて、さすがに躊躇する。 少なく張ってもいいはずだから、さきと同じく千円札を置いた。 すると、やはり負けて、差額を追い銭することになった。 ようやく去太郎は、これが遊びでないことに気づいた。 このまま朝まで続けたら、身ぐるみ剥がされるにちがいない。 男は、去太郎の顔色を察するや、たちまち応変した。 「これで仕舞いますか? それとも、あと一番で終わりますか?」 「それじゃ、あと一番だけ」覚悟をきめて、さいごの見得を切る。 男は、こんどは紙幣でなく、抽選券のようなものを取りだした、 それは「地域振興券」のようなチケット(額面88800円?)だった。 最後の賞品も、男のものになった。 またもや去太郎が、左胸に手をやると、男は笑って押しとどめた。 「おたくは払わなくていいんでさ。つまり政府の低額給付金ですよ」 「へぇ、これがそうなのか」手にとってみたが、さっぱりわからない。 去太郎の人生は、いつものように何が何だか分らないまま過ぎていく。 ┌┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┐ ↓=Non-display><↑=Non-display └┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┘ (以下、無頼の夜・草稿より) むかし、やくざ(氏名不詳の青年)と高利貸と銀行支店長の四人で、 ばくちに興じたことがある。 あれは現実で、こんどは夢だったが、いずれおとらず虚しいものだ。 はじめに支店長が、ついで高利貸が、三万づつ負けて降りた。 そのまま続けたら、去太郎も負けて、やくざが六万円勝ったはずだ。 実際は、去太郎とやくざが、三万円づつ分け合ったところで終った。 なかなか勝負がつかないので、一万円札を一円玉に取換えてみた。 レートは同じだが、どことなく心がもつれるような気分になった。 やくざが「もう止めようか?」と云ったのは、一種の男気であろう。 (*)夢づくし・追記 http://d.hatena.ne.jp/adlib/20080209 造夢と追夢 〜 ふしぎな夢の走り書き 〜 (20081130-1201)
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