与太郎文庫
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2007年03月19日(月) |
父なる神 〜 藪の中の聖家族 〜 |
http://d.hatena.ne.jp/adlib/20070319 あらずもがなのものがたり 〜 すべての生物には親が存在する 〜 Spallanzani, Lazzaro 17290112 Italy 17990211 70 / http://www.mucha-suerte.com/photo/saojosederibamar02.html 大工のヨセフは、許婚者(いいなづけ)のマリアに訊ねた。 「きみは、ぼくのことがきらいになったのかい?」 「いいえ、そんなことないわ、あなたのことを誰よりも愛してるわ」 「このごろ、きみはふさぎこんで考えごとをしているじゃないか」 「いいえ、そんなことないわ、あなたのことは誰よりも愛してるわ」 「ときどき、ためいきをついているのは、ほかの男を知ったからか?」 「いいえ、そんなことないわ、あなたのことは誰よりも愛してるわ」 「それに、最近すこし肥ってきたんじゃないか?」 「そうよ、それなの。あなたとの婚礼の日までに、きっとやせるわ」 「なんだ、そんなことを気にしていたのか。きみは十分きれいだよ」 「いいえ、あなたの妻としてふさわしいように、もっとやせるわ」 しかし、マリアの腹は、だんだんと大きくなっていった。 ヨセフの友人が、ただならぬことをささやいた。 「お前に、友情があるからこそ云うが、マリアに悪い噂がたっている」 「なんだと? マリアはおれにも許さない、天女のような生娘だぜ」 「ところが、通りすがりの旅人にレイプされたと陰口する者がいるんだ」 「だれだ、そんな奴は? いますぐ出かけていって、こらしめてやる」 「それはよせ、おれのお袋が云うように、彼女ははらんでしまったのだ」 「おれはどうすればいいんだ、いまになって彼女と別れろというのか?」 「お前しだいだ、お前が彼女を愛しているなら、その子も愛せるだろ?」 「もちろんだ、いや待て、その子は彼女の子だが、おれの子じゃない!」 「いいか、もしお前がその子を育てないのなら、ほかの男が育てるぞ」 「ほかの男ってだれだ、まさかお前じゃないだろうな?」 「おれはお前の友人だ、しかし、マリアと結婚したい男は大勢いるぞ」 「わかったよ。おれが父親となって、マリアの子を育てればいいんだな」 「そうだ。そうすればマリアは、お前の妻として、つぎの子を産むよ」 「マリアはおれの妻だ、妻の子は、夫の子でもある。そうしょう」 「そうと決まれば、このことを彼女にも伝えなければならない」 「おれが彼女に伝えるのか? なんて云えばいいんだ?」 「おれに任せろ。お前はおれの言うとおり、うんうんと聞けばいいんだ」 ヨセフの友人は、いそいで走り去った。 マリアが夜の星を見上げていると、窓の外から声が聞こえてきた。 「マリアよ、わたしはガブリエルだ。つぎに云うことをよく聞きなさい」 マリアは、ハッとして耳をかたむけた。 「天使さま、なぜあたしのような卑しい娘に、もの申されるのですか」 「マリアよ、お前は、おそれおおくも神の子を身ごもったのだ」 天使の声は低く、マリアの耳から心に向かって、諄々と告げられた。 マリアは、だんだんと深くうなずき、やがて晴々とした表情になった。 ガブリエルは、ついさっきヨセフにも同じことを告げたとも云った。 ガブリエルは、ついに姿を見せることなく立ち去った。 マリアが夜空を見上げると、まるでウィンクするように星がまたたく。 しばらくして、ヨセフが、息せききってやってきた。 「マリアよ、たったいまのお告げで、お前は神の子を身ごもったそうだ」 「そうよ、それなの。あなたとの婚礼の日までに、きっと産めるわ」 「よかったよかった、いますぐ村の連中に知らせてこよう」 ヨセフは、一軒づつ戸を叩いて、口上を述べた。 村中の者は「それはよかった、ぜひ婚礼に参列したい」と答えた。 あの日から275日後、みんなに祝福された“神の子”が生まれた。 (おわり) ── ナザレのヨセフナザレのヨセフないしイオシフは新約聖書に登場 するマリアの婚約者、夫にしてイエスの養父。職業は大工であったとい う(マタイ13:55)。キリスト教の聖人で、祝い日は3月19日。 ── 《Wikipedia》 http://q.hatena.ne.jp/1161040554 わたしは誰でしょう? http://q.hatena.ne.jp/1176906807 神は存在するか? ┌┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┐ ↓=Non-display><↑=Non-display | └┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┘ <2007年4月22日(日) 19時05分>
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