与太郎文庫
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2004年02月29日(日)  ハーメルン 〜 はてしない物語 〜

 
http://d.hatena.ne.jp/adlib/20040229
http://www.enpitu.ne.jp/usr8/bin/list?id=87518&pg=000000
http://www.enpitu.ne.jp/tool/edit.html
 
http://www.enpitu.ne.jp/usr8/bin/day?id=87518&pg=20040229
 Ex libris Awa Library;写生する少年 by Awa, Masatoshi
── 《素描・第一号 19520401 さヾなみ同人会》
 
 ハーメルンが街かどに立ってから、数時間のちに一日が暮れた。
 翌日、ハーメルンが街かどに立つと、ひとりの子供が通りかかった。
 ハーメルンは、バイオリンを取りだして弾きはじめた。
 ♪〜♪♪〜♪♪♪
 子供は、はじめて聞くふしぎな音色に、しばらく耳をかたむけていた
が、翌日おなじころに、もうひとりの子供を連れてきた。
 そこでハーメルンは、昨日とおなじようにバイオリンを弾きはじめた。
 ♪〜♪♪〜♪♪♪
 つぎの日、またつぎの日には、数人の子供たちが集まってきた。
 
 一週間がすぎると、ハーメルンはバイオリンの代りにスケッチブック
を取りだして、何やら描きはじめた。
 子供たちは、何が描かれるのかと、みんながスケッチブックをのぞき
こんだ。
 ハーメルンは最初の一枚に「くも」を描いた。
 子供たちが「くもだ!」と叫ぶと、つぎの一枚に「りんご」を描いた。
 子供たちが「リンゴだ」と叫ぶと、つぎの一枚に「くじら」を描いた。
 子供たちは、こんどは顔を見合わせた。彼らは鯨を見たことがない。
 そこで、ハーメルンは最後に「?」と書いて、どこかへ立ち去った。
 
 ハーメルンが街かどにあらわれてから数週間後、ひとりの男の子が、
ポケットから「石ころ」を取りだして、ハーメルンにさしだした。
 ハーメルンは「石ころ」を自分のポケットにしまうと、バイオリンを
取りあげ、男の子に向かって一曲弾いた。
 ♪〜♪♪〜♪♪♪
 
 翌日、ひとりの女の子が、ひとひらの花をもってきた。ハーメルンは、
だまって胸のポケットに刺したまま、スケッチブックを取りだし、その
花を描きはじめた。女の子は花と絵を交互にのぞきこんだ。
 ハーメルンは、花の絵を描きおわると、そのページを破いて、女の子
に手わたした。女の子は、歌いながら帰っていった。
 ♪〜♪♪〜♪♪♪
 
 つぎの日、またつぎの日から、十数人の子供たちが順番にプレゼント
を持ってきた。パンを持ってきた子には、半分切りとって残りを返した。
 親の金を盗んできた子供もいたが、コイン以外は受けとらなかった。
 
 ハーメルンが街かどに立ってから数ヵ月目のある日、ひとりの少年が
倒れているハーメルンを発見して、大人たちに知らせた。
 ハーメルンは、皆の見ている前で、バイオリンを少年に渡してから、
目を閉じた。そして死んだ。青年たちが老人を葬った。
 
 バイオリンを贈られた少年は、ひとりでバイオリンを弾いてみた。
 ♪〜♪♪〜♪♪♪
 
 バイオリンを弾く少年は、青年になり、大人になり、やがては老人に
なると、街を出ていった。
 
 ひとりの老人が、見知らぬ土地の街かどに立っていた。
 老人は、そばを通りかかった子供に、バイオリンを弾いてみせた。
 ♪〜♪♪〜♪♪♪
 子供は、はじめて聞くふしぎな音色に、しばらく耳をかたむけていた
が、翌日おなじころに、もうひとりの子供を連れてきた。
 そこで老人は、昨日とおなじようにバイオリンを弾きはじめた。
 ♪〜♪♪〜♪♪♪
 つぎの日、またつぎの日には、十数人の子供たちが集まってきた。
 
 誰かが「お前は誰だ」と聞くと、老人は「ハーメルンだ」と答えた。
「どこから来たのか」」と聞くと「ハーメルンから来た」と答えた。
「これからどこへ行くのか」と聞くと「ハーメルンへ」と答えた。
「ハーメルンは、どこにあるのか」と聞くと「わからない」と答えた。
                 (20040229 初稿 0320 改稿)
 
 この創作童話“無限伝説”は、与太郎の処女童話である。
 ハーメルンは地名(ドイツの小都市)、人名をハーメルと呼ぶ。
HAMELN → http://www.visit-germany.jp/default.asp?ID=320
 
 長岡京室内アンサンブルのヴァイオリン奏者・森 悠子のステージに
啓示を受けて、一気に書きあげた。ヴァイオリンを弾く青年の姿には、
本宮先生のイメージがあり、路上の老人は俳優・天本英世に重なる。
 絵を描く姿は、金谷先生兄弟と与太郎自身がオーバーラップしている。
(リンゴは、少年期以来のセザンヌのゾラへの友情をもとにしている)
 
 下記の諸作品を合成している。
 


Petros《クオ・ヴァディス Domine Quo Vadis ?(主よ、何処へ)0064-0067》
Grim,Jacob Ludwig Carl & Grim,Wilhelm Carl《ドイツ伝説集》
12840626 ── 阿部 謹也《ハーメルンの笛吹き男 19881201 ちくま文庫》
Melville,Herman《白鯨 Moby Dick,or The White Whale 185110.. London》
Dehmel,Richard/森 鴎外・訳《海の鐘 19150905 阿蘭陀書房》
Stern,Isaac 独奏《屋根の上のヴァイオリン弾き 1971 America》映画
 他に、ゲームソフト《ハーメルンのヴァイオリン弾き》もあるらしい。
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 天本 英世 俳優 19260102 佐賀 北九州 20030323 77 /異説(籍)19261220 福岡 ?

 
 東京大学法学部(中退)。映画では岡本喜八監督「暗黒街の対決」の殺
し屋役をはじめ、ほとんどの岡本作品に出演。細身の長身で、あくの強
い役柄を演じた。「ファンタスティックス」「天守物語」などの舞台や、
人気テレビ番組「仮面ライダー」の死神博士役で知られた。「平成教育
委員会」などバラエティー番組でも活躍。スペイン通で、長年詩人ロル
カの詩を舞台で朗読した。著書に「スペイン巡礼」など。
 
── 《長岡京室内アンサンブル 20040227(金)19:00 倉敷市芸文館》
http://www.musicinfo.com/kuracon/concert/040227krgb/040227krsh.html
 
── 初老の男がみすぼらしい身なりで堀の縁に立って森に向かって一
心にバイオリンを弾いていた。堀の横にはリヤカーが置いてあってこれ
が彼の住居であった。── 西村 眞悟《僕の生い立ち 10 疾風怒濤前夜》
http://d.hatena.ne.jp/adlib/20080109
 クロイチェルの残響 〜 東儀家と西村家の人々 〜
 
── 少年時代の与太郎は、道端で絵を描く人を見つけると、その背後
から何時間も眺めつづけた。たいがいの大人は振りかえって、こうたず
ねる。「きみは、絵が好きかい?」
http://d.hatena.ne.jp/adlib/20060606 絵空事 〜 ダゲール以後の画家たち 〜
 
(20040320-20111010)
 


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