http://d.hatena.ne.jp/adlib/20000825
　
　絵本《桃太郎》の旗に画かれた桃は、先が尖っている。そんな桃など
見たことがない、という視聴者からの質問に答えるべく、テレビ朝日系
《探偵ナイトスクープ》が調査する（大阪制作）。
　まず、講談社に問い合わせ、画家・野村たかあき氏に電話をかける。
　野村画伯は自信たっぷりに「私は先の尖った桃を見て描いた」という。
　つぎに町の果物屋で訊ねると、女主人は「見たことがない」という。
「桃トマト、ならありますけど」
　先の尖った真赤なトマトは、見るからに桃ではない。
　そこに通りかかった老婦人が「子供のころ食べた記憶がある」という。
　そこで、「花らっきょう」で知られる桃屋本舗の本社を訪ねて、営業
部長に名刺を見せてもらうと、たしかに先の尖った桃のロゴ・マークが
印刷されていた。
「部長さん、実物を見たことありますか？」と問えば、
「私は見たことがないが、大正九年創業のころには、あったのでは」
　つぎに、桃の産地である岡山県の農業試験場に出かけて、絵本を見せ、
「こんな桃は、ありますか」と聞くと、すぐに農場へ案内してくれた。
「これは“天津水桃”といって、熟しても酸味のあるのが特徴です」
　レポーターが食べてみると、なるほど酸っぱい。しかし、まちがいな
く先が尖っている。なにより桃色である。
　結論は、こういうことらしい。
　むかしから“天津水桃”は存在していた。しかし戦後になってから、
先の尖ってない品種、とくに“岡山の白桃”が改良を重ねて、一躍有名
になって他の品種を追放してしまった。かくて“天津水桃”は果実市場
から姿を消して、わずかに農業試験場の一隅で保護されている。
　桃太郎の鬼退治になぞらえると、桃太郎を生み出した桃は、のちのち
ほかの品種によって征伐され、「おそれいりました」といって降参して
いたのである。したがって今後は、桃から桃太郎が生れることはないで
あろう。
　
──　《探偵ナイトスクープ 20000825 23:09-00:09 ABC-TV》
　
　
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↓＝Non-display><↑＝Non-display 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｜
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　(20000827-20070818)
　

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