与太郎文庫
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1969年04月01日(火)  月刊アルペジオ No.1

 
http://d.hatena.ne.jp/adlib/19690401
 
 マイ・ポート 〜 今月のPR 〜
 
 人口百万の都市で、毎年自動車が十万台売れていくと、赦年間で一人
一台という、たいへんな時代がやってくる。タクシーの運動手諸兄は、
パリッとした大型車で通勤して、チマッとした小型の営業車で働くよう
になるかもしれない。タクシー乗り場は、有料駐車場に進出して、マイ
・カーを乗り捨てたお客を待つ、最近はどうも、クルマの前途に明るい
材料が少なくなってしまった。
 
 マイ・カーが流行しはじめた頃は、何が何でもドライブに出かけなく
てはならなかった。ガソリン・スタンドで買った地図をひろげで、行く
先は結局みんなと同じ、後から後からやってくるので、どんどん走らな
ければならない、ハイキングのつもりが、マラソンになってしまった。
 要するに、ドライブってものが何だったか、みんな判らなかったんじ
ゃないだろうか。高速道路ができたというのでオニギリを作って出かけ
た一家があった。眺めもよし、時刻もよし、というので、車を止めて、
グリーン・ベルトの丘で、会食をはじめた。高速パトカーが驚いてやっ
できた。アブないじゃないか、といわれでも一家は、なぜ昼メシを食っ
てはいけないか、とたずねたという。
 
 原子力潜水艦ともなると、ちょいとひとやすみしょうとしでも、いろ
いろ都合の悪いことになるが、マイ・ボート、マイ・イカダなら一向に
さしさわりない。
 
 バルサ材のイカダ《コソ・ティキ号》で南米ペルーから、南太平洋の
ポリネシアまで漂流するという、大冒険に成功したのが、ノルウェーの
トール・ヘイエルダール博士。人類学者であるので、こんどは、古代エ
ジプトのイカダを、そっくり複製して、各国の有志を募って、またまた
大西洋漂流の掛二出るという。《コソ・ティキ2号》こそは、世界平和
の実験室なり、と大冒険なのだろうけれどもいかにものんびりした話績。
 
 オニギリに続けて考えてみると、最近のインスタント食品の普及は、
もう大変な勢い。作家の山口瞳という人が、以前こんなことを書いてい
た − ちかごろ、マヨネーズといえば例の歯ミガキみたいなチューブを
思い出す。あれがデンと食卓に乗っているのはかなわない。南極探検に
来たような気分にさせられる。妻君に、ここは南氷洋じゃないんだゾ、
と怒鳴ってみたくもなります − 判るなあ。
 
 さていよいよPR。ヤマハ・ポートは45,000円から各種あります。
(A+N)
http://d.hatena.ne.jp/adlib/19690401
── 《月刊アルペジオ No.1 19690401 十字屋楽器店》P11


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