与太郎文庫
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1966年01月28日(金) |
《AT 19660128 edited by Awa Library 》 |
http://d.hatena.ne.jp/adlib/19660128 AT 7:30AM●歯ブラシくわえて眺める俺の顔、きょうもこいつでいくぜ ●もぐもぐやりながら新聞を読むね、プロレスの記事がいちばんだ、た ち上ってベルトをしめる気分は良好●隣じゃ女房とガキに見送られてる よ《あなたお早くね》《パパ、また来てね》ガキが眠ってから帰るんだ な、テキは。 8:30AM●満員電車では知らない人に話しかけよう●ラッシュ・コー ト着てる奴に《トイレット・コートを考案中ですが、ご意見を》●ダス ター・コートには《スモッグてのは重くて、ひざのあたりを這ってるん ですぜ》●レイン・コートの御婦人に《化学センイてのは通気性に欠け るなんて、ほんとですか》●スリー・シーズンときたな《三冠王を三度 も逃がすと、散冠王ですな》 9:30AM●ゆったり坐れるのは遅刻したとき、考えごとできるね。電 車なんかくそくらえだ、ベッド〜トイレ〜台所〜玄関を出たら○○課入 口、仕事終って出口を出ると《あーら○さん、お早いのね》帰りはやっ ぱりタクシーか●度胸きめて本読む奴もいる<剰余価値論>おやあいつ はきのうエロ本読んでたぜ。 10:30AM●会議では真先に発言する《ではないでしょうか》これで30 分は他の連中がやってくれる。するとまた発言する《以上の議論はそも そも何を起点とすべきでしょうか》また30分で、おしまいに《問題の本 質が私にも判りかけた気がします》●電話が鳴ると生きがいを感じるね 《はいはい、モシモシ、復唱いたします。30ヶ入りを30ダースで30日ま でに、もちろん三重梱包いたします、サンキューサー》 11:30AM●何でも感心する同僚が《おどろいたなぁ、俺たちの生活て のは釜ヶ崎以下なんだってよ、月収が少くても月賦も交際費も預金も保 険もいらない、胃の中に入る金高はおんなじか、それ以下ってわけだ。 おどろいたろ、おーい昼メシは今日はヌキだ》リクツじゃ負けないのが 割り込んできた《お前と俺は一年前同じ2万円の時計を買った。ところ で俺はこいつを毎月質草にしてるね、お前は買ったきりだ。そこで、こ んな計算はどうだ、20,000+3,000<質値> ×1.09 <利率> ×12=59,240、 つまり俺の時計はこの一年でざっと三倍の働きを俺のためにしてくれた ってわけだ、おーい昼メシは天ぷらうどんだ、カケでな》 12:30PM●《要するに》と必ずいう男がいった《両者の意見は共通の 場があるはずだ、だから釜ヶ崎へ行こうとは考えないし、質屋のオヤジ に信用されることを誇りには思わない。では何がわれわれの生活と意識 を支えているか、ケンゲル氏いわく、汝のあつかう金高で食費を割って おまけに 100倍すべし。あつかう金高てのは例えばわが〇〇部の年間予 算の頭割りでもいいさ、われわれの食費のパーセンテージが低ければ低 いほど、われわれはすばらしい。残念なことにあつかうってことが、自 分のために使うってことじゃないんだな》●さて俺は、喫茶店へ行って、 あの子をくどいて、モーニング・サービスの残りにでもありつくか。 1:30PM●俺が行かなきゃ通じないって用件もあるね。《実はわたく しのカン違いで、どうも、いやはや》●人に会うときは、サンパツがい ちばんだ《センパツなさいますか》《アトでやってくれ》●デパートに 寄ってエレベーターに乗ってみよう《お願いいたします》《かしこまり ました》何べん聞いてもいいもんだ●甘い甘いレコード買って《君今夜 聴きにこない》《新しい針はいかが》●映画館じゃモギリ嬢が退屈して るよ《二人は結局どうなるの》《結婚しないわ》《フーン、俺もその方 がいいと思うよ》 2:30PM●サンドイッチマンと仲良くなってはいけない《ダンナ、小 便してくるからこれ頼むよ》●コーヒーはもしかしたら先方でごちそう になるぞ、番茶でもいいや《〇〇さんあいにく出張中ですが》《さよう で、ではまた》隣の喫茶店に入るのもしゃくだね●バスに乗ったよ《ど ちらから》《二つ前の停留所から》《二つ前ってどちら》ソプラノの バス・ガールめ。 3:30PM●コーヒー頼んだら、おしぼりお盆にはじまって、水のコッ プに紙の下敷、さとうにミルクに、マッチ灰皿、アーモンドのかけらま できて呆然としていたら、週刊誌と伝票を置いてったよ●レジでゼニ払 うと、マッチ、釣銭レシート、おや交通事故の保険申込書までくれたね まてまて、この用紙を15枚ためるとヘルメット進呈だとよ。 4:30PM●サイフ拾っちゃった、十年後のボーナス相当だ。落し主が 喜んで、礼をするってぇから断わったね。そのかわり、といっちゃ何だ が、私はこういう者だ、毎月2割づつ返して2割が利息だ。先方は考え て、ようがす手を打とう、ところであんた何に使うのかね。いやアテは ないんだ、こんな取引き、一度やってみたかったのさ。 5:30PM●今日も仕事は終った。水銀灯と夕空が、おんなじ明るさに なると夜だよ。夜ってぇと俺は何回目かな《ねぇ、きみは何回目》《ま ぁ、エッチね》女ってのは、どうしてこうなのかね。1年 365、10年 3,652、20年で 7,305、逆に 10,000 回目は27才4ヶ月、20,000回 は、ふーん55才、か●どんな歩き方しても、くれるのはビラだ。十枚 もたまると、どうしてもっと柔かな紙にしないかと思うね<ズバリ、ワ ンセット〇〇円〉〈イャーン、モット、これで〇〇円〉〈手入れじゅう ぶん〇〇劇場〉まさか。 6:30PM●電話かけるね、リーンリーン呼んでも出ないしかけだ。3 回鳴ると〈すぐ帰る〉5回で〈少し遅くなるからヤキメシにしといてく れ〉7回で〈オニギリにして冷蔵庫へ〉●たまにゃレストランで、らし いもの食いたいね。《今日の特別料理は何かね、ローストチキン? 残 念だが好きじゃない。トリメシにしょう》●いんぎん無礼には腹が立つ 《マネージャーを呼べ》《ただいま》《うん、トイレどこ?》 7:30PM●御指名た、ありゃ何だい。ホステス30人で 360倍すれば1 万ちょっとだな、よし全部ひきうけた《あーらゴージャスねえ》てんで、 入れかわり立ちかわり、おちおち飲めやしねえ。つまり俺はひとりでし んみり飲みたかったんだ●仏頂面してると《どんなタイプの子がよろし いの、髪が長いとか、色が白いとか》めんどうだから《短大卒はいない か》来たよ、短くて太いのがね●バーにいくと《あなた初めてじゃない わね》隣の酔っぱらいがぼやいてるよ《俺はいつだって初めてねってい われんだ》 8:30PM●気にいらない女性にはアメリカの実話を。《トムって男が、 ジュリーに惚れちまった。プロポーズしたけど先様には婚約者がいたね、 トムはしっこい失恋男だから、たいへん。ジュリーがあわてて家を建て たら、両隣を日夜往ったり来たりしてトムの想いは、ジュリーをノイロ ーゼにしたよ。夫に追い出されて途方に暮れてるジュリーに、再びトム のプロポーズだ。雨や嵐の勢いで、とうとうものにしちゃった、処は ネバッタ州でありました》 9:30PM●おしゃべりをサービスだと思い込んでるのには帰りにこう いってやりたいね《君は女房そっくりだ》●おしまいまで何にもいわな いのもいるよ、文学少女かもしれないぜ。アパートにひとり帰る夜は 日記なんか書いてるよ〈今宵の男性もあたしを魅了し得なかった〉 10:30PM●迷った時にゃ、ちょいと当ってみる《帰って読みたい本も あるんだが》《ねぇおしえて》《非忍術》じゃあたしが、とかね●決心 しても、先様の御都合だってある《明日デパートで買物の約束があるの》 《妹が訪ねてくるの》《髪を洗ってから寝たいの》《これから集金に行 くのよ》《帰りにアンネ買わなきゃ》ヤーメタ。●頭をスッキリさせる にはダジャレを考える《スコッチてのはガブ飲みしちゃいけないよ、す こッチづつ飲む》《じゃワインは、わいン談しながら飲みます》《たと え火の中水の中、お前のためならタンシン飛び込む覚悟だぜ。チョーシン の彼氏だって、そんなの放っトケイ》 11:30PM●看板です、というから出がけに1万札くれてやったね、女 は感激しちゃった。どこまでもついて来るんで、もう一枚やるから帰ん なてぇと、それでも来るんだな。まったく女ってのは、ばかだな●ラー メンなんか食ってる時に、あんがい本音を吐くもんだ《ひどい男もいた わ、ラーメン代しかないのに、あたしを夜食に誘ったのよ》●ホテルで 宿賃払いかけたら《お済みになってからいただきます》てやんだ、済む かどうか、てめぇの知ったことじゃねぇや。 0:30AM●初戦はいつもくたびれるね、気をとり直して例のヤツを探 していると《さっきのが入ったままよ》●進むにつれて戦況は複雑だ、 右左はともかく、いざって時はサヤを払って刺し違えるようよ●壁にカ ーテン、心は鏡だ。こいつにはギョっとさせられるね、こないだも素っ 裸でメガネかけた野郎がこっち見てやがんの。 1:30AM●■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 2:30AM●犬も歩けば棒にあたる、か《今宵はつかねぇ》なんてぼや いてると野良犬までよけやがる●向うからインチキな野郎がきて、じろ じろ見やがるんで《ナンダ》ってったら、奴は《ダンナ》ときたね● 《知ってるんだぜ、オレ》《知らないっ、カマトト》●電話ボックスあ ったから、知らないホテルにかけて《急用だ、松の間につないでくれ》 たいがい男が出るもんだ《野郎、おいらのスケをよくも》ってんでガチ ャリ●タクシーは夜だといやに親切だぜ、手もあげないのにスーっとき て、《ダンナ、お楽しみでしたね、どちらまで》帰りゃいいんだろ。 ────────────────────────────────
◆五人組(後日談) 斉藤夫人に再会した夜、タクシーに行き先を告げると、運転手いわく、 「これから、お楽しみですかい? わしらの若いころなんか、たいがい “五人組”の厄介になったもんですわ」「五人組?」 運転手はハンドルから左手を離して、五本の指をニギニギしてみせた。 このあと、おそらく話がはずんだはずだが、思いだせない。 《点展・第二号》が出ないかわりに、田村忠彦君との合作で創作小噺を まとめた。ATは二人の頭文字であって、ふだん酒場で話していたこと ばかりである。水銀灯の明るさが、空の明るさと同じになると夜だ、と いう比喩は、当時アマチュア・カメラマンだった金谷先生に教わったが、 高校文芸部の後輩・山本邦彦君(仏文学者)の返書でほめられた。 サラリーマン社会の友人たちを冷やかにからかっているようで、内心 は自嘲である。こんな日々の過ごしかたでいいわけがない、と思いなが ら、もっぱらナンセンスに淫した。 (Day'19881008) 署名・奥付いずれも記載なし。仮の日付に、田村君24才の誕生日を あてておく。 《AT 19660128 edited by Awa Library》 つぎの英文表記も、彼の翻案による。 “These pictures (voices and sounds) are preserved in Awa ibrary” 《トムとジュリー》は当時のテレビ・アニメ、いまでは stalker ? ── stalk /そっと近づく/(獲物などに)忍び寄ること。いばった歩き方=[英]stork ── 《ライトハウス英和辞典 1987 研究社》P1372 ── “STALKER”《ストーカー規制法 20000813 山陽新聞》0518成立
Levi-Strauss, Claude“構造人類学”人類学 19081128 France /〜《野生の思考/親族の基本構造/悲しき熱帯/神話学》 Ende,A.Michael 作家・絵本画 19291112 Deutschland 19950828 65 /モモ・シリーズ゙〜《モモと時間どろぼう》*閏年を数えない。 養老 孟司 解剖学 19371111 鎌倉 /東京大学教授/北里大学教授〜《唯脳論》 桂 枝雀 2 籍=前田 達 落語“英語落語”19390813 兵庫 大阪 19990419 59 /19990313 首吊←桂 小米〜《ロボット・シズカちゃん》
>> 女性は典型的な物体であって、重量は通常数十キログラムに達する。 これは、交換財としては重過ぎる。/ゆえに、現代社会では交換財とし て、あまり有効ではなくなった。そのため、レヴィ=ストロースは、女 性の交換財としての役割を、未開社会において、あえて「発見」しなく てはならなかったのである。/言葉が脳の機能であることについては、 よほどの臍曲がりでない限り認めるであろうが、お金はどうか。お金に まつわる全ては、じつはヒトの作り出した約束事である。私の給与とは、 誰が決めたか知らないが、いまでは銀行の計算機に記された数字である。 これが脳の機能でなくて何であろうか。(P022-023) (略) ヒトは「ロケットと同じ原理」で直立している。落語家の桂枝雀はそ ういう仮説を立てた。前に倒れそうになると、息を吐く。後に倒れそう になると、あわてて息を吸い込む。ある男が、この「仮説」を実証しよ うとした。証明のために、しばらく息を止めて立っていた。やがてこの 男は、たしかにバッタリ倒れた。「実証」とはしばしばこういうもので ある。もちろん、かつてヒトは、実証され得ない観念を振り廻し、他人 に多大の迷惑をかけた。歴史はそういう教訓に満ちている。それを過ち だと考えるか。それともヒトとは「そういうものだ」と考えるか。私は 後者である。 ── 養老 孟司《唯脳論 19890925 青土社》P026 <<
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