与太郎文庫
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1957年04月08日(月) |
落太郎 〜 テっちゃんのホームルーム 〜 |
http://d.hatena.ne.jp/adlib/19570408 新しいクラスの担任は“テっちゃん”こと高橋 哲郎先生である。 最初のホームルームは、いつもどおりに学級委員の選挙だった。 落第生が選ばれた瞬間、教壇のテっちゃんは大声で叫んだ。 「この選挙は、やり直しだ、みんなもっと真面目にやれ」 落第生も黙っているわけにはいかない、挙手して立ち上がった。 「ボクが、学級委員になると、なにか具合が悪いんですか?」 教室は、意外な展開にとまどって、静まり返った。 テっちゃんは予想しない反論に虚をつかれ、壇上で立ちつくした。 返答がないので質問者ともども両者は対峙した。 こうして沈黙の数十分が経過し、ベルが鳴り終わると、テっちゃんは 出席簿を抱えて職員室に戻った。 選挙は、したがって有効だったのである。 翌日、文芸部の顧問“フクちゃん”こと下村福先生に声をかけられた。 「キミ、なんでボクが役員になったらいかんのか、言うたそうやな」 「もう、耳にはいってますか?」 「そらもう、早いもんや」(*) これで、職員会議から再選挙を命じられるほどのことにはなるまい。 もともと、器楽部の評議員に選ばれることが判っていたので、生徒会の 規約(兼任不可)どおり自動的に、学級委員を辞したのである。 つぎの新議長・井上君が、遠足の日を何曜日にするかという議題では、 採択の結果、七曜日をそれぞれ九人づつが支持した。困った新議長は、 さきに委員を辞した落第生に助けをもとめたので、信任をうけた落第生 が壇上に上り、決戦投票にいたるルールを説明した。 めんどうな手続きを踏んだあげく、こんどは三十二人対三十一人に分 かれて、次のような結果となる。 63=7×9=32+31 すると、テっちゃんが突然またもや壇上の落第生を押しのけて叫んだ。 「やり直しだ、たった一人の意見で決めるなんてことがあるもんか」 落第生は、黙ってもとの席にもどり、以後の成り行きを観察した。 このあと(よく思い出せないが、みんなが協力して、あるいは延々と つづく投票にウンザリして)テっちゃんが納得する結果になるように、 按配しながら挙手したのであろう。 多数決では、しばしば最後の一票が決定する。これを避けるために、 過半数でなく三分の二以上としてみても、原理は変らない。 最後の一票は、あるいは最初の一票かもしれない。ここには時間的な 概念がない。つまり集団の思考過程は変化しないことになっている。 しかし、集団の意志は(ほとんどの場合)変化しながら移行するはず である。もし、このことを認めないなら、投票前の論議は無駄であり、 他人の主張に耳をかたむけることなく、当初の意志表示が繰り返されて 決選投票も成立しないのである。 (Day'1995・・・・ 19970504 19990111 19990706) …… タイム誌は「われわれは子供のころから民主主義について学んで きた。しかし(過半数がない)引き分けのとき、民主主義に何が起るか は教えられなかった」と書いた。 ── 《迷走ドラマ最終幕 米大統領選挙 20001127 山陽新聞》
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