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人物紹介


勘違いしてもいいですか?
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思いがけないK先輩の言葉に、私は舞い上がりました。

「はいっ 私はいつでもいいですから。先輩も色々と無理しないで頑張ってくださいね」

嬉しくて嬉しくて仕方がありませんでした。

「おお。じゃ、お前もバイト頑張れよ。じゃぁ、またな」

K先輩はそう言って電話を切りました。
受話器を置くと、私は嬉しさが抑えきれず、手で顔を覆うようにして「きゃーっ」と声が外に漏れないように叫んでいました。

また先輩に誘ってもらえるんだ。
私に会ってくれるんだ。
私のこと、嫌じゃないんだ。
少しだけ、先輩に対して自信が持てた気がしました。

この喜びをすぐにでも誰かに言いたくて言いたくて仕方が無くなりました。
翌朝になれば会えるというのに、私はそのままRに電話をかけました。
電話に出たRは、家族と夕食の最中で、あまり会話の出来る状態ではありませんでしたが、私は一方的に興奮状態で報告をしました。
うん。うん。と聞いてくれたRは、最後に「良かったね。」と笑って言ってくれました。

家に帰っても、私の興奮状態は治まりませんでした。
頭の中では電話を切ってからずっと、

勘違いしてもいいですか?

という言葉がグルグルしてました。

一緒に居て、嫌じゃないんだと勘違いしてもいいですか?
並んで歩いても良い女だと勘違いしてもいいですか?
会いたいと思ってもらえる女だと勘違いしてもいいですか?
少しは楽しいと思ってもらえてると勘違いしてもいいですか?
好かれていると勘違いしてもいいですか?

その時の私はまだとても素直で。
「忙しい」と言う言葉を「大変なんだ」と素直に思う事ができました。
だから、余計に嬉しかったのです。
忙しい中で私と会う時間を作ってくれる。
それは、凄い大変なことなのだと思っていました。
だから、少しだけ。勘違いしてもいいんじゃないかと。
自分は特別なんじゃないかと。
そう、思いたかったのです。

少なくとも、先輩に嫌われてる訳じゃない。
そう自信が持てた事で、私は幸せな気分のまま次に先輩に会える日を楽しみに待てるような気がしました。
以前は、声が聞きたくて抑えきれずに電話をし、電話をしては自己嫌悪になり、不安になってはまた電話をしの繰返しでした。
上手く行かない事にイライラして、何度もK先輩をあきらめようとして電話をするのを止めたりもしていました。
でも、この日以降、電話も忙しい先輩の邪魔をしないようにかけませんでした。
かけないでいられる自分が不思議なくらいでした。
少しだけ自信が持てた私は、先輩が好きな私で不安もなく安定していました。

6月に入ってすぐ、久しぶりに先輩に電話しました。
バンドは辞めてしまったと言ってましたが、その代り夜遅くまでのバイトが入り、終電で帰宅する事も多いと教えてくれました。
私が電話をした日は、ちょうどバイトが無い日で、「タイミング良かったよ」と言われました。
また、しばらく電話もなかなか出来そうにない状況になってしまいましたが、タイミングが合ったという、それだけで物凄く嬉しくなりました。

一ヶ月後には、先輩の誕生日でした。
会えない間、何か作ろうと思い、翌日友達と相談しながら買物に行きました。
結局、冬にセーターを上げたからという理由で、サマーセーターを編むことにしました。
時間が沢山あったので、出来栄えが良くなければまた他を考えればいいやという気楽な気持ちで編み始めました。
私の頭は寝ても覚めても、K先輩で一杯でした。

先輩と電話をしてから3日後。
思いがけない事が私を待っていました。
その日は、クラスメイトのM子と一緒に学校を出て、駅に向って歩いていました。

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「恋愛履歴」 亞乃 [MAIL]

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