わたしは流行のおようふくがすきではありません どうしてかわからないけれどすきではありません 風にふわふわする長いスカートとかジャンパースカートとか ちょこっと留めておくブローチとかまあるい感じの襟とか コットンのおようふくとかエプロンドレスとか そんな 100年も前だったらスタンダードだったとおもうおようふくが すきです
100年前だったらみんな ペチコートを着てボンネットをかぶって長いスカートを履いていました
流行なんてその程度のものでしかありえません
けど
おようふく。 わたしのすきなおようふく。
それはとても目につきやすいのでいろんなひとが わたしのことをわらいます それはとても指摘しやすいのでいろんなひとが わたしのことを未熟だといいます 25歳の女の子らしくないといいます おまえはもう少女でないにも関わらず そのようなものを着るなといいます 現実から逃げているといいます すべてが中途半端だといいます なにかもかもできない子どものままでいたいのだと わかったようなことをいいます
私の好きなおようふくを少女服とかんちがいしている たくさんたくさんの男のひとたちへ あなたの身につけているものは15歳のころと一体どれほどの 変わりがあったというのですか
わたしのこころはあなたがたのことばでぼろぼろになって そうしてさいごにあなたがたは もしもこのことばで傷ついたらごめんよと笑って言うので わたしはもうこの涙をどこへやったらいいのかわからなくなってしまいます 人を傷つけるために研いだ刃なら自分の胸に突きとおすくらい 覚悟を持って振りかざしてたちむかうべきだとおもうのです さいごに「傷つけていたらごめんね」なんていうのは卑怯だと思うのです 吐き出したことばの責任は謝罪のことばで帳消しにはできないのです
わたしのこころはぼろぼろです なにを身につけたらいいのかわからなくて わたしのこころはむきだしで わたしのからだはむきだしで 血のまじった液体がじわじわと染み出てくるのを 舌で一生懸命なめながら それでも、いたくていたくて、いたいから もうなみだも出ない
目の前に並ぶひとつひとつ一枚いちまい わたしがえらびとってつかみとってきた私をつつむ衣を 破り捨てて笑うあなたはそれで満足ですか わたしがこれをすべて焼き捨てたら そうしてごくふつうのそこらじゅうにあふれているお洋服で身を包んだら それでみんなは満足するのですか もうわたしを指差して少女ごっこをしているキチガイだと いちいち刺し殺さずにいてくれるのですか
だからわたしはそのおようふくをぜんぶ捨てたい気持ちにかられます ただ人の中にうずもれて目立たない人になりたくてこれ以上 ぼろぼろのきもちになりたくなくて
でもその一方でわたしを止めている糸はひとつ
「自分の着たいおようふくさえわかんないようなやつには戻りたくない」
わたしを踏みつけてくれたひとへ わたしを刺し殺してくれたひとへ たくさんの憎しみと 捨てきれない愛をこめて それでもあなたの言うなりにはなりたくないと 血だまりのなかから
10月31日 深夜 真火
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