『 hi da ma ri - ra se n 』


「 シンプルに生き死にしたかった 」


2002年05月19日(日) 「走る体」


走り出したい。


走り出したい。
どこかへ。
ここじゃないところ。

どこでもないところ。

そんなところどこにもないって知っている。いやというほど
知っているけど。
だけど。

走り出したい。
いらないものを殺ぎ落として。
ぜんぶ、投げ捨てて。


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 「石の羊」


 色が
 めまぐるしく渦巻いて踊りくるっていくのが
 みえて、そのまま

 もやが出ていて
 空一面にまで、手ごたえのない触手
 ひろげている

 そう、
 あなた、そんなにも
 広いくせになにも持たないの
 さびしくないの。

 顔をそむけたまま返答を待っていた
 猫の陰に走りこんで
 人のこと、伺っている。

 綿ぼこりになった
 リアルの切片が切れ切れに降って
 あなたのこと取り囲んだ
 拾い上げた
 ほかのもの目に入れないように
 ひとつの色。

 そう、あなた
 そんなにも広くて大きすぎて
 包まなかった
 なにひとつ
 すきまひとつ、与えないほどの、なまぬるい
 やさしさが。
 

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いつだったか、
真夜中に走り出した日があったの。
そとを見たら月があかるくて
振り返ればなまぬるいやさしさがあたしを包んでて
なにもなくて
大声で叫んだ。

なにもないやさしさがあたしを包んでた。
いらないがらくたがそこらじゅうにちらばってた。

玄関の鍵をあけて外に飛び出して
走った。
思いつくところがなくて
ほかになくて
学校まで走った。

やさしい思い出のあるところ。

コンクリートのかけらが突き刺さった。
夜のなかに突っ立ったごみ焼却路、知らない場所みたいだった。
前触れなくがさがさと鳴るしげみも誰も居ないから
こわくなかった。

だけど。

校舎の外の非常階段、
はだしの足の裏につめたかった。

月の光が
目につめたかった。


つめたかった。


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走り出したい。

どこかへ。


ここじゃないところ。

どこにもないところ。



つめたくないところ。


いらないもの、ぜんぶ投げだして
ぜんぶ、殺ぎ落として
あたしのこと包むこのなまぬるい生半可なやさしさ、無力な、重力の、思い、










バイバイ。



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