2002年06月21日(金) |
パン工房『カモフラージュ』 |
朝から小雨が止まない日曜日。 そんな雨の中を市内の大学に通う田所優矢が親の所有するステップワゴンを運転している。 昼食にパンを買うために少し離れたパン工房『カモフラージュ』に向かっている。 蕎麦を中心とした麺類を好む優矢はいまいちパンのおつかいには気が乗らなかったが自分以外がパンを食べたいと言うのだから仕方がない。 やっぱこの国は民主主義なんだな。優矢は思った。
自分の運転はなかなか上手い方だと優矢は思っている。 免許を取得して今年で2年になる。 大学1年生の夏休みに取ったものだ。 今年の10月には優良ドライバー。 少しスピード凶ではあるものの今まで警察のお世話になったことはない。 優良ドライバーになったら自分で車を持つかな。 最近そんなことを考えるようになった。 昨日も家の近くにある書店で200円の中古車情報誌を買ったほどだ。 自分と同年代のの女優が出ているCMが有名でなんと言ったって情報量が最大級だ。
車は中通から本通りへ。 車内にはイエモンの『バラ色の日々』が流れている。 カラオケで歌わないことは無いほどのお気に入りだ。 その曲ばかりがリピート再生で繰り返されている。 いつの間にかさっきまでの不機嫌はどこかに消えて鼻歌交じりで運転していた。
20分ほどで『カモフラージュ』についた。 ここのパン屋には駐車場は無いので路駐する。 まだ雨が降っていたが傘を忘れたので小走りに店に向かう。
扉を開ける。 ガランガラン、ガランガラン。 驚いて上を見ると扉の上に中くらいの鐘が2つついていた。 こないだ来た時になかったものだ。 その鐘の音にパンを並べていた店員が反応する。 「あ。。。い、いらっしゃいませ」 ドキッ。 優矢は胸に衝動が走った。 ぁ〜可愛いなあ。胸がトキメいた。 優矢の目はその店員に釘づけになった。 年は自分くらい。 上下紺の制服。 少し長めにスカート。 その上にフリフリがついた白いエプロンをしている。 左手にパンを載せたトレイ、右手には直接パンを掴まないようにビニールの袋をつけてパンが握られている。 胸にネームプレートがつけられているが立っている角度からは見ることができなかった。 上履きのような靴を履いている。 「あ、どーも。」 優矢が少し照れる。緊張のあまりしなくてもいい返事をしていた。 いつもはすぐに目に付くトレイもすぐに見つけることはできなかった。 入り口の右手のトレイが置いてあった。 パンを挟む火バサミみたいなモノと一緒に手にとる。 優矢は火バサミの名前が思い出せなかった。
店内を歩いてパンを選ぶ。 すでに買うパンは決まっていたがさっきの緊張で記憶が曖昧になっていた。 店内を行ったり来たり。 その間も優矢はチラチラその子を見ていた。 店にはその店員以外にも30代半ばくらいの女性店員がレジで袋を束ねているが優矢の目には止まらない。 その子はトレイが空になっては店の奥に消えて行きまた別のパンが載ったトレイを持って出てくる。 肌が綺麗だな。 少しにやけてみた。
買うパンをメモしておけばよかった。 2,3個覚えてはいるものの頼まれた10個のパンを全て思い出すことができない。 くそお、可愛すぎる! あんなけ可愛いんだから忘れるのも無理はないか。 また少しにやけてみた。 仕方がないので適当にパンを選んだ。 ま、こんなもんだろう。 外を見るとまだ雨が降っている。 いつになったら止むんだよ。独り愚痴ってみた。 早くお勘定を済ませますかな。 レジの方を見る。 まだ30代半ばの立っている。 できるならアノ子にレジしてもらいたいな。 優矢はもう少し狭い店内を見て回ることにした。
何気なくその子の後ろを通ったりした。 白い肌が目に焼きついた。 この子がおいたばかりのパンも買おう。 予算ならまだ大丈夫だろうし。 さらに3個トレイに入れた。
5分ほど店内を歩いた。 きっと変な客だなと思われてるかもしれない。 でもこの子はそんなことは思ってないだろう。 そう考えると変な客だと思われても関係なかった。 しばらくして30代半ばの店員が奥に消えた。 周りには自分とこの子しかいない。 チャンスは今だ。一通りパン並べが終わろうとしていた。 優矢の胸が高鳴った。 「あの〜、レジいいですか」めいっぱいの台詞だった。 「あ、はい」女の子が振り向き返事をする。 やった!い、言えた!優矢は胸にひとつ風が吹いた。 女の子は立ち上がってレジに向かう。 優矢もそれに合わせるようにレジに向かった。 女の子はレジの端にトレイと右手につけてた袋をとって優矢を待つ。 優矢がレジの前に立ってトレイとハサミをレジの前に置いた。 女の子が右手にハサミを持って袋を広げながらパンを詰めていく。 優矢はその作業を目で追っていた。 やっぱ新人さんだな。優矢はそんなことを思った。 手つきが少しぎこちないところがあった。 白くて綺麗な指だな。
少し視線を上げて胸元にあるネームプレート見た。 市川芳枝とあった。 「このドーナツ、袋ご一緒にしても宜しかったですか?」 芳枝が優矢に訊ねる。 優矢は慌てて胸元から芳枝の顔に視線を戻した。 「あ、はい」目を見ながら勇矢が答える。 左眼のすぐ下に小さなほくろがあることに気づいた。 視線を芳枝の手にやる。 最後にドーナツを袋に入れて口をテープでとめる。 それが終わりレジ打ち。 レジの隣に張ってる値段が書いてある表を見ながらレジに値段を入力していく。 そんな芳枝の姿が愛らしく見えた。 じっとその動きを優矢は観察している。 「1648円です」 「あ、はい」 優矢が上着のポケットから財布を取り出す。 お金はこちらにお入れくださいと書かれた受け皿にお金を置いていく。 千円札、500円玉。あと148円。 財布の小銭入れを見るとコマカイのがありそうだった。 100円、10円玉が1枚、2枚、3枚・・・。 「あ。。。」 1円玉が数枚財布からこぼれた。 芳枝が落ち着いてこぼれた1円玉を拾い上げる。 「あ、すいません」優矢が照れながら1円玉を受け取る。 少し手と手が触れた。 優矢の全神経が手に集中しているのがわかった。 自分はどんな顔をしているのだろう。 芳枝の顔には少し笑みが浮かんでいる。 優矢はおつかいに来てよかったと思った。 その笑顔がたとえ営業スマイルだとしても嬉しかった。 「1650円からで」 「1650円からお預かりします」 芳枝は受け皿の置かれたお金を確かめてレジを打つ。 「2円とレシートのお返しになります。お確かめ下さい」 「はい。。。」優矢が釣りを受け取る。また少し手が触れた。 「ありがとうございました」 優矢はパンの入った袋を手にレジから離れた。 まだ少し緊張している。
ガランガラン。 扉についた鐘が店内に響いた。 黒くうねった雲からは頻りに雨が落ちてくる。 窓越しに芳枝の姿を見た。 芳枝はパン並べの仕事に戻っていた。 優矢は何度も店の中の見ながら車に乗った。 最後にもう1度だけ車から店の中を見てから車を発進させた。
フロントミラーから見る店はドンドン小さくなっていく。 麺類じゃなくてパンを食べるのもいいなあ。 また来週来てみよう。 来週じゃなくてもパンが食べたくなったらここに買いに来よう。 市川芳枝か。。。 可愛い子だな。 カーステレオからは『バラ色の日々』がエンドレスで流れている。 優矢はまた鼻歌をそれに合わせた。 西の空を見ると少し明るくなっているのがわかった。 明日は晴れそうだな。 明日も何かありそうな気がした。
以上です。 少し書いてみました。 うへへ。 どーゆー意味があるのか。。。
わかる人はわかる。 わからない人はわからない。 ってまんまじゃーーーーーーーーん(w
明日は体育祭に打ち上げ。 呑みまくるぞーーーーーーーーーーー
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