最後の逢瀬。 おにいちゃんは、あたしを写真に残した。 真新しいカメラで。 何度も何度も。 おにいちゃんは自分の作品を何より大事に想っているから おにいちゃんの作品の一部になれるなら これ以上幸せなことはない。 おにいちゃんは素直な、優しい、どこか寂しい写真を撮る人。 だからこそ、そのシンプルさに美しさが表れる。 あたしはそんな美しさは持ち合わせていないはずなのに おにいちゃんが写真にすれば あたしはどんな美女よりも美しくなれる。 馬鹿らしいけど。 それが本音。 薄っぺらい写真でも、重たいデータでも、 おにいちゃんについて行くことは簡単。 なのに、余計なものがたくさんついていて重たすぎるあたしは そんなことできなくて。
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