カエルと、ナマコと、水銀と
n.446



 眼睡の奥

=眼睡の奥=

重いと思った矢先の眠気。ぐっすりと地中深くまで潜ってしまえば、宇宙的な無意識の集合が、あたりを巻き込んで、仄かに赤くともっている。街灯をつけた、街の中に、ぽつり、ぽつりと街灯をともしていく。きっと、彼は、絶妙のタイミングを町で一番高い塔の上から、遅延さえも計算し、光を灯して、誰か、欠伸をこらえたような吐息を洩らす。みんな帰る時間なんだよ。野良猫までもが、ねぐらに帰る。キリギリスたちは鳴き始め、影の迷路をたどるネズミが、どこを目指しているかなんて知らない。
彼はただ、街灯を灯すだけだから。

2008年06月13日(金)
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