カエルと、ナマコと、水銀と
n.446



 風化

=風化=

今は、十一時三十一分。透明の満月が空の天辺に昇っている。猥雑とした建物たちは区画整理の波に飲み込まれ一掃され、ただの荒地となっている。剥き出しの土の上に、一台、ブルドーザー。戦場に見捨てられた戦車のように月の光を浴びている。息は白く落ちていく。このまま忘れられ、冷たい雨に錆びて、やがて朽ちていくのではないかと夢想する。でも、やはり、これは。明日も荒々しく土を削るのだ。削り取り、押し進み、えぐる。きっと、静かに死んでいく。

2005年12月14日(水)
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