カエルと、ナマコと、水銀と
n.446



 嗅覚

=嗅覚=

冬の夜の匂いの中に一際甘く花の匂いが香って、通り過ぎた僕は振り返る。暗がりに隠され目に見えないその花は、まぶたの裏で少し像を結んで消える。二、三歩、歩み去った後にもう一度香りを確かめた時、既に、香りはどこかへと流れ去っている。澄んだ頭の中で、きっと花の色は黄色か白だ、と思った。

2005年11月09日(水)
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