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■ 藍
=藍=
次第に暗くなっていく夏の七時過ぎを、友達の輪から四歩下がって通り過ぎると、俺の軌跡が線香花火色になってしばらくそこに残る。はらはらとその光は降りていき、夕暮れと同じ色したアスファルトに落ちると、少し、生物たちが息絶える最後の瞬間に見せる震えのように消えていく。たとえば、夏祭りの後、酔っぱらった仲間たちが肩を組み、叫び、笑いながら歩いていく姿を俺はいつもの通り四歩後ろから眺めていると、車の通り抜ける音につられて見た向かいの歩道を、浴衣を着た若い女性がずんずん先をゆく彼氏後ろ四歩で歩いている。彼女からは枝垂れ花火色の光が後を引き、地面につく前に空気に飲まれていくように失われ、俺の視線に気付き、光の軌道を見て、もう少しで思い出せそうな遠い記憶を探り出すように目を細めた。光たちは熱量を失い、虫の音が波を立てている凪いだ空気によってちりぢりになり、彦星と織り姫ほどに拡散され、氷を入れすぎた烏龍茶ほど希薄になったがゆえにやがては質量さえも失っていく。それでも、これは哀しみではない。
2005年06月04日(土)
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