しそ摘み日記
akajiso



 ブチ切れ寸前!

夫の働くパソコン教室の看板を作ろうと、
実家に材料を置いておいたら、DIY大好きじじじそが
親切心で、どんどんどんどん作ってくれて、
今日、看板設置に一緒に行った。
 
 モスグリーンの板に、白い文字で、黒板風。

 で、ばばじそのアレンジで、ガーデニングが
施してある、グリーン満載の看板。

 車に積んで、教室の前に停め、
設置しようとしていたら、社長の経営する会社の事務員さんが
通りかかった。
 
 なのに!
 じじじそ、挨拶もせず、
くわえ煙草で、ジロッ、と彼女をにらみ、
煙草の灰を、そこいらじゅうに落としながら、
めちゃめちゃガラ悪い設置作業!

「ちょっと! 煙草やめてよ!」
と、私が灰を雑巾で拭きながら言うと、
「何だテメー、こっちはやってやってるのによお!」
と、逆切れ!
「お願いだから! 生徒さんも来るんだから!」
と、私がまた頼むと、
「うるせい! テメーのために、俺はわざわざこんなところまで来て、クソメンドクセエことしてるんだぞ、コノヤロー!」
と、でっっっかい声で!!

 まるでヤクザ!
 脅迫! 地上げ! カツアゲ!

 私は、心の中で、
(誰も頼んでねえっつんだよ!)
と、ブチ切れそうになったが、夫の職場の前だし、
ここで言い返したら、また、じじヤクザが、
でかい声で、怒鳴ると思って、ぐぐっと言葉を飲み込んだ。

 私が、思いっきり無言になってしまったワケなど、
まるで気づかないじじじそは、家に帰るなり、
「おい、メシ、できてるだろうなあ!」
と、ばばじそにイキナリ脅迫!

 ばばじそは慣れたもので、
「今できま〜す」
なんて、笑ってる。

(なんで笑えるのよ、このクソジジイのこの態度に!)

 私は、ひとり、目を真っ赤に充血させて、
縁側に出て、植木をぼんやり見ながら頭を冷やしていた。
 低血圧なのが、急激にカッとなったから、
血圧が急上昇したのだろう。
 少し気持ち悪くなって、外の風に当たっていた。

 ばばじそが、急いでご飯を作っている台所に、
ふらふらと歩いていき、
ばばじその背中にぼそっと、一部始終を言ってみた。
 
「我慢我慢。自分が悪いとは、絶対思ってないから。
おだてて、うまくこき使いなさいよ」

と、ばばじそは、笑う。
 私が怒って、縁側でぽつんと座っていたのも、
大体の理由はわかっていたみたいだ。

 あ〜あ。

 大人になるって、大変。

 思ったことを、すぐ口に出すと、
めちゃめちゃになっちゃうこともある。
 嘘をついたり、傷ついていないふりをして、
明るく笑っていなくちゃいけない時もある。

 それをしない人――大人になる気のない人――と
一緒に暮らしているとなおさら。

 私は今、大人になる入口に立っているようだ。

 
 
   

2002年05月08日(水)
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