映画『花とアリス』(岩井俊二監督)

物語は、中学から高校へ進学したハナ(鈴木杏ちゃん)とアリス(蒼井優ちゃん)の、宮本先輩(郭智博くん)をめぐる日々のあれこれ…がメイン。
満開の桜や人気のない海をただ歩いているだけで、詩のようにメロディのように多くのものを語る彼らの存在。アリスが制服姿で踊るシーンでは、人間(女の子)の身体ってこんなにキレイなんだ…とうっとり見とれてしまいました。それはそうと、バレエのレッスンってあんなに元気いっぱいな雰囲気で行われるものなのでしょうか?(笑)

ハナの仕掛けたウソに巻き込まれてしまう形で始まった、アリスの偽りの恋。宮本先輩との接し方にことごとく父親との関係が重なって、とても切ない…。
トランプや万年筆など、小道具の使い方にグッときました。アリスとハナのお家も、実際に訪ねさせていただきたいほどステキでしたしv

ちょこっとだけ出演されている共演者の方々がとても豪華なのですが、それぞれに本当にいい味を出してらっしゃるんですよね。
相田翔子さんが演じられたアリスのお母さんなんて、もっと詳しいキャラ設定を知りたいほど。メインキャラの物語は一応終わったけれど、その他のキャラのその後のことも何か気になる…というのは、私が好きなタイプのお話です。それだけキャラが魅力的だということですから。

フィルムでなくデジタルで撮影されたのだそうですが、単純な私の頭で想像する「デジタル」な印象とは全く違いました。画面から受けるのは、むしろ思いっきりアナログな印象。8ミリで撮ったような、手作り感のある映像。 公式サイトで監督が「ビデオを使ってフィルムっぽく仕上げることに執着が」あった…とおっしゃっているのを読んで、なるほどと納得。

音楽も、映像のふんわりした感じにぴったりでステキなのですが、こちらも岩井監督が担当されていると知ってビックリ。この後、撮影時に描かれた絵コンテをベースにしたコミック版も手がけられるそうで、本当に多才な方だなぁ…としみじみ。

パンフレットの作りがまた、作品のイメージそのものでステキです。紙質、色合い、フォント、使われている画像、その並べ方、編集…。そしてラストページに寄せられたコメントが、私の大好きな漫画家さん・羽海野チカさんというのもすごく幸せでしたv

ずっとホメまくっていますが、何せこういうテイストが本当に好きなのでお許しくださいませ(苦笑)。
出てくる女の子はカワイイし、こういう年代特有のズルイところや危なっかしいところもしっかり描かれていながら、決して少女趣味な作品ではないのです。描かれているのは、むしろ逞しく生きてゆく女の子たちのリアル。
だから、こういう作品を40代の男性が作られたということが驚きでもあり、創作の可能性という意味では感動…でもあります。
10代をとっくに通り過ぎてしまった私なので、ぴちぴちの(笑)ハナやアリスが恋や部活やバイトにがむしゃらにまっすぐ向かってゆく姿を見ると、多少なりともジェラシーを感じそうなものなのですが(苦笑)、不思議なことにただ素直に「いとおしい」という気持ちだけで観られたのは、たぶん岩井マジック…なのではないかと。
ラストシーンが、ハナとアリスがまた二匹のわんこのようにじゃれあっているシーン…というのも、嬉しいことです。やはり物語は、ハッピーエンドでなくては!
2004年04月03日(土)

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