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『ゴールデンタイム―続・嫌われ松子の一生』 山田宗樹 (幻冬舎) - 2006年06月22日(木)


山田 宗樹 / 幻冬舎(2006/05)
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<前作は大河小説、本作は青春小説>

『嫌われ松子の一生』は亡くなった松子の悲惨な生涯を過去からの回想と、甥っ子である川尻笙の調査とを交互に描き原作も映画も大ヒットした。
私は映画は観ていなくて、原作を約3年前(単行本発売直後)に読んだのであるが、松子が死んだと言う事実をわかっていながら、どうして転落した人生をたどったのかとひたすらページを捲った。
絶望感に襲われつつも、現在を生きる甥っ子川尻笙の健気さやその恋人明日香の最後にとった行動に暖かい拍手を送った記憶がある。

前作は大河小説的要素の強い作品であったが、本作は明日香が主人公の青春小説に仕上がっている。
いわば、前作が結果として後ろ向きな人生だったかもしれないが、十分に松子の魅力を読者に提示して多くの共感を得た。
逆に本作は正真正銘の前向きで清々しい作品である。

前作から4年経過、別れてそれぞれ離れ離れになった笙と明日香が各章ごとに交代でそれぞれの生き様が描かれている。
前作とは違い、すべて現在進行形の話なんで読者も向き合って読めるのである。

明日香は東京の大学を中退し、佐賀の医大に見事合格し、現在4年生である。病院の御曹司の輝樹という申し分のない男がいる。
輝樹と結婚して麻酔医として輝樹の実家の病院を継ぐか、それとも自分の夢(アメリカ留学)に向かってチャレンジするか物語を通して悩むのである。

一方、笙は大学を卒業したが就職に失敗、フリーターとして過ごす毎日だったが、あるきっかけで劇団を主宰しているミックと知り合い演劇に情熱を傾けるようになる。
しかしながら、公演の少し前に団員が脱退。ミックが病気で倒れる。

終盤に死と直面するミックを見て、夢を追い続けることの大切さを知った笙は故郷の福岡に戻り明日香と会うのである。
明日香が笙により、忘れかけていた大切なものを思い出します。
ちょっと意外だったな。どちらかと言えば、逆のパターンを予想しておりました。

今はただの友達となってしまったけど、ふたりが東京でつき合っていた日々は決して無駄ではなかったのですね。
かけがえのないものを失ったかのように見えるふたりであるが、実はずっと強固な絆で結ばれているのである。
離れててもお互いを意識しながら、これからも成長をし続けて欲しいなと思う。

私はこの2人なら大丈夫だと思う。
なぜならどんな苦労をしても“松子の苦労に比べたらたかが知れている”ということをわかっているからである。

松子おばさんの“悲劇”を決して無駄にしていない2人のしあわせを心から祈りたいですね。

少し飛躍した意見かもしれないが、本作は作者サイドで考えれば、『嫌われ松子の一生』の本を読まれた方や映画を観られた方のモデルとして笙や明日香の話を書いているとも言えそうである。
読者の分身が笙や明日香なのである。

あと余談であるが、巻末の参考文献の多さには驚いた。
特に医学の話が出てくるのであるがとってもためになりました。
作者に敬意を表したいと思う。

最後にひとつ付け加えておきたい。
作中で、ユリが松子に似ていると話すシーンがあるが私はそう思わなかった。
なぜなら、ユリは十分にミックに愛されているからである。
みなさんのご意見もお聞かせ願えたらさいわいです。

面白い(8)

この作品は私が主催している第5回新刊グランプリ!にエントリーしております。
本作を読まれた方、是非お気軽にご投票いただけたら嬉しく思います。
(投票期間2006年8月31日迄)


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