『ワイルド・ソウル』 垣根涼介 幻冬舎 - 2004年05月24日(月)
私たちが外食する時、寿司屋と焼肉店が並んでいるとする。 でもどちらかを選ばなければならない時あなたならどちらを選ぶであろうか? 非常に悩む所である。 小説の場合でもそうである。特にオールマイティに読める人にとっては・・・ 手元に純文学作品とハードボイルド作品と恋愛作品がある、本音を言えば一気にすべて読みたい衝動に駆られることはないであろうか? そういった衝動を理解できる方で本作が未読な方は是非手にとって欲しい作品だ。 正直、私も今まで読まなかった事を後悔している。 ハードボイルド的な要素と社会派的な要素と、あと恋愛小説的な要素のすべてが詰まった贅沢な作品である。 垣根氏の作品は読者に熱いエネルギーを与えてくれる。 やはり今熱い話を書かせたらこの人の右に出るものはいないのではないであろうかというほどの内容の詰まった作品である。 まさにエンターテイメント界の“救世主”と言っても過言ではないだろう。 構成的には前半はブラジルでの移民生活の辛さを中心とした重い内容、後半は日本での復讐劇を成し遂げようとするスピーディな展開が繰り広げられる。 ブラジルのジャングルでの過酷な生活、あるいは日本の高速道路でのカーアクションシーンなど過激な描写が読者を虜にしてくれる。 多少、外務省関係の方が読まれたら耳の痛い話であるかもしれないが、日本人として見過ごしてはいられない大切なものを読者に浸透させてくれる点は感謝したい。 前半のブラジルでの描写が読者にも焼き付いておるために復讐劇的な話にありがちなドロドロ感や罪悪感はほとんどなく、爽快な読後感を提供してくれてる。 要因として作中のケイの存在が大きいと思う。 読みながら“果たしてこの作品の主人公って誰なんだろう?”と思われた方も多いんじゃないかな。 衛藤、松尾、ケイ、それとも恵子? きっと本書を読まれて“心の糧”となったあなたが主人公かもしれない。 垣根氏の人物造型の確かさには舌を巻く。 女性読者が読まれたらケイの魅力に取り付かれるかも知れませんね。 そうそう、“恵子の再生物語”として読まれても面白いかもしれない。 第六回大薮春彦賞受賞。 第二十五回吉川英治文学新人賞受賞。 第五十七回日本推理作家協会賞受賞。 上記作品のご受賞(3冠達成)を心からお祝いしたい気持ちでいっぱいであるとともに今後の活躍を切望する次第である。 評価10点。 超オススメ作品! 2004年50冊目 (旧作・再読作品13冊目) ...
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