『愛妻日記』 重松清 講談社 - 2003年12月23日(火) もはや“スピード違反”的な作品である。 《bk1へ》 《Amazonへ》 刊行ラッシュだった今年後半の重松さん、そのラストを飾った本作は、初の官能小説(R−18指定作品)である。 帯を読めば出版社の依頼で雑誌に掲載されてそのあとは自分の意志で書いたとある(直木三十六名義)。 女性が読むのは少し辛いかもしれない。 内容的には娯楽作品に徹している。 もちろん、本年度重松さん最大の話題作だった『疾走』を読んだ時のインパクトはない。 『疾走』の時に度肝を抜かれたような感覚を持った読者の大半が、本作ではそれを通り越してもはや開いた口が塞がらない状態だと思う。 少し残念な気がしたのは本作に収められてるどの短篇も出だしがいつもの“重松節”なのである点であろう。 話をなにも官能作品に転化させる必要があったのだろうか? その点が惜しまれる。 重松さんの作品は読者の“従来の読書観”を変える。 単なる趣味・娯楽の世界から現代社会におけるエッセンスを教授してくれる場へと・・・ 本作は内容に関してはインパクトは強かったが、あとに残る何かが足りない点は否めない。 重松さんは言うまでもなく“ものがたり作りの名人”だ。 図書館の充実と不況とが相まって、本当に新刊が売れない時代だと言うのも分かる。 正直、出版社の“苦肉の策”的な作品かもしれない。 ただ、本作のような作品を多くのファンが望んでるのかと言えばやはりそうじゃないような気がする。 少なくとも私自身がそうだ。 重松作品の大ファンとしてせめてペンネームを変えて刊行してほしかったという気持ちが強いのも事実だ。 といいつつも、重松全作品読破を目指されてる方には是非お読みいただきたい作品なことには異論はないんだけど(笑) 重松さんご自身は世の中を厳しくも暖かく見守っている。 ファンの一人として私も重松さんを暖かく見守りたい。 きっと本作での経験が今後他の作品で開花することを願ってやまない。 重松清の挑戦はまだまだ続く・・・ 評価5点。 ...
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